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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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41 外苑での巻狩り(5)

 リーユエンが矢を放った直後、ザリエル将軍がやって来て、

「嬢ちゃん、手から血がでてるぞ」と、叫んだ。

 リーユエンは、弓をおいて立ち上がると、ベルトに下げた薬袋から血止め薬を取り出し、左手で、右手にバサッと振りかけた。

()〜っ」

 薬がしみる痛みに歯軋りしながら、薬を塗り広げた。

「痛そうだな」と、ザリエルは気の毒そうに言うと次に、「あれ?陛下、いらっしゃるのにどうして、助けにいかなかったんです?」と、白々しく尋ねた。

 ゲオルギリー陛下は、黄金獅子の姿のまま、しかめっ面で、

「リーユエン、朕へ跨がれ、大穴熊を見に行こう」と言った。リーユエンを背に載せると、陛下は駆け出し、たちまち大穴熊が倒れた場所へ到着するや、襲われたのが娘であることに気がつき仰天して

「ロージーではないかっ!怪我はなかったか」と、叫んだ。

 ロージーは、涙をボロボロこぼし、「お父様、怖かったわ」と、父王に抱きつき泣き出した。

 リーユエンは、陛下の背から降りると、大穴熊が死んでいることを確認した。彼女のそばで、ザリエルも一緒に見て確認し

「額の真ん中を矢が貫通して、骨が砕けている。すごい破壊力だな。あの剛弓を使ったんだろう」と、ささやいた。

リーユエンは、「あの弓、弦がものすごく硬かった。手首が折れたと思う」と、元気なくささやき返し、手首を痛そうに抑えた。サンロージアは、リーユエンに気がつくや、父王から離れ、彼女へ抱きつき

「ありがとう、私を護ってくれてありがとう」と、泣きながら礼を言った。

 転身を解いたゲオルギリー陛下は立ち上がり、

「大穴熊は、まるでロージーを狙ったような襲い方に見えたが、一体どういうことなのだ?」と、言った。そこへ、ようやく駆けつけた近衛右軍の兵士たちは、お互い目を見合わせ、黙り込んでいた。

 その様子に気がついた陛下は、小声でザリエルへ、

「何か隠し事があるようだ。探り出しておけ」と、命令した。

 サンロージアはに抱きつかれたリーユエンは

「怪我はなかったの?無事でよかったわ」と、声をかけたが、いきなり体がぐらつき、崩れるように膝が地についた。剛弓を無理に使った反動で、体から力が抜けてしまったのだ。王女は驚き

「リーユエン、どうしたの?」と、叫んだ。

 ゲオルギリー陛下が側へ来て、リーユエンを抱き起こし、駆けつけて来た内官へ

「鋼弓を天幕へ戻しておけ、朕は番人小屋へ行くから、しばらく、誰も来るな」と言いつけた。そして、内官へ騎獣を一頭連れてこさせ、それへ跨ると、リーユエンも乗せて、外苑の一番奥まった場所にある番人小屋へ急いだ。


 外苑には、翡翠池や、林の木立、生き物を管理する番人がいた。今は、老人ひとりがその役目を担っていて、外苑の外れの番人小屋に住んでいた。番人小屋は、石造りで暖炉と台所の焚き口用の煙突が突き出た三角屋根の平屋で、横には、井戸と小さな騎獣舎があり、耕された小さな畑もついていた。そこへ、狩りへ出かけたはずの王后と、忠実な侍衛侍女である四傑がこっそり訪れていた。

「わしは、元気にしておるから、テス、そのように気をつかわずともよいぞ」と、顔半分を灰色の巻毛髭がおおう老人が、王后へ機嫌良く話しかけていた。

 王后は、お茶を飲みながら、

「ゲオルギリーは、ちゃんと食べ物を届けておりますか?何か不足なものはございませんか」と、老人へ優しく尋ねた。

 老人は首をふり「大丈夫だ。いつも巻狩りが終わったあと、燻製肉や塩漬け肉をたくさん届けてくれるし、先日は、小屋の雨漏りも、内官を寄越してすぐ修繕してくれた。ゲオルギリーは、わしには、よくしてくれている」と、答えた。

 王后は、普段の厳しい顔つきとはまったく違う、悲しそうな表情で、

「お父様を、このような番人小屋に住まわせたままにするのは、私は本当に心苦しいのです」と、訴えた。けれど老人は

「いや、本来なら噛み殺されても仕方のない、王位の争いで、命が助かったのは、ゲオルギリーの度量の大きさに救われたからだ。そうでなければ、わしは、孫の成長を見ることもなかっただろう。殺されなかった当初は、あいつの事が許せないと思ったが、今では感謝している」と言った。

 王后は、泣きそうな笑い顔で

「お父様がそのように思っていらっしゃるのでしたら、私も安心でございます」と、応えた。すると今度は老人の琥珀色の目がキラッと光り、

「雨漏りの修理に来てくれた、内官たちが話しておったが、ゲオルギリーの奴、最近若い娘に夢中になって、ほとんど毎晩後宮へ通っておるそうではないか」と、言い出した。それを聞くや王后は(まあ、お父様ったら本当に地獄耳でいらっしゃるのね)と、思いながら、「ええ、そうですの。ゲオルギリーを骨抜きにする女がついに現れましたのよ」と、話した。

 と、そこまで話したところで、外から騎獣の蹄の音が響き、玄関の扉が乱暴に叩かれた。老人は立ち上がり、

「何事だ」と、扉を開けに行くと、鍵を開けるやいなや、扉を蹴飛ばしゲオルギリーが黒づくめの女を抱き抱えて駆け込んできて、

「爺様、すまないが、あんたのところの寝室を一時貸してくれ」と、叫んだ。

 老人は、「ゲオルギリーじゃないか、誰だその女子は、どこから攫ってきたのだ」と、叫び返した。王后も、椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がり、

「陛下、どうなさったのっ」と、叫んだ。

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