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異界に堕とされましたが戻ってきました。復讐は必須です。  作者: nanoky


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25 明妃の噂(5)

 デミトリーの影になって護衛するヨークは、彼が指を鳴らすや、僧侶を捕縛に向かった。途中で、宿の周囲で護衛任務にあたっていた仲間に声をかけ、二人となった。

 僧侶がいたのは、今度は広場の中の常設市場の食堂だった。やはり酒を餌にして、単純で信じやすそうな人足や、食い詰めた金杖の若獅子を狙って、「玄武の明妃は邪術をつかう穢れた魔女だ。淫妃だ」と洗脳中だった。

 酔っ払った若獅子が、顔を真っ赤にし、「そうだ、あいつは淫妃だ。穢らわしい魔女だ」と、叫んでいた。それに合わせて「淫妃、淫妃っ」と周りで人足が囃し立てていた。

 ヨークたちは、影のまま彼らに近づき、いきなり実体化し、立ち上がった。そして問答無用で、投げ飛ばし、蹴飛ばし、縄で縛り上げた。

 僧侶は、フードが外れ、顔が丸見えのまま「おまえたち、私は神聖大鳳凰教の僧侶だぞ。何の罪でとらえるというのだ。私に対して、このような扱いをして、ただで済むと思うなよっ」と、喚いた。

 それをヨークは無言で殴り飛ばして気絶させ、もうひとりの影護衛と一緒に、彼らを荷駄のように両肩にひとりずつ担ぎ上げ、用意してきた荷車に詰め込み、金杖王国領事館の地下牢へぶち込んだ。任務を終了した彼らは、宿へ戻った。

「ねえ、ねえ、ヨーク」

 宿へ戻る途中、影護衛の同僚であるニンマが、ヨークへ話しかけた。

「なんだ?」

「明妃って、例のあの子でしょ。ほら、転身前に経絡を開かれちゃった可哀想な子でしょ?玄武国の法座主がやっちゃった?」

「そうだ」

「ふふっ、あなた主代えしたいのね」

 僧侶を投げ飛ばして顎を蹴り上げたとき、ヨークの目が据わっていたのを、彼女は見逃さなかった。明妃が侮辱されて、ヨークは本気で怒っていた。

「・・・・・・」

「私も明妃が見てみたいな、淫妃だなんて言われて、きっと泣いてるわよ」


 その頃、宿では

 明妃は、デミトリー達と、影護衛からの報告を待っていた。椅子に腰掛け、頬杖をつく明妃は、(淫妃かぁ・・・おもしろい事をいう奴だなあ。まあ、猊下とは、あんな事も・・・こんな事もしてるから、淫って言われても、まるっきり間違いとも言えないかも・・・でも、邪術はいただけないよなあ・・・私は、魔導士の学課は正式に修めているのに、本当に失礼な奴だ)と、ぼうっと考えていた。

 しかし、デミトリーやサンロージアは、(明妃、淫妃だなんて叫ばれて気の毒に、きっとショックで、気分が落ち込んでいるに違いない)と思い、同情の眼差しを向けていた。

 明妃は、ダルディンへ

「どうして、あの連中は、私の悪口を言いふらすのかしら?別に構わないけれど、わざわざ酒代を出してまで煽る理由が知りたいわ」と、不思議がると、「前に隊商を立ち上げたときは、こんな騒ぎはなかった。ここ数ヶ月のうちに、誰かが言いふらしたようね」と、続けた。

 ダルディンが顎に手を当て、「あなたが、瑜伽業で、太極石を大量に生み出したのが知られて、狙われているのかもしれないな」と言うと、

 明妃は「でも、あれは猊下の法力が強まったためですよ。私は何も大したことはしておりません」と、返した。

 しかし、ダルデインは、ドルチェンから直接、今回の瑜伽業では、明妃が今まで達したことのない境地へ至ったことで、太極石を大量に生み出せたのだと、聞いていた。その情報が、まさかそのまま漏れているとは思えないが、玄武の魔導士と、南荒の神聖大鳳凰教の僧侶魔導士の中には、交流のある者もいた。太極石が大量に生み出された結果について、もう彼らも知っているのだろうと、ダルディンは推察していた。

 サンロージアはふたりの会話にまた好奇心が刺激され、デミトリーへ「お兄様、瑜伽業って何ですの?」と質問した。けれどデミトリーは「私は、それが始まる数日前に帰ってきたから、詳細は知らない」と答えた。

 サンロージアは、口を尖らせ、(もうっ、私の胸の中は知りたいことだらけではち切れそうですわ)と、心の中で叫んでいた。

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