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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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5 断崖絶壁の怪鳥(3)

 怪鳥は羽ばたき飛翔した。リーユエンは宙へ飛び上がった。

「ヒィィー、おまえは、翼もなしに宙を飛ぶのか。やはりおまえは、異界で魔物を戦わせ、脱出したあのガキだな」と、人面が叫び、いきなりかぎ爪を蹴立てて、白虎へ急降下し襲いかかった。白虎の全身から青白い炎が吹き上がり、怪鳥を包み込み焼き尽くそうとしたが、消滅する直前、かぎ爪が白虎の胸元をざっくり切り裂いた。鮮血が、血煙となって吹き上がった。

「ああ、気づくのが遅かった。この血さえあれば、あたしの望みだってかなった・・・」

 言い終える前に人面怪鳥は、塵となって消え失せた。

 リーユエンの白い毛皮が胸元だけみるみる紅く染まった。

「リーユエン、おまえ大出血してるぞ」

 魔獣が焦った声をあげた。

()けそこねたんだ」

 空の彼方から、低い唸りが聞こえ、やがて黒い雲が頭上へ迫ってきた。近づいてきたのは、雲ではなく無数の怪鳥だった。

「馬鹿、おまえの血でそこら中の魔獣が集まってきたぞ」

「じゃあ、私たち、先に下へ降りるから、あれ、全部退治するなり、食べるなりしてくれ」

「エエッ、俺がやるのかっ」

 抗議する魔獣へ、リーユエンは、

「守ってくれるって約束しただろ」と、返した。

「分かった、やっつける。だが、あとで生気をもらうからな」と言いながら、魔獣は黒い獣身へ実体化し、退治を引き受けた。

 

 リーユエンは崖下へ降り立った。ユニカを咥えたヨークが後に続いた。

 「リーユエンッ」

 デミトリーの首根っこを掴んでいたカリウラがそれを放り出し、リーユエンへ駆け寄った。着地するなりリーユエンは、転身を解き、地面へ倒れ込んだ。

「ああっ、また怪我してるっ」カリウラは頭を抱え込んで叫んだ。

 リーユエンは両手を地面につけて起き上がり、

「ユニカを手当てしてやってくれ。今、上で、魔獣が怪鳥を退治しているから、それが終わったらすぐ出発しよう」と、言った。

「でも、お前、怪我してるのに・・・」

「魔獣が、集まってきた妖怪をすべて退治し終えた時が一番安全なんだ。すぐ出発できるようにしてくれ、ユニカの手当てを急いで」と、指示した。

 デミトリーは訳が分からず、呆然とやり取りを聞いていた。

 リーユエンは立ち上がると、岩陰へいきマントを脱いで、自分で血止め薬を傷口へかけようとした。が、ヨークが近づき、彼から薬瓶を取り上げ、

「私がやりましょう」と言った。

「頼む」と行って、リーユエンは座り込んで、岩へもたれかかった。

 衣の前を寛げて、鎖骨の下から斜めにざっくり切られた傷は、意外と浅い傷だったが、血は流れるので、ヨークは血止め薬を満遍なくかけながら、心の中で、この方の血は誘涎香血だと、確信した。ヨークでさえ、間近で嗅ぐ血の匂いに酔いそうになった。

「飲みたくなったんだろう」と、リーユエンに低く囁かれ、ヨークは一瞬手を止めた。「ご冗談を・・・私はまだ人間です」

「影護衛は、半ば魔物に近いからな・・・だが、あの魔獣は、私の血に他の者が手を出す事は決して許さない。血の匂いを嗅いでも我慢することだな」

 リーユエンは、右目でヨークを見据えたまま警告した。

「あの人面鳥が、異界で魔物を戦わせ、脱出したガキだと、言ってましたね」

 ヨークは彼の顔を覗き込んで尋ねた。

「・・・・異界に生きたまま堕ちて、帰って来た者は私くらいだろう」

 ひっそり告げられた言葉に、ヨークは驚き、薬瓶を落としてしまった。慌てて瓶を拾い、問い質そうとしかけたところへ、オマがやって来た。

「リーユエン、怪我したんだって、包帯を持ってきたよ。巻いといた方がいいよ」と、声をかけてきたので、それ以上聞く事ができなかった。

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