20 ユニカと再会(2)
三人は、大通りから水晶筋へ入り、狐狸国の支店へ行った。ハオズィが店先に現れた老師に気がつき、ユニカを奥から連れてきてくれた。
「老師っ」と叫んだユニカは、店の前に立つリーユエンへ駆け寄った。
「ユニカ、元気そうだね。こんなに早く、どうやって来たの?」
中央平原から普通は一ヶ月はかかるのに、随分早い。カリウラのように大鵬鳥に乗ったのだろうか。しかし、ユニカは、「うふふふっ」と笑い「私、自分で飛んできました」と目を輝かせて言った。
「中央平原から飛んできたのか?」
「そうです。私、すごく飛べるようになりました。老師のおかげです。本当に感謝してます」
ハオズィも店から出てきて、「ユニカは、風に乗って中央平原からここまで五日で到着したんです。すごいですよね」と、話に加わった。
ユニカは、「デミトリーに、お手紙を預かってきているんです。あの人は、どちらにおられますか」と、尋ねた。
「殿下は・・・今日の予定はどうだったかしら?」リーユエンが首をひねると、足元の影からヨークが立ち上がり「殿下は本日は、大蔵大臣の御令息方と、山牛羚羊狩りのご予定です」と、話した。
「ヨーク、彼が帰ってきたら、離宮へ顔を出すように伝えて」
「御意」
ヨークはまた影に戻ろうとしたが、ユニカが
「ヨーク、お久しぶりです」と、挨拶したので、「お久しぶりです。ユニカはすっかりたくましくなりましたね」と返した。
(何なのよ、この子、さっきから老師、老師って、ずいぶん親しげじゃない、リーユエン様と一体どういう関係なのよ)
アーリナは、ユニカがリーユエンを老師と呼び、親しげに話すのを見て羨ましかった。一体この子は何者なのだろう。
「ユニカ、シュリナは覚えている?」リーユエンが、尋ねると、ユニカは、「はい、黄牙の長老の娘さんですよね」と答えた。
次にリーユエンは、アーリナへ、「アーリナ、この子は、隊商で空中監視人として働くユニカというの。仲良くしてやってね」と、ユニカを紹介した。
そしてユニカへは、「このお嬢さんは、宰相のお嬢さんでアーリナというの」と紹介した、
ユニカは薄緑色の目を輝かせ、「宰相のお嬢さまですか。ユニカと申します。どうぞ、よろしくお願いします」と頭を下げた。
「私の方こそ、仲良くしてちょうだいね」と、アーリナは、ユニカの人懐っこい態度に、機嫌を治して答えた。
「老師、何だか、雰囲気が変わられましたね」と、ユニカが小さな声で言った。
「そう?」
ユニカはうんうんとうなずき「何ていうか、柔らかい感じです。お国に戻られて安心されたからですか?」
「お国ねえ、そうかもしれないね」
ここは故郷ではないのだが、ユニカは、リーユエンを玄武の国の出身だと思っていた。
「ユニカ、私は、今現在は、宮殿の奥の離宮にいるんだ。一緒に来てしばらく泊まってみる?」
リーユエンが、そう切り出すると、ユニカは、「離宮があるんですか。行ってみたいです」と飛び跳ねながら言った。
四人は、街中で買い物やお茶を楽しんで、離宮へ戻った。
プドラン宮殿の最奥、離宮へ連れてこられたユニカは、瞠目し
「すごい、御伽噺の国みたいですね。魔法にかけられたお姫さまが眠る城だわ」と、昔、乳母に読んでもらったお気に入りの御伽噺を思い出し、感激した。
それを聞いたシュリナは、豪快に笑い
「ハハハッ、眠り姫の話か、なるほど、こんな城だったかもしれないな。でも、ここに住んでるのは、眠り姫じゃなくて、玄武国の明妃だよ」
ユニカは顔を赤くして、シュリナを見上げた。
「明妃って、あの、もしかして、法座主の奥様ですか。狐狸国でもお噂を聞いたことがあります」
「へえ、どんな噂だい?」シュリナはおもしろがって尋ねた。
「えっとですね。法座主を誘惑した妖婦だとか、蛇淫の術を使う大蛇の化生とか、絶世の美女で、誰でも一眼みたら虜になってしまうから、座主が嫉妬して幽閉しているとか・・・」
横で聞くリーユエンは、フードの中で、恥ずかしくてたまらなくなり、顔が赤くなった。




