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第十三話 女神無双①

「そうもんよ? だから言ったもん。神の力はあれくらいじゃ表せないって」


 涼しい顔でそう言うと、かみのこはぴょこぴょここちらに駆けてきた。


「はぁぁぁぁ!? お前言ってたよな、モンスター怖いって! 神様の力が使えないって! 『わたし弱いから助けてー』ってヤツじゃなかったのかよ!? 今の動き、完全に超人の域をこえてたぞ!」


「ちょ、超人って……そんなこと言われてもかみのこは神様もん。ニンゲンさんと違って、いろいろ神がかってるだもーん。もーんもん♪」


 鼻歌まじりに、神がかってるという変わったワードをぶっ込んでくる。

 すごく可愛らしいが、なんだかその態度が今は妙に憎たらしく感じてしまう。


「ロリコンさんにとってはすごい動きしてたかもしれないけど、これでも結構制限されちゃってるもんよ? 光みたいに速くは動けないし、お空を飛び回ることだってできないもん。それに、ただ身体能力が優れてるってわけじゃないもん。神様には、神がかってる感覚器官が備わっているんだもん!」


 そう言って、自信満々のかみのこが指差したのは自身の目だった。


「まずはこれ、神眼(しんがん)もん!」


「しんがん……?」


「うん! 目に見えているすべての物の見え方を、自由に調整できちゃうんだもん! これのおかげで、ワイバーンさんの攻撃もらくらく避けれちゃうんだもん!」


 なにその能力。

 見え方を調整できる、ってのはつまりあれか。見たいものを拡大したり、スロー再生みたいに捉えられるってことだろうか? 動画を編集するみたいに。

 じゃあさっきのは、攻撃がすり抜けたんじゃなくて、極限まで攻撃を引き寄せて避けたからあんな風に見えたってことか。


 ……うん、普通にチート能力じゃん。


「他にも神耳(しんじ)とか、神脳(しんのう)。あと神鼻(しんび)とか!」


「まだあんの……?」


「もん! 近くのどんな些細な音でも聞き取りれたり、一度見たものは絶対に忘れなかったり、どんな匂いも嗅ぎ分けれたりって感じもん!」


 次々と女神の秘めたる力を暴露していくかみのこ。


 頼むからそのチート能力をどれか一つでも、分けてほしい。

 |こんなバリアしか貼れない能力《守護のシンボル》なんかより、よっぽどそっちの能力の方が魅力的なんですけど。


 羨ましそうにしてる俺の視線に気付いたのか、かみのこは俺に向けて。


「そんなに気になるなら、ちょっとだけ使ってみるもん?」


「へ?」


 と、意味深なことを言ってきた。


 それってどういう……。もしかして俺も神様になれちゃったり──!



「ギャォォォォォォォォッ!」


「うわっ! 起き上がりやがった!」


 かみのこの言葉にテンションが上がりかけていると、背後からけたたましい叫び声が響いた。


 ワイバーンだ。

 さっきの一撃で倒せたと思ったが、再び体勢を立て直したらしい。

 咆哮と共に怒りに満ちた眼光をかみのこに向け、羽を広げて飛び上りると、俺たちに向けて再度襲いかかってきた。


 前方からでは防がれたので、今度は上空からというわけだろう。

 が、何度やっても同じだ。


「どっから来ようが、俺のプロテクションで防いで……ってかみのこ! なんで俺から離れてるんだよ!」


 気づけば隣にいたはずのかみのこが、俺から数十メートル離れた場所に立っていた。


「おい、早くこっち来い! 戦うにしても近くにいてくれなきゃ、距離感掴めなくてサポートできねぇよ!」


 そんな俺の言葉にかみのこは。


「だいじょーぶ! さっきのでわかったもん! モンスターさんってどれくらい怖いのかなって思ってたけど、これなら今のかみのこでも倒せるって。それより、ロリコンさんは巻き添え受けないように自分のこと守ってて!」


 と、そのまま振り返ることもなく、前方のワイバーンへと向いてしまった。


「あいつ……」


 その様子に俺は、なんとも言えないモヤモヤを感じた。

 しかし、俺が行ったところで、かえって邪魔になるのでは?と思ってしまい、俺はかみのこの戦闘を見守ることしかできなかった。



「ギャオオオオン!」


 飛び上がったワイバーンが高空から爪を振りかぶり、猛禽(もうきん)の如き勢いで襲いかかる。

 怒りにまかせたその一撃は、尾を斬られた報復に違いない。


「よいしょ♪」


 しかし、その一撃もまたもひょいと軽く体をずらすだけでかみのこの体を通り抜ける。


「そぉーれっ♪」


 そして、そのまま流れるようにリコーダー剣が一閃され、ワイバーンの手の甲に浅く裂け目が走った。


 傷を増やされたワイバーンはさらに怒り狂い、闘争本能のままに牙や爪を振るい、ちぎれた尾の断端すら使って連撃を仕掛けてくる。

 だが、仕掛ければ仕掛けるほど逆に完璧なカウンターを食らう。

 攻撃後のわずかな隙も逃さず、かみのこは切り返し、新たな傷を刻みつけていく。


「あー、なるほどね」


 目の前の光景に俺は思わず呟く。

 この光景、どこかで見たことがある。

 引きこもり生活を謳歌してる時にゲームの画面越しに、何度も何度も目にしてきたやつだ。


 いわゆるハンターと呼ばれるキャラクターが、巨大なモンスターに立ち向かう、あの有名ハンティングアクションゲーム。


「あいつ今、ソロでモンハンやってるわ」

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