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第九話「邂逅、または災厄」

進化の門の奥から現れたのは、知性を持つ三体の「純粋進化体」だった。漆黒の昆虫型、硬質な岩男、そして“ムーの代理者”と名乗る少年。交渉を拒否され、陽一郎たちは突如襲撃を受ける。その圧倒的な力に、陽一郎は「勝てないのか」と自問するが、拳次は「火力で突破する」と宣言。激しい戦いの火蓋が切って落とされた。

「やばいぞ……! この気配、数じゃない。質が違う!」


ゴローの警戒音声と同時に、門の奥から放たれたのは、まるで雷鳴のような殺気だった。


空気が弾け、三体のシルエットが霧の中から姿を現す。


「……人型?」


陽一郎は目を細める。だが、それは“ヒト”ではなかった。


一体は、漆黒の外殻を纏い、背中から昆虫のような羽を広げていた。目は無数に分裂し、蠢く。


もう一体は、火山岩のように硬質な皮膚を持ち、全身から蒸気を噴き上げている。


そして最後の一体は、少年のような姿をしていた。白銀の髪に、無表情の顔。その目だけが異様に澄んでいる。


「ようこそ、進化の門へ」


少年の声は、静かに響いた。音に反応して周囲の空間が微かに震える。


「喋った……?」


「意思があるタイプの進化種か……いや、違う。あいつ、明らかに“知性”を持ってる」


拳次が肩越しに囁く。彼の火炎放射器がゆっくりと構えられる。


「待って。交渉できるなら――」


「交渉の意思はありません」


少年が遮るように言った。声は柔らかいが、そこに情はなかった。


「君たちは“外”の存在だ。この領域に入った時点で、淘汰対象となる」


「ちょ、ちょっと待て! こっちはただ――」


ドンッ!


突如、蒸気を纏った岩男が地を踏みしめ、音速で拳を振り下ろしてきた。拳次が火炎放射器で迎撃し、爆炎が吹き荒れる。


「交渉決裂ってことだな!」


「戦闘開始だ、来るぞ!」


ゴローの警告とともに、昆虫型が羽ばたき、空中から陽一郎に襲いかかる。


「──“瞬間移動”!」


陽一郎はとっさにその場からワープ。


背後に移動した刹那、鋭く蹴り上げたが、相手は無数の複眼で軌道を読み取り、回避。


「なに……! こいつ、ただの怪物じゃない!」


「進化の中でも特別だ、あいつら……!」はるかが怒声を上げる。「“純粋進化体”だよ!」


その名に、場の空気が変わった。


「純粋進化体……“ムー”による直接的進化種か。そりゃ手強いわけだ」


ゴローが分析を続ける。


「普通の変異体とは違う。遺伝子レベルで理性と力を両立している。“兵器”として完成された個体群だ」


「つまり……俺たちじゃ、勝てないってことか……?」


陽一郎の言葉に、少年型の進化体が一歩、前へ出た。


「勝ち負けではない。“進化”とは選別だ」


その瞬間、彼の周囲の空気が音もなく収束した。


「避けろ……!」


ドシュン!


爆音とともに、全方位に放たれる重力のような衝撃波――その中心に、銀髪の少年が立っていた。


「俺は……“ムーの代理者”。進化の門番として、君たちを試す」


「試す……だと?」


拳次が歯を食いしばりながら立ち上がる。


「なら……上等だよ。火力で突破してやるッ!」


──激突は、始まった。

第九話では、進化の門番である三体の純粋進化体との激突が描かれました。特に印象的なのは、知性を持つ少年型進化体“ムーの代理者”の「進化とは選別だ」という言葉。彼らの圧倒的な力と、陽一郎たちの覚悟が鮮烈に描かれました。果たして、陽一郎たちはこの強敵を突破できるのか?次なる展開にご期待ください。

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