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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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6 カリウラ 東荒にてリーユエンと出逢う(1)

 その後、魔獣から退治完了の知らせを受け取ったリーユエンの指示で、隊商は峡谷の唯一の経路である桟道を登って行った。荷物を積んだ運び人が、足を踏み外さないように慎重に登っていくので、時間が普通の三倍以上かかった。彼らが崖の上に全員到着した頃には、もう日没が迫っていた。それで、そのまま、野営することになった。

 天幕を設営する様子を見ながら、総隊長のカリウラは、赤天幕の前までやって来た。赤天幕前の調理場では、オマが、魔獣が食べきれず退治しただけの怪鳥の死骸を集め、羽を毟っていた。

「オマ、その怪鳥は食べられるのか」

 鳥の首をつかんだままオマはうなずいた。

「ああ、これは三足鳥だ。毒はないし、焼いたら美味い。燻製にして、保存食にするよ。あの大喰らいの魔獣もたまにはいい仕事するじゃないか」

「そうか、じゃあ、頑張って燻製にしてくれ。ユニカの具合はどうだ?」

 聞かれたオマは、

「熱がある。まだ眠っているよ。怖い目にあって、可哀想に・・・」と、眉尻を下げた。

「まあ、無事でよかったよ」

「さっき、リーユエンも様子を見にきてたよ。今度から、偵察には付き添うって言ったいたよ。あいつも、この子がこんな目にあったのは、ショックだったみたいだね」

「そうなのか?」

 リーユエンが神経質そうな見かけによらず存外図太いことを知っているカリウラには、意外に思えた。けれど、オマは、羽を次々にむしりながら、

「とっても心配しているように見えたよ。あいつは、案外気が優しいからね」と言った。

 確かに、意図したかどうかは分からないが、今、こうして絶壁の上でのんびり野営できるのも、リーユエンが血を流して、そこらじゅうの妖怪を惹きつけ、魔獣を使役して退治させたお陰なのだ。カリウラは、リーユエンの傷の具合も気になり、赤天幕から離れ、彼を探しに行った。


 カリウラがリーユエンと初めて会ったのは、東荒の森の中だった。

 金杖国や狐狸国のある大平原を何ヶ月もかけてただひたすら東進すると、東荒の地に行き着く。雨が多く、湿潤な気候で、木々がよく繁り、至る所、昼なお暗い森林と湖沼に恵まれた土地だ。東荒に大国はなく、それぞれの部族がめいめい広大な土地のどこかで、気に入った森林の中で生活していた。カリウラの一族も、ウマシンタ川のほとりに近い森の中で、猟師を(なり)(わい)としていた。

 今から七年余前、カリウラは両親や一族の仲間たちとともに、森の中で追い込み猟を行った。大角鹿や、三つ目大猪、毒角大トカゲや、八つ頭の大蛇を捕まえ、その日の猟の成果は非常によかった。カリウラも。大角鹿を一頭、転身して自力で仕留めてご機嫌だった。森林の開けた場所で野営の準備を始めた一族の者へ、焚き火に使えそうな枯れ枝を探してくると言い置き、カリウラは再び森の中へ戻った。

 夕暮れの森は、闇の気配をまとい始め、白い靄が漂い、昼とは雰囲気が異なっていた。野営の場所から離れすぎないよう、カリウラは足元から、枯れ枝を拾いながら、慎重に移動していた。

「ガサガサッ」

 カリウラの前方の茂みが突然揺れた。

「誰だっ」

 仲間がまだ森の中に残っていたのかと思い、声をかけてみた。すると茂みの中から、ヨロヨロと覚束ない足取りで、小さな子供が現れた。

「誰だ、おまえ」

 衣服はボロボロで、裸同然、体中傷だらけで、顔の左半分と左手はひどい火傷を負っていた。足元に届くほど伸びた黒い髪も絡れ、ボロ布のような状態だった。

「・・・・・・」

 子供はカリウラを呆然と見上げた。カリウラの胸元に頭が届かなかった。

「おまえ、どこから来た?ひとりなのか?」

「・・・・・・」

 子供は無言だった。カリウラを見上げた右側の顔は、とても整っていて紫色の眸が宝石のように光って綺麗だった。辺りを見回しても誰もいないため、カリウラは身内の者が集まる、森の空き地まで子供を連れて行った。その子供がリーユエンだった。

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