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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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46 魔道具騒動(9)

 リーユエンは、黙ったまま襟元を直すと、

「私の犯した罪は、猊下が直接裁かれます。先輩は、魔導士査問会に出頭し、(ただす)の魔法陣にお立ちになればいい」と、淡々と言った。

 イカリオスは、目に見えて動揺し始めた。眸が大きくなり、格子越しにリーユエンを見上げ

「いやだっ、そんな事はいやだ。罪に問われて有罪になったら、ぼくは魔力を失って、凡人に戻ってしまう。そんなのは、いやだ。君、君は、明妃なんだろ?法座主猊下とは、特別な関係なんだろう?お願いだっ、ぼくが魔力を失わないよう、猊下に頼んでよ。ぼくの母とロージーの母上である王后は、従姉妹同士なんだ。王族に関わる一族から、魔導士資格を剥奪されるなんて不名誉な者が現れるのは、外聞がよくないだろう?ぼくの事を何とか取りなしておくれよ。君は、ロージーと親しいのだから、それぐらいしてくれたっていいだろう?」と、訴えた。

 リーユエンは、イカリオスを見下ろし

「それはできません。私は、玄武の国を追放されたので、もう猊下とは何のつながりもございません。かりに訴えたところで、あのお方は玄武でいらっしゃる。玄武へ情状酌量など求めても無駄なことです。人の情より、玄武は法理を優先するのです。あなたの訴えなどお認めにはならないでしょう」と、突き放した。

 イカリオスは濃い茶色の巻髪を逆立たせ、歯を剥き出し、唸り声を上げた。

「何が、お認めにならないだっ、ケッ、紋入りの奴隷のくせに、よくも、そんな偉そうな口がきけたもんだな。どうせ、捨てられて行くところがなくなって、黄金獅子の愛玩品になったんだろう?せいぜい、王族連中へ尻尾を振って撫で撫でしてもらうんだな」

 聞くに耐えない言葉に、サンロージアはとうとうぶち切れた。

「リオ、あなたは最低だわっ、リーユエンに対して、よくもそんな事を言ったわね。私を守るために、リーユエンがどれだけ犠牲を払ってくれたのか、あなたは知りもしないくせに、あなたの事を本当に見損なったわ。私の事をロージーと二度と呼ばないでっ」

 その激しい口調に、イカリオスは、冷静さを取り戻した。

「ロージー、怒らないで」

「呼ぶなと言ったでしょう。この無礼者っ」

 サンロージアの体から凄まじい怒気が吹き上がり、イカリオスの体は、牢の奥まで吹き飛んだ。王女は、リーユエンを見上げ、

「もう、行きましょう。こんな人だったなんて、私の見る目がなさすぎたわ。あなたに、私は迷惑のかけ通しね。本当にごめんなさい、それから、本当にありがとう」と、言うと、涙の溜まった目で微笑んだ。リーユエンは、彼女を見下ろし、

「得心がいって、よかったわ。次にお相手を連れてくるときは、お願いだから、すぐに降参していい相手にしてちょうだい」と、微笑んでささやいた。

 サンロージアは、リーユエンに抱きつき、

「分かったわ。きっといつか、すぐ降参していい相手を連れてくるわね」と、言った。


 ふたりが牢屋の前の廊下の角を曲がると、ゲオルギリー陛下と王太子殿下が立っていた。サンロージアは、陛下へ駆け寄り

「お父様、ごめんなさいっ、私が間違っておりました」と言いながら、抱きついた。 デミトリーは、リーユエンに近づくと、

「お疲れ様、憎まれ役を押し付けてしまって、申し訳なかった」と、労いと謝罪の言葉をかけた。リーユエンは、目をふせて、

「王女殿下が完全に情を断つことができて、よろしゅうございました」と、小声で応えた。

 デミトリーは、もう一言二言何か言って労ってやりたかったが、何も言葉がでてこなかった。そこへ、ゲオルギリー陛下が、抱きついていたサンロージアを地面に下ろしながら、

「デミトリー、朕とリーユエンは、あいつの調書の作成に立ち会う、それに魔導士協会に通報せねばならんから、ロージーを、後宮へ送っていってくれ」と、指示した。

 デミトリーは、ロージーの手を取り、

「母上へ報告しに行こう。きっと心配しておられるから」と言い、ふたりで後宮へ帰った。

 

 後宮へ戻ったふたりは、王后のもとへ行き、イカリオスとのやり取りを報告した。王后は、長椅子の肘掛けにもたれかかり、眉をひそめ、難しい顔で報告を聞き、「そこまで悪意があったとは、驚いた。あれの母親は私の従姉妹なのに、この話を聞けば、さぞ悲しむことであろう。それにしても、リーユエンは、よくも、そこまで、あのイカリオスの心の闇に隠した本心を引き出したものよ」と、言った。

 サンロージアは、躊躇いがちに、

「リーユエンは、襟元を肌けて玄武の紋を見せていましたけれど、リオはそれを見て、玄武の愛玩品だろうとか、ずいぶん酷いことばかり、言っておりました。一体、あれは何なのですか?」と、尋ねた。

 王后とデミトリーは、視線を交わした。そして、デミトリーが、サンロージアへ、「あの玄武紋を通して、法座主は、リーユエンの心の隅々まで、調べることができるそうだ。どれほど離れた場所にいても繋がっている。それに法力も送ることができるそうだ」と、教えた。

 サンロージアは、目を見開き、

「心の隅々までって、誰か好きな人ができても、すぐ分かってしまうっていうこと・・・」と、言うと、デミトリーは、うなずき、

「そうだ、以前、法座主は、俺の見ている前で、リーユエンの心の中を調べ出したことがある。酷い苦痛があるのか、彼女は、最後は吐血していた」と、語った。

 兄の話にサンロージアは、非常な衝撃を受けた。

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