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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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29 上陸本番(5)

 明妃は、シュリナが蕁麻疹が出るほど嫌がった、足を斜めに揃え、上半身は足の向きとはやや逆方向へ重心を流しつつ、頭部は足の重心方向と一致させる姿勢で腰掛けて「私は、玄武の皆様のたぶん八割いや九割かしら?・・・の方々に、きらわれているから、嫌がらせなんて慣れています」と、ここで短くフッと嘆息し、

「はるばる東荒から中央大平原を経て玄武の国へ、ヨーダム太師へ弟子入りして魔導士になろうと思い、苦労してやって来て、痛い思いまでして神聖紋の刺青まで入れていただいたのに・・・猊下が私を・・・」と、途中で止めたので泣いているのかと思い、ダルディンは、明妃の顔を見た。意外なことに、彼女は、頬を、ぽっとほの赤く染めて、目元を熱っぽく潤ませていた。一体何を思い出しているのやら、その凄絶なまでの色気をたたえた目元は、正視しようものなら、たちまち理性が溶けてなくなりそうで、慌てて目を背けた。

「私は、明妃なんて、何をするのかも全然知らなかったのに・・・猊下が猛スピードで話を進めておしまいになって・・・猊下のなさることに、私は不服を唱えたりはいたしませんけれど・・・ただ、玄武八大公の方々は、未だにご納得なさらない方がいらっしゃいますから」と、ちょっと悩ましそうに小声で話した。

 ダルディンは、なるべく明妃を正面から見ないようにしながら

「まあ、当時の事では、今だに色々誤解があるようだから、あなたには申し訳ないと思うよ。だが、時間が経てば、あなたこそが、猊下の明妃として最も相応しいお方なのだと、皆、納得するはずだ」と、慰めた。けれど明妃は、目をつぶって首をふり、

「そんな日が来るとは、私には、とても思えません」と、ひっそり返事をした。それから、紫の目を見開くと、「明日は、下船の際に、僧侶魔導士たちが騒ぎを起こすと思うので、その時は、はっきり格の違いを見せつけようと思います」と、宣言した。

 ダルディンもうなずき「そうだな。玄武国魔導士の実力を見せつけてやるべきだし、明妃の力もはっきり示しておくべきでしょう」と同意した。

 

(ウラナの独白)

 本当に、よいタイミングで戻ってくださいました。あのようにシュリナの顔が赤く腫れ上がってしまっては、明日はお化粧なんて、とてもじゃありませんが、無理でございました。シュリナには、辛抱強く、優美で(たお)やかな動作を教え込もうとしましたが、まるでダメでございました。

 明妃も、シュリナも、同じ牙の一族のはずなのに、どうしてこうも違うのでしょう。やはり、紫牙と黄牙の一族の女人では、異なるのでしょうか?それにしましても、明妃は、ちょっと野に出て行くと、隙あらば野宿をしようとなさいます。今度もヨーダム太師がついていながら、また野宿でございます。明妃のお(ぐし)から、濡れた落ち葉や、キノコのような匂いと、それから、何か鳥?の気配がいたしました。アスラの世話で手一杯でいらっしゃるはずなのに、また妙な生き物を飼う気でいらっしゃるのでしょうか。さあ、座浴をしていただいて、明日の準備に備えねば、気がつけば、もうすぐ夜明けでございます。


 金杖国一行が乗船する蝉鯨号に続き、海蛇号が、大型船専用の船着場に接岸した。移動式の階段が運ばれ、船と桟橋を繋いだ。桟橋の周囲には、多くの群衆や、神聖大鳳凰教の高位聖職者である主教や僧侶、尼僧たちも、出迎えにきていた。

 蝉鯨号から、金杖国の使節団が下船し始めた。均整の取れた筋肉質で長身の体に黄金の巻毛が華やかな、美丈夫のデミトリー王太子殿下(服装は、純白の細かい襞のある貫頭衣に王太子のみ着用を許される濃臙脂の裾に二本線の金飾りつきのトーガ姿)そして金杖国の薔薇と讃えられるサンロージア王女殿下、(今日の王女殿下は、薄桃色の胸元に透き通るように薄いレースを何層も重ね、細っそりしたウエストには紅桃色のリボンに真珠をあしらい、光沢のある臙脂の生地に黄金のバラと獅子を大胆に金箔押した裾の長いローブドレス姿だった)が、下船され、大歓声で迎えられた。

 

その後、海蛇号の移動式階段の最上段に、六人の人影が現れた。

「ヒィィー、どうしましょう。あんなにたくさんの人が集まって、それにこちらを睨みつけている人が随分多いわ。私、何だか恐ろしくなってまいりましたわ」と、アーリナは、ユニカにすがりついた。

 今日のふたりは、襟元に小花模様を刺繍した淡紅梅の衫と、浅縹から裾へ行くに連れ濃縹へ変わる光沢のある柔らかな裙に、裾に金糸で貝殻と海藻を刺繍した白い袍、そして紅梅の肩巾を身につけていた。下船の際僧侶魔導士からの攻撃の恐れがあるため、明妃より先にこの二人とその後ウラナとシュリナが下船し、最後にダルディンが明妃ととも下船する段取りだった。

 アーリナに取り縋られたユニカは、「だ、大丈夫ですよ。後ろには、大公殿下と明妃殿下がいらっしゃるのですから、絶対安全ですよ」と、自分自身にも言い聞かせつつ、アーリナを励ました。

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