20 ユニカと再会(4)
「お待たせして、ごめんなさい」
明妃が、ユニカを伴い現れた。ウラナは、明妃を、詰襟の白地に薄く灰色がかった光沢のある衫と、銀糸で草花紋を織り込んだ浅葱色の裙、その上に、薄い灰色から裾の方へ濃青紫色に変化する薄絹の袍を羽織らせた。
謁見室の上段に立つ明妃を、デミトリーは目を細め、一瞬眩しそうに見上げた。けれど明妃は、わざわざデミトリーの方へ降りて来て拝礼し、ユニカへ
「こちらにいらっしゃるのは、金杖王国の第一王子、デミトリー殿下よ、ユニカ、拝礼なさい」と促した。ユニカは大慌てで拝礼した。
デミトリーは 鷹揚な態度で拝礼を受けると、明妃へ
「ここだと堅苦しいから、中庭の東屋へ行かないか。それにお茶と何か食べさせてほしい」と、求めた。
「承知しました。ウラナ、彼へ何か軽食を用意してさしあげて」と、侍女頭へ指示し、デミトリーへ「山牛羚羊狩りに行かれたそうですね。獲物は取れましたか」と、尋ねた。
デミトリーは、笑って「ああ、私は三頭仕留めた。今日は血抜きして、明日氷室へ入れるそうだ」と返事した。そして、彼らは東屋へ移動した。
「ユニカ、俺が金杖の王子ってわかってびっくりしただろう?」
東屋へ移る途中、デミトリーから聞かれ、ユニカは
「はい、驚きました」と、答えた。するとデミトリーが
「なあ、俺が王子だったのと、リーユエンが明妃だったのと、どっちが驚いた?」と、尋ねた。
ユニカは少し考えて
「デミトリー殿下は、何となく両家のお坊ちゃんに見えたので、やはり老師が明妃でいらっしゃった方が驚きでした」と、正直に答えた。
デミトリーは笑い「アハハッそうだよな。俺もビックリしたもんなあ」と言った。
東屋へ到着し、席へつくと、ユニカから、手紙がデミトリーへ渡された。
「ああ、父上からだ」
ユニカは、また仰天した。「えっ、じゃあ、私が預かったのは、国王陛下のお手紙だったのですね」
ミンズィから頼まれ、軽い気持ちで引き受けたが、国王陛下からの手紙と知った今になって、冷や汗が出た。
「いや、そんなに気にしなくていい。ただの私信だから・・・」と、言いながら、厳重に包まれた外側の包みの封蝋を切り、封書を取り出し、封を切って中身を読み出した。
「へえ・・・南荒で、南極霊元教皇の代替わりがあるそうだ。。招待状が来たらしい。玄武国へも使者が寄越されたそうだ。・・・俺に、国王名代で出席しろって書いてある。ああ、それから、玄武国も使者を立てるなら、南洋海を渡る船団を合同で編成してはどうかだって・・・船の数が限られるから、二国協働にする方が効率的だろうって」
それを聞いた明妃は
「そうですか。国王陛下のお心遣いに感謝申し上げます。猊下へ、使者が参ったかどうか、確認いたしましょう」と応じた。
その後、デミトリーが食事をして落ち着くと、明妃は、座主のもとへ先触れを出した。ウラナが取次ぎ、「猊下が、いつでも来て構わないと仰せです」と、明妃へ伝えた。明妃は、デミトリーとユニカを伴い、猊下の執務室を訪ねた。
執務室には、猊下の他に、巽陰大公とヨーダム太師の姿があった。猊下とふたりへ、明妃は恭しく拝礼した。
巨大な執務机の向こうからドルチェンは、明妃を見上げ
「南極霊元教皇の代替わりの事は、もう聞いたのか」と、尋ねた。明妃は
「はい、さきほどデミトリー殿下から、お聞きしました」と、答えた。ドルチェンの薄緑色の眸が、明妃の横に立つデミトリーへ止まった。デミトリーは軽く拝礼し、受け取った手紙の内容を説明した。
猊下は「なるほど、確かに、金杖国王の提案はもっともな事であるな」と呟いた。




