表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/252

25 明妃の噂(7)

 デミトリーは、暗示にかかって騒いだ者には、またこんな騒ぎを起こしたら無事ではすまないと、散々に(おど)しつけてから釈放し、最後にバザムについては、領事館の者へ、自分達が南荒から帰ってくるまで留置しておくように命令した。

 そして、彼らはまた宿屋に戻った。

 

 宿屋の入り口では、シュリナが待ち受けていた。明妃の姿をみつけるや駆け寄り、

「私を置き去りにするなんて、ひどいよ。おもしろい事なら、私も誘ってよ〜」と訴えた。

 明妃は肩をすくめ「南荒の僧侶が私の悪口を言いふらすから、牢屋にぶち込んでもらっただけよ」と、言った。

 シュリナは目を輝かせ、「何、それ、滅茶苦茶おもしろそうじゃないのっ。さっき、宿の前で騒いでた連中もそうなんでしょ。あなたのこと淫妃とか、穢らわしい魔女だとか言って騒いでたわよ」と、言いながら、どんな仕返しをするつもりなのかと、胸をわくわくさせた。

 ところが明妃は、「淫乱とか穢らわしいなんて、散々言われてきたから、今さらって感じね。それより、邪術って言われたのが本当に腹が立つわ。私は、ちゃんと魔導士学は修めたのですからね」と言うと、その横でヨーダム太師がうなずき

「まったくその通りだ。わしの弟子の中でも、抜きん出て優秀なあなたを、邪術を使うなどと、まったく許し難い」と話した。

 大公は苦笑いし、「とにかく中へ入りましょう」と、うながした。

 デミトリーとサンロージアは、その会話を聞いて顔を見合わせた。ふたりとも、明妃が気にするのは、そっちの方なのか、それって気にするところが、世間の常識とは、ずれていませんか?と、思ったのだ。

 サンロージアは、またもや明妃に近づき、「ねえねえ、淫乱とかって散々言われてきたって誰に言われたの?」と、無邪気に尋ねた。

 明妃は「それは・・・」と、口籠り、乾陽大公をちらっと見た。

 大公が代わりにサンロージアへ「彼女が明妃になった当初から、猊下のお身内、つまり我々八大公の一族の中で、そういう事を言う者が多くいたのです」と、答えた。 サンロージアは、それを聞いて目を潤ませ、

「明妃って、小姑にいじめられて苦労してきたのね。お気の毒に・・・」と言った。 明妃は、黙って肩をすくめた。


 応接室へ入ると、デミトリーは、明妃へ

「これからどうする?」と、尋ねた。明妃は、

「あの高位聖職者は、明妃を上陸させるな、鳳凰に近づけるなと指示していたから、私は一日でも早く南荒に上陸し、鳳凰に近づこうと思う」と答えた。

 乾陽大公ダルディンもヨーダム太師も賛成してうなずいた。

 明妃は続けて「それだけでは、おもしろくないから、明妃は、ひどい噂に怒って途中で引き返した。座主の名代を誰にするかで、使節団の中で揉めているという偽情報を流そうと思う」と言うと、サンロージアとシュリナが目を輝かせ

「それ、おもしろうそう」と賛同した。

「例の臨時雇いの男に、偽情報を拡散させればいいな」と、大公が提案した。

 それにうなずくと、明妃は「ということで、私は玄武国へ引き返したということにするから、移動中は、魔導士の格好でおります」と、宣言した。そしてシュリナへ

「南荒へ上陸後もしばらくは様子を見たいから、あなたが、私の代役をしてちょうだい」と頼んだ。けれどシュリナは

「ええっ、私は、あなたみたいに女らしく振る舞えないし、あなたの服は私には全然似合わないから、すぐバレちゃうよ」と反論した。それに対して明妃は

「ヴェールで、全身隠しておけば大丈夫。どうせ、私の顔を知っている者が南荒にいるはずないし、本番の儀式では、私本人がちゃんと明妃になるから、心配いらないわ」と、説得した。しかしシュリナは

「あなたの真似なんて、辛気臭くて退屈で死にそうだわ。考えただけでも蕁麻疹が出そうよ」と、愚痴った。

 すると、明妃はフフッと薄笑いを浮かべ、シュリナへ近寄ると、耳元で「ねえ、シュリナ、龍の心臓化石はまだ少し残っているんだよ」と、低い声でささやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ