第六話「進化震源地へ!」
進化体の巣窟“進化震源地”へと突入した拳次たち。
彼らを待ち受けていたのは、音速で疾駆する異常進化種《鋼風》。
火炎、爆薬、そして“瞬間移動”の連携は果たして通用するのか……?
火力と友情で切り拓け、運命のバトル、開幕です!
「じゃあ、装備の最終チェックだ!」
火山拳次の声が、地下駐車場の空気を震わせた。
昨夜の焼肉パーティーから一夜明け、避難拠点には一転して張り詰めた緊張感が漂っている。
「爆薬よし! 火炎放射器よし! 友情よし!」
「最後のそれ、要る!?」
陽一郎がツッコミを入れると、拳次は親指を立ててニカッと笑った。
「友情は火力の燃料だ!」
「いや、意味わからんから!」
彼らが向かうのは、マップに赤丸で囲まれていた最も危険な“進化震源地”――城南区工業団地。ムー出現直後に地盤ごと崩落し、現在は進化体の巣窟となっているという。
「最近、あそこから“異常進化種”が頻繁に出没してる。目撃者はゼロ……つまり、生き残ったやつがいないってことだ」
ゴローが厳しい口調で告げた。
「危険がいっぱいってことだね! テンション上がってきたぁ〜!」
はるかは拳をブンブン振り回している。
「お前のテンションが一番異常だよ……」
陽一郎はため息をつきながら、自身の“進化能力”を思い出していた。
──“瞬間移動”。
視界に入る場所へ一瞬で移動できる、だが精密な制御にはまだ慣れていない。
ミスれば壁に激突、最悪の場合、自分がバラバラになる危険もある。
「無茶すんなよ、坊主。使いどころ間違えるな」
拳次が銀色の球体――自作の即席グレネードを陽一郎に手渡した。
「これ、持ってけ。爆発する友情のかたまりだ!」
「だから爆発と友情を混ぜんな!」
◇ ◇ ◇
焼けた街を進み、廃工場群を抜け、彼らはついに“進化震源地”の縁へとたどり着く。
「見えてきた……!」
黒い霧が空間を歪め、巨大な逆ピラミッド型の“オベリスク”が地上に突き刺さっている。
その周囲には電柱のように異形化した金属塊が林立し、辺り一帯を不気味な静寂が包んでいた。
「ここから先は異常領域。警戒を最大に──」
ゴッ……!!
突如、空間が歪んだ。
「来るぞ! 高速接近!」ゴローの目が鋭く光る。
次の瞬間、疾風とともに現れたのは──四足で地を駆ける、白銀の装甲獣だった。
「な、なんだアレ……チーター? いや、金属で覆われてる……!」
「“鋼風”か……!」拳次が舌打ちする。
鋼の脚部で疾走し、風圧を纏って標的を切り裂く異常進化種。しかもその動きは常識外の速さ――陽一郎の目にも追えない。
「わっ、こっち来た!」
風を切って迫る鋼風の攻撃。だが陽一郎は、咄嗟に“視界の左端”へ──
「《瞬間移動》!」
ドンッ!
姿を消した彼は、まさにその場をすり抜け、後方に現れる。
「……間に合った……!」
「やるじゃねえか、坊主!」拳次が笑いながら火炎放射器を構える。
「じゃあ次は、俺のターンだァァァア!」
ゴオォオオオッ!!
炎の弧が宙を描き、鋼風が一瞬ひるむ。
その隙を、はるかが逃さない。
「ハルカ・パンチ、ワンダフル改ッ!」
拳が叩きつけられ、風を裂く衝撃波が鋼風を吹き飛ばす!
「よっしゃ! 一撃入ったぁ!」
しかし──
「いや、まだ……!」陽一郎が声を上げる。
鋼風は立ち上がると、今度は二体に分裂するような幻影をまといながら走り出した!
「残像……! 本体は──右!」
陽一郎が瞬間移動で本体の背後へ回りこみ、即席グレネードを投げつける。
「友情爆弾、いっけぇぇぇ!!」
ピンッ!
──5、4、3……
鋼風が陽一郎に向き直ったその瞬間、
「ゼロォォォォォ!」
ドオォォォォン!!!!
火と衝撃が炸裂する。鋼風の身体は吹き飛び、ついに沈黙した。
煙の向こうで、陽一郎がふらつきながら立っていた。
「ぜぇ……はぁ……なんとか、倒した……!」
「ナイス、陽一郎! 火と風の共演だな!」
拳次が炎のような笑顔で親指を立てる。
「友情爆弾、最高だったな……」
「次はちゃんと火炎放射器にしようぜ……!」
一同が笑う中、オベリスクが低く唸るように脈動を始めた。
「まだ終わっちゃいねぇ。ここからが本番だぜ……!」
戦いの火蓋は、いま切って落とされたばかりだった。
お読みいただきありがとうございます!
今回は、いよいよ進化震源地での初戦闘!
スピード系の異常進化種《鋼風》との対決を描きました。
友情爆弾(?)や火炎放射器など、個性豊かな火力を結集しての勝利となりましたが、
オベリスクはまだ動き始めたばかり――本当の試練はここからです。
次回、さらなる進化と異形が彼らを待ち受けます。
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