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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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42 逆恨み(3)

 サンロージアは、大柄な侍女の間近まで近づいた。ビアロスは近衛右軍少将だけあって、筋骨逞しい、猛々しい雰囲気の若者で、手強そうだった。最初は、自分で捕まえる気満々でやって来た彼女も、王后のもとへ行き、侍衛侍女を借りてから、急襲した方がいいと考え直した。それで、スープを運んできた侍女の後に続き、扉から出ようとした。けれど振り返りかけた時、香の煙を、うっかり直接吸い込んだ。

「ハクション」と、くしゃみが出て、しまった、と思った。

 慌てて口を押さえたが遅かった。ビアロスが、電光石火で彼女の前に立ち塞がり、マントを()ぎ取った。

 サンロージアはその瞬間、驚きに目を見開き、邪悪な笑みに変わったビアロスの顔を真正面から見た、そして鳩尾(みぞおち)へ受けた衝撃を最後に気を失った。


 その日も、リーユエンは離宮で、三足鳥の燻製を製造していた。自分が三十羽射落とし、シュリナも、その後頑張って二十羽射落とし、併せて五十羽、それに、どこから聞きつけたのか、燻製を作るのを知った内官長が、他からも三十羽仕入れてきたので、昨日から離宮にこもりきりで、ひたすら燻製を作り続けていた。

 髪を三つ編みにして後ろに垂らし、黒い影護衛服姿の彼女は、

「これが陛下へお渡しする分で、これが王后陛下へお渡しする分、それから・・・」と、燻製を持っていく先の一覧表を見ながら仕分けをしていた。すると、今朝から手伝いに来てくれたザリエルがそばへ来て、「あとで、内官へ運ばせようぜ」と、言った。

 リーユエンは、ザリエルをチラッと見て、

「将軍、こんな所へ来てていいの?早く仕事へ戻りなさいよ」と言った。

 ザリエルは、「俺はやる気満々なんだが、あそこは許可が出ないと入れないんだ。今は、許可待ちなのさ」と、言った。

「内官府の分、ウラナの分と、それからシュリナの分と、それから晩小屋のお爺さまの分と、あと影護衛府の分とデミトリーの分・・・あっ、食べる分がほとんどないっ」

 残りわずか数羽となった燻製肉を見て、リーユエンは悲しんだ。

「嬢ちゃん、そんな悲しそうな顔するなよ」と、ザリエルはリーユエンを慰めた。

 リーユエンは、「やっぱり外苑の番人小屋の方で燻製にすればよかった。昨日からここでずっと燻製を作り続けたから、匂いで、みんなにバレてしまって、食べたがる人が増えてしまったから・・・こっそり作って、いっぱい食べようと思っていたのに・・・」と、残念がった。

「嬢ちゃん、三足鳥は妖鳥だから、陛下の許しさえあれば、外苑でいつでも狩ができる。あいつが見つかって、処分が決まれば、また、俺が外苑へ連れていってやるよ」と、ザリエルは、半泣きのリーユエンを元気付けた。その時、離宮の門が開き、内官長が中へ入ってきた。

 リーユエンとザリエルへ、丁寧に一礼すると、仕分けされた燻製肉に気が付き

「おお、これは美味しそうにできあがりましたね。では、内官に運ばせましょう」と言い、にこやかな顔で

「リーユエン様、陛下は、昨夜は、燻製作りに忙しいあなたに遠慮して、御渡りにならなかったのです。それで、今夜はどうしてもリーユエン様とご一緒に過ごされたいとの思し召しでございます。そのう、燻製の匂いを落としていただきたいので、お早めに後宮の方へお戻りくださいませ」と、鼻を蠢かし、小声で伝言した。リーユエンは、眉尻を下げ、嘆息し、

「承知いたしました。すぐ、後宮へ戻ります」と応え、ザリエル将軍へ「将軍、私は後宮へ戻りますね」と、声をかけ、内官長と一緒に離宮を出た。


 内官長は燻製肉をついでに配ってしまおうと、部下の内官に大量の燻製肉を運ばせながら、リーユエンと一緒に後宮へ来た。後宮についた時は、もう日が暮れて、あたりはすっかり暗くなっていた。

 リーユエンが自分の殿舎へ行こうとしかけた時、暗闇から見かけない若い内官が現れ、彼女の前で跪くと、「王女殿下より親書をお預かりしておりますので、ご覧ください」と、封蝋した親書が差し出された。

 リーユエンは、後宮の中で、サンロージアがわざわざ手紙を寄越した理由を(いぶか)しく思いながら、親書を受け取り、封蝋を開いて、中身に目を通した。内容を読むうちに、彼女の瞳孔が驚きに開いた。けれど表情はまったく変えないまま、王后のところへ行きかけた内官長を呼び止め

「内官長、私、ザリエル将軍へ伝言があったのに忘れておりました。お伝えいただけますか」と声をかけた。立ち止まった内官長へ、

「将軍の失せ物は、確かにその場所にあると私も思います。是非、誰かに手折られないうちに、お早くお探しになってくださいと、お伝えくださいまし」と、話しかけた。内官長は、何のことだか分からないまま「畏まりました。確かにお伝えいたします」と言った。

 内官長が行ってしまうと、親書を持ってきた内官が、黙って手燭の明かりを差し出した。リーユエンも、無言で親書を蝋燭の火へ近づけ、燃やしてしまった。

 親書には、サンロージアとは別人の筆跡で、「王女殿下を人質にしている。手ぶらで、おまえひとりで、手紙を届けに来た内官について来い」と、書かれてあった。リーユエンは厳しい表情で、内官の後について行った。

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