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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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33 明妃の苦悩(3)

 その声が聞こえたユニアナは椅子から立ち上がり、「お義母様?」と、半信半疑でささやいた。

 扉の脇に立つ大公が、王妃を見下ろし、

「王妃、どうする?私は、あなたが太師とふたりだけで会見することは認めない。部屋へ入って、全員へ、あなたがしたい話をするか、このまま帰ってしまうかだ」と、告げた。王妃は、一寸考えたが、頭をぐっと持ち上げ、堂々と入室した。シュリナは、自分も入ろうとしかけたが、大公が彼女の前に立ち塞がり、扉を閉ざした。

 

 廊下へ取り残されたシュリナが、好奇心を満たされないままチェッと舌打ちして踵を返すと、いつの間に来たのか、気配もなくサンロージアが立っていて、ギョッとした。

「王女殿下っ、不意打ちはやめてよっ!あれ?クンクン」

 鼻を蠢かして匂いを嗅いだシュリナは、王女殿下の髪がなんだか焦げ臭いと思った。

「殿下、髪が焦げ臭いわよ」

 王女殿下は、引き攣り笑いを浮かべ

「エヘッ、昨日の晩、ちょっと失敗しちゃって・・・ねえ、お願い、焦げたところを切り落とすのを手伝ってもらえないかしら?後ろが、うまく切り揃えられないのよ。このまま帰ったら、お兄様に見つかって怒られてしまうもの」と、両手を揉みながら、うるうるした上目遣いという、あざとい表情でお願いした。シュリナは、大方の事情は見当がつき

「また、こっそりのぞき見しようとして、返り討ちにあったんだろう?いいよ、手伝ってあげる。でも、ウラナとアーリナにも手伝ってもらおうよ。私が切ると、本当に縞々の虎柄になりかねないからな」と、ふたりで、廊下の向こうにあるウラナの控室へと移動した。


 一方、部屋入った王妃殿下は、大公殿下と対峙するや、

「昨夜の、娘ハトシェアラの起こした無礼は、深くお詫び申し上げます」と、頭を下げた。大公は、

「謝るなら明妃殿下へしてもらおう、そこに座っておられるから」と、明妃の方を見た。

 明妃は、白く不透明なヴェールを少し持ち上げ、紫の眸を王妃へ向けた。王妃は、大公よりさらに深々と頭を下げた。明妃は、

「お掛けになって、楽になさってくださいな」と椅子を勧めた。明妃の隣に腰掛けた王妃へ、彼女は「怪我をなさっておいでですね。太師に傷口を診てもらってはいかがでしょう。蜘蛛の精は、毒を持つものが多いですから」と、言った。それを聞いた王妃は、ヴェールを捲り上げ、恐怖に引き攣った顔を露わにして、明妃へ取り縋り、

「お願いです。明妃殿下っ、お助けください。私も、娘も、このままでは、あの蜘蛛の化け物に殺されてしまいます」と、叫んだ。ヨーダム太師が後ろから近づき、小声で呪を唱え、首筋の後ろへ指先で触れた。すると、王妃の体は脱力して、明妃の足にすがったまま、ずるずると床へ崩れていった。

 気を失った王妃を、大公が抱え上げ、長椅子へ寝かせた。太師が黒いヴェールを捲ると、驚きに息を呑んだ。

「髪が、皮膚ごとごっそり抜け落ちている。先に手当してしまおう」

 太師は別室から治療薬を持ってきて、王妃の傷の手当を行い、毒が浸透していないかも確かめた。治療が終わり、王妃は目が覚めた。彼女は身を起こし、自身の頭部にそっと触れて、薬が塗ってあるのを確かめた。

 太師が王妃へ

「その傷には、毒は浸透していない。アンゼールにやられたのか?」と尋ねた。王妃はうなずき、もうすっかり気持ちが折れていたため、素直に昨日起こった事を話した。

 話を聞き終わると、明妃が王妃へ、

「それは恐ろしい目にお遭いになられたのですね。お気の毒に・・・」と、同情を込めて労わり、続けて「けれど、ユニアナ王女が、第二王女殿下の婚姻について触れたのは、善意からで、その後の事情はご存知なかったのですから、責めないでくださいまし」と話した。実際、自分が唆してさせた事で、まさか、ここまで重大事態に発展するとは予想外だった。王妃たちの自業自得な面もあるとはいえ、後味の悪い結果だった。気になってユニアナの方を見ると、彼女も血の気の失せた顔で、震えていた。(ユニアナを傷つけてしまったか・・・)

 明妃は、ユニアナまで傷つけたことを後悔した。

 

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