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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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41 外苑での巻狩り(9)

 翌日早朝、リーユエンが目を覚ますと、すぐ横でゲオルギリー陛下がぐっすり眠っていた。陛下の腕は、彼女の柳腰をしっかり抱え込んでいた。

(もうっ!陛下ったら、私にずっとひっついていたのね。どうりで暑苦しいと思ったのよ)

その腕をそっと外すと、リーユエンは上半身を起こし、昨日負傷した右腕を確認した。

(あれ?綺麗に治っている。変だわ・・・一カ月はかかると思っていたのに、まるで法力で治したように、綺麗に治っている。でも、玄武紋は、南荒を出て以来、一度も反応したことがないのに・・・どうしてなんだろう)

 右手首をひねってみても、痛みなく動くので、リーユエンは不思議に思った。それから、(この小屋のお爺さんの寝台を取り上げて、気の毒なことをしたわ。せめてシーツくらい洗濯しておこう)と、思い、まだ意地汚く寝続ける陛下を、シーツをめくり取るついでに、寝台から転がり落とし、長椅子まで引きずっていってそこへ寝かせ直した。それから、シーツを外へ持ち出し、騎獣舎の板壁に立てかけてあった大盥に井戸水を汲み入れ、石鹸を見つけ出して、ゴシゴシこすって、次に足で踏み踏みして洗濯した。ついでに薪を厨へ運び込んで、竈の火も起こして、湯を沸かした。洗濯を終えるや、それを物干しへ広げて干し、大盥の水を捨て、厨で沸かしたお湯をはって、さっさと服を脱いで座浴をし始めた。もの音に気づいたウラナが、家の中から飛んできて、

「リーユエン様、何をなさっておいでですっ」と叫んだ。

 リーユエンは、「おはよう、ウラナ、昨日は心配かけてごめんなさい。でも、朝起きたら、もう具合がすっかり良くなっていたわ。シーツは汚れていたから、洗ったの。ついでに体も洗おうと思って、へへっ」と、屈託ない様子で言った。

 ウラナは、ため息をつき、家の中からお手入れ道具を持ってきた。そして、髪を洗いながら、

「こんな外で、誰かに見られたらどうするのですか?」と、注意した。けれどリーユエンは、

「こんなガリガリの裸なんて、見たがる人なんていないから大丈夫、大丈夫」と、全然気にする様子がなかった。

(もうっ、リーユエン様、あなたのその無防備な格好が、どれほど艶かしく見えるのか、全然お分かりになっていらっしゃらないのですかっ)と、ウラナは、彼女の自覚のなさに呆れていた。そこへ、ザリエル将軍が、林の向こうからやって来て、

「ゲッ、嬢ちゃん、朝っぱらから、こんなところで行水かい?大胆だね」

と、声をかけてきた。

 ウラナは、慌てて将軍の前に立ち塞がり、リーユエンの裸を隠した。が、リーユエンは、ウラナの体の横から顔をのぞかせ

「お早う、将軍、王女殿下の件は、何かわかったの?」と、尋ねた。するとザリエルは

「陛下は、まだいらっしゃるのかい?」と、尋ねた。

「寝室の長椅子で寝ていらっしゃるわ」と、リーユエンの答えを聞くと、

「長椅子?寝台で、嬢ちゃんと寝ていたんじゃないのか」と、言いながら、家の中へ入っていった。


(おや?朕はリーユエンと一緒に寝台で寝ておったはずなのだが・・・)

 ゲオルギリー陛下は、長椅子の上で目が覚めた。昨夜、治療を終えた乾陽大公が引き上げたあと、陛下はまた寝室へ戻り、まだ薬が効いて夢現(ゆめうつつ)のリーユエンと、もう一回あんな事やこんな事をして、そのあとぴったり密着して添い寝していたのだ。一緒に朝の目覚めもお迎えしようと楽しみにしていたのに、目が覚めると狭苦しい長椅子にひとりぼっちで寝ていた。シーツを剥ぎ取るついでに、まさかリーユエンが自分を移動させたとも知らず、

(ウラナのやつ・・・朕を勝手に移動させおったな)と、陛下はウラナの仕業だと思った。ちょうどその時、扉を叩いて、

「入りますよ、陛下」と一声かけて、ザリエルが入ってきた。

「ザリエル、朕は、まだ入ってよいとは言っておらぬぞ」と、陛下が不機嫌な声をあげたが、ザリエルはお構いなしで、

「陛下、昨日の件を調査したのでご報告申し上げます」と、珍しく真面目な調子で言った。

 陛下の琥珀色の眸が鋭く光り「申せ」と、うながした。

「昨日、王女殿下が仕留めた大穴熊の仔熊ですが、近衛右府軍が生け取りにした親子熊で、母熊を檻に閉じ込め、王女殿下の目につくタイミングで、仔熊のみ放ったそうです。それから、母熊に匂いをかがせ、仔熊が狩られたことを知った母熊は凶暴化し、魔獣化したそうです。そうしろと指示したのが・・・」と、ここでサリエルは言い淀んだ。陛下は彼を横目で睨み

「指示したのが、誰だ・・・早く、申せ」と、迫った。

「はい、陛下の、寵妃ビアンサの兄、近衛右軍少将のビアロスです。奴は、母熊が王女殿下を襲おうとしたら、自分が王女殿下を救出し、覚えをめでたくして、いずれ求婚しようと企んでいたそうです」

 陛下はしばらく沈黙した。その間、陛下の体からは、熱風のように怒りのオーラが恐ろしいまでに発散し、吹き荒れた。

「処分は、いかがいたしましょう?」

「王女を、そのような邪な理由で危険にさらしたことは許し難い。捕まえ次第、杖刑百回の上、近衛右軍から追放し、庶人へ落とし金杖国からも追放せよ」

「御意」

 部屋から退出したザリエルは、

(陛下は、本気でお怒りだ。ビアロスの奴、昨日から見当たらないが、とっとと捕まえて、ご指示通りにしないと、今度は影護衛隊が大目玉を喰らってしまうぜ)と、急いで影護衛府へ走った。

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