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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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46 魔道具騒動(4)

 リーユエンは、長いまつ毛を伏せ、しばらく黙っていたが、おもむろに、

「十式を身につけるのに半年かかったの。毎日、練習したわ。それから五十変化を身につけるため、その後一年かけて、三日おきに猊下と打ち合いをしたの。猊下は手加減してくださったけれど、膂力が強いから、私は上腕骨折、肋骨骨折、足首捻挫、手首の骨が粉砕骨折、あっ、そうだ、鎖骨も折れたわ。打ち合いのたびに、必ずどこか負傷していたわ」と、語った。

 何げない口調だが、その内容の凄まじさにデミトリーの顔は引き攣った。

「そんなに怪我をしたら、五体満足ではいられないと思うのだが・・・・」との疑問に対して、リーユエンは、にっこり笑い

「あら、大丈夫よ。猊下が法力を入れて治してくださるもの。すごく痛いけれど、我慢したわ。それに・・・その夜は、とても優しくしてくださるから・・・」と、リーユエンは頬を染めて、うつむいた。その凄まじい艶香に、デミトリーは頭がクラクラし、嫉妬の念が燃え上がり、

「そんな、そんなの、おまえ、ちょっとおかしいぞ。そんなの正常(まとも)じゃないぞっ」と、叫び、リーユエンを乱暴に抱き寄せ口付けしようとしかけた。が、またもやリーユエンから、顎先を手のひらでガシッと抑えられてしまった。

「しっ、茂みに誰かいるわ。誰っ、出ておいでっ」と、リーユエンが叫ぶと、小薔薇の植え込みの後ろから、サンロージアが現れた。

「ロージー!」

 これからというところで邪魔をされたデミトリーは、妹へ何をしに来たのか尋ねようとしたが、駆け寄ってきたサンロージアは、リーユエンへ近づくと、いきなりその頬を「バシッ」と平手打ちし、

「兄様と真っ昼間から、仲がよろしいのねっ、いい気なもんねっ!」と、涙目で叫んだ。

 デミトリーは、呆気に取られ、次に猛然と腹を立てて

「ロージー、おまえっ」と、言いかけたところを、リーユエンがその腕をつかんで止めると、振り向いたデミトリーへ、

「王太子殿下、シュリナにお茶を頼んできていただけませんか」と、頼んだ。

「あ、ああ、分かった」

 気勢を削がれたデミトリーは、東屋から離れた。

 リーユエンは、肩で息をするサンロージアを見上げ、「座ったら?」と、椅子をすすめた。サンロージアが真っ青な顔で腰掛けると、リーユエンは、打たれた頬をそっと抑え、

「私を平手打ちしても、何の解決にもならない。これは、ただの八つ当たりだ」と、話しかけた。

 サンロージアは、顔をあげ、

「謝らないわよっ、あなたが魔道具のことで騒いだから、私の幼馴染は捕まって牢屋に入れられてしまったのよ」と、涙声で訴えた。それに対してリーユエンは、

「国王陛下に会っていたのでしょう?何とおっしゃっていらしたの?」と、尋ねた。

「父上は、私の話を全然聞いてくれなかったわ。魔力のない凡人なら、魔道具の起動に、生命力を使うことぐらい、魔導学を少しでもかじったことがある者なら分かるはずだとおっしゃって、釈放しようとしてくれないのよ」と、悲しそうに話した。

 リーユエンは、黙って聞いていたが、

「国王陛下は、魔導士学院を退学処分になった方だが、学業は優秀であったと聞いている。陛下が問題にされた点は、まったく妥当だと思う。王后陛下も私も、その点が一番気がかりだった」と言い、続けて「王女殿下は、その捕まった者へ、術返しにあった話をしましたか?」と、尋ねた。すると、サンロージアは、

「ええ、話したわ。鏡が割れて髪の毛の先が燃えたと話をしたら、アハハッと笑って、『それは大失敗だったね。髪が全部燃えなくてよかった。今度から気をつけてね』って言われたわ」と、答えた。

 リーユエンは、目を伏せて

「魔導士なら、術返しに遭ったと分かったら、魔道具は即刻取り上げるべきだ。それどころか、あなたへ術返しの説明も、忠告すらもしないなんて、明らかにおかしい」と、指摘した。

 サンロージアは、だんだん怒りが引いていき、心の中が、水の中で泥が舞い上がり、澄んだ水が濁った泥水に変わっていくように、見通しが悪くなっていくのを感じ、

「そんな・・・じゃあ、どうして、忠告しなかったのよ」と、ささやいた。

 リーユエンが、サンロージアを見て

「取り調べはまだ続いているの?」と尋ねると、サンロージアは辛そうに眉根を寄せてうなずき

「可哀想なリオ、体が弱いのに、地下の石牢に何日も入れられたら、きっと風邪をひいてしまうわ。どうしたらいいのかしら」と、つぶやいた。

「その人は、幼馴染なの?昔から仲良しだった?」と、尋ねられて、サンロージアは、

「ええ、私たち、よく一緒に遊んだの。リオは体が弱くて、武道はできなかったけれど、学業は優秀だった。伯父の魔導庁長官みたいになりたいって、魔導士学院まで留学して、魔導士になって帰ってきたの。帰国後、舞踏会で会った時、リオは、私を見て、『黄金獅子の一族のあなたは、眩しい太陽のようだ。さぞや、ご立派な配偶を選ばれるのでしょうね』って、笑いながら言ってくれたわ。私は、その時、『そうね、父上をも上回る、兄上をも凌駕する立派な配偶を選ばなくちゃね』って言ったのよ」

 サンロージアは、話すうちに涙が溢れ出し、リーユエンが差し出してくれた絹のハンカチで涙を拭いた。

 突然リーユエンが立ち上がり、

「王女殿下、私と一緒に王宮へ参りましょう。国王陛下に、その人に会わせてもらうようお願いに行きましょう」と言った。

 サンロージアは、泣き顔のまま呆然として、彼女が差し出した手を握り、立ち上がった。 

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