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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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45 決闘(1)

 窓越しに一部始終を密かに聞き取った王后は、手振りで四傑をうながし、足音を忍ばせ、御殿まで戻った。そして、部屋に入るなり、ひとりで大笑いした。目から涙が出るほと笑い転げた。これほど笑ったのは、一体何年ぶりだろう。娘時分に大笑いしたっきり、王后になってからは、威厳を保つために、滅多に笑うことすらなかった。けれど、今晩の、あのやり取りは、あまりにおもしろすぎて笑わずにはおられなかった。

(あの、人を喰っても自分は喰われないが信条のゲオルギリーが、リーユエンに、まんまと喰われてしまった。ああ、本当にこんなにおもしろいことってあるかしら、あの()があんな隠し玉を持っていたなんて・・・道理で、妙に大人びた色気のある()だと思っていたら、そういう事だったのね)

 その夜、王后殿下は、ぐっすりお寝みになった。

 

 その翌日、昨日の衝撃からまだ立ち直れず、いまひとつ調子のよくないゲオルギリー陛下のもとへ、法務院から厄介な使者がやって来た。元老院議員のマエナス公が、先日の王女殿下の騒動について耳にして、やって来たのだ。

 マエナス公は、法務院の上級判事をつとめ、そして貴族でありながら、元老院では共和派に属する、厄介な人物だった。儀礼的な挨拶を終えると、濃い栗色の巻き髪に、顔下半分を覆い尽くす巻き髭のマエナスは、

「数日前、近衛右軍少将のビアロスが捕まったそうだが、我らも事情を聴取したい」と、切り出した。

 玉座に座り、トーガを巻きつけた重厚な正装姿のマエナスを見下ろす陛下は、

「断る、後宮で起きた事件で、法務院も元老院も関わる権限はない」と、言い切った。ところがマエナスは、

「ビアロスの一族の者たちより、彼が王女殿下に求婚しようとしたのに、妨害されたと訴えがあったのだ。訴えがあった以上、我々は事実関係を調査しなければならない。それに、妨害したのは、王女殿下が、舞踏会の中休みに、踊り相手に指名したお方だと聞いている。そうなってくると、そのお方とビアロスは、決闘して決着をつける必要があろう」と、言い出した。

 ゲオルギリー陛下は、あまりに厚顔な申し出に、王気がマグマのように吹き上がり、マエナスはその迫力に顔が引き攣ったが、顔半分を覆う髭のおかげで、面目を失わずにすんだ。ゲオルギリー陛下の怒りは恐ろしかったが、それでも怯んだ様子は見せないで

「我々は、法を適正に執行しなければならないし、王女殿下が、配偶もしくは配偶に準ずる者として、その者を指名した以上、王族への求婚規定を守らねば、王女殿下御自身の名誉が傷つけられることになろう」と、あくまで正論を主張した。

 正論を主張されては、陛下も頭ごなしに怒鳴りつけて退ける訳にもいかなくなり、「分かった。事実関係を調査した書類を法務院へ提出しよう」と、答えるしかなかった。

 それから数日後、マエナス公は、再び王宮へ参上し、法務院と元老院の協議の結果を伝えた。国王陛下は、内官長にリーユエンを呼びにやらせた。

 玉座の間に、デミトリー王太子殿下に付き添われて現れたリーユエンの姿を見て、マエナスは呆然とした。彼は、先日の舞踏会には不参加であったし、外苑の巻狩りも興味がなく不参加で、彼女を見たのは、この日が初めてだった。

 リーユエンは、少し薄桃がかった光沢のある白い絹の衫に、濃い群青に銀糸で細かい薔薇紋様を織り込んだ裙に、光沢のある紫の袍をまとい、白孔雀の羽扇子を手に現れた。

 (何と(たお)やかで上品な女性(にょしょう)なのだ。本当にこの方を、王女殿下は配偶に準ずる者として選ばれたのだろうか?)

 リーユエンは、丁寧に揖礼し、陛下へ

「お呼びにより参上いたしました」と、もの柔らかに話した。

 彼女の横では、デミトリーが、陛下とマエナスを威嚇するように睨み、彼女を、内官が用意した長椅子へ、連れていってかけさせた。

(そうか、このお方は、太子殿下の思い人なのか。厄介なことになった)

 王太子殿下に思い人が現れたとの噂は、マエナス公の耳にも届いていた。自分たちの意見書は、国王のみならず、王太子も激怒させると予想して、使者に選ばれたマエナスは、これからの交渉の困難を予想し、うんざりしてきた。

「リーユエン、呼び立ててすまないが、元老院と法務院から、いささか困ったもの言いをつけられてしまい、あなたにも関係することなので、来てもらったのだ」

と、陛下が説明した。

 法務院と元老院とのやり取りについて、説明を受けたリーユエンは、羽扇子で扇ぎながら、

「では、私に、王女殿下の配偶に準ずる者として、ビアロスの求婚を阻止するために彼と戦えとおっしゃるのでございますね」と、言い、それから、扇子をビシッと閉じると、マエナスを見て、

「あの者は、大穴熊の母熊をわざと挑発して王女殿下へけしかけるという卑怯な真似をいたしましたし、王女殿下を誘拐して私を誘いだしたうえ、殴りかかってきました。そのうえ、私は、彼の妹であるビアンサ側妃に剣で背中から刺されたのです。当然、その事も考慮したうえでのご決定なのでしょうね」と、温度の低い声で尋ねた。

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