表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/243

9 北荒 玄武の国の魔導師(2)

「へへっ、本当だ。眸が紫色か」

 金獅子の若者は、にやにや笑いながら、リーユエンを押さえつけた。地面に寝転がったまま身動きできない状態で、リーユエンは、のしかかってくる若者を呆然とみつめた。その男が何をするつもりなのか、まるで理解していなかった。男は、まだ押さえつけたまま、リーユエンの顔にかかった髪をかき揚げ、まじまじとのぞき込んだ。

「うーん、左側は悲惨だが、右側だけなら、すげー美人じゃないか。ちょうど、女切らして退屈してたんだ。代わりに犯っちまおうぜ」

 もう二人金獅子が寄って来ると、他から見えないように二人を取り囲んだ。金獅子の若者は、突然リーユエンの右足を自分の肩へ担ぎ上げ、下半身から衣を剥ぎ取ろうとした。

「何してんだい、おまえらっ」

突然頭上から怒鳴り声が響き、ボコッ、ボコッ、ボコッと、金獅子たちは頭を堅いもので殴りつけられた。

「痛っ、何するんだっ」

 彼らの背後に大きな玉ジャクシを持ったオマが、恐ろしい形相で仁王立ちしていた。

「あんたらっ、その子は、この隊商の金主だよ。舐めた真似してんじゃないよっ」

 金獅子は、オマの巨体にびくっと体を強張らせたが、

「金主だと、こんなチビが大金持っているわけないだろ。出鱈目言うなっ」と、言い返した。

「おい、おまえら、何してんだ。この隊商の大切な金主に無礼を働いたのなら、隊商から追放するぞ」と、オマの背後からさらに大きな禿頭のカリウラが現れ、ドスを効かせた声で話しかけた。

「・・・・・」

 金獅子はすっかり大人しくなり、こそこそと退散した。

カリウラは、地面に倒れたままのリーユエンの傍に行き、跪いた。

「悪かったな、ひとりにするんじゃなかったよ」

のろのろと立ち上がったリーユエンは、衣を直しながら、

「どうしよう、血が流れ落ちたかもしれない」と、左側の甲の傷を見せた。

 カリウラは、火傷のあとが開いて血が滲み出る甲を見て、ため息をつき

「とりあえず、止血しよう」と言った。カリウラが、血止め薬を取り出し、リーユエンの左手に塗りつける間、彼はオマを見上げ、

「助けてくれてありがとう」と、礼を言った。オマは、リーユエンに近づき

「あんたは、まだ小さいから、ひとりにならない方がいい。カリウラ、あんたがいない時は、この子を赤天幕まで連れておいで、ひとりにしておくなんて、不用心すぎるよ」と、オマは怖い顔をして、カリウラに詰め寄った。

「分かったよ。今度から気をつけるよ」

 カリウラは顔を引き攣らせて、オマへ言った。

「もう、大丈夫だね。本当、気をつけるんだよ」と、言い置き、オマはのしのしと赤天幕へ戻っていった。

 オマが行ってしまうと、カリウラはリーユエンへ、

「獣の奴、よく出てこなかったな」と話しかけた。すると彼は

「出てこなくていいって言ったんだ」と、言うので、カリウラは驚き

「どうして、そんな指示を出したんだ。おまえ、さっきは、もうちょっとで・・・・」と、それ以上は言い淀んでしまうと、彼は

「隊商の中で騒ぎを起こしたらまずい。あいつが出てきたら血を見ずにはすまない」と言った。

 リーユエンの言う事にも一理あるが、華奢で小柄な体つきの彼は、乱暴者の金獅子や、気の荒い荷物運びには、格好の餌食に見えるようだと、カリウラはさっきの出来事で改めて自覚した。カリウラ自身は、弟みたいに思っているので、そんな風な目で彼を見たことがなかったが、オマの言う通り、決して目を離してはいけないと思った。

 その夜、あの金獅子の若者たちは、真夜中に雪猿に襲われた。

 天幕の中で熟睡中だったところを雪猿三匹に襲われ、ひとりは体を引き裂かれて死亡し、他のふたりは辛うじて逃げ出し、軽傷で済んだ。死んだのは、昼間リーユエンに乱暴しようとした若者で、彼を押さえつけたとき衣に血がついてしまい、それに気がつかず、そのまま眠って襲われたのだ。隊商の中は、大騒ぎになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ