第五話「進化者たちのアジト」
崩壊したショッピングモール地下に存在する避難拠点A-07。案内された陽一郎たちを待っていたのは、濃すぎる進化者たちと……まさかの焼肉パーティー!? でもその裏では、“異常進化”という脅威が迫っていた。
「ついたぞ、ここが“避難拠点A-07”だ」
ゴローが先導し、陽一郎とはるかが後に続く。
三人(と一匹?)がたどり着いたのは、崩れかけたショッピングモールの地下駐車場。
その奥には鉄の扉があり、何やら厳重なロックが施されていた。
「え、ここって……人、いるの?」
「まあな。ムー出現以降、政府や軍の代わりに地域を守ってるのは“自警団”や“適合者ネットワーク”だ。ここもその一つ」
ゴローがドアの端末に鼻を押し当てた。
「生体認証:柴犬型進化体──確認。開錠します」
「え、鼻で認証!?」
ガコンと音を立てて扉が開く。
中には、数人の男女がいた。
武器を手にした者、PCを操作する者、食料を配る者……皆、どこか普通の人間とは違う空気をまとっている。
「おーい、ゴロー帰ったぞー!」
ひときわ大きな声が響いた。
姿を見せたのは、金髪モヒカンにサングラス、上半身裸でマッチョな男。
両腕には意味深な紋様が浮かんでおり、明らかに“進化済み”だ。
「よう、ケンジ。相変わらず暑苦しいな」
「紹介しよう。俺の名は火山拳次! 趣味は火炎放射! 特技は爆破! 信条は……」
「黙れ。三秒以内に燃えるぞ」
「ハハッ、さすがゴロー! 俺のマブダチ!」
陽一郎が小声でつぶやく。
「なんかヤバいの来たぞ……」
はるかは目を輝かせていた。
「わ〜! 火力特化型! めっちゃテンション上がる〜! 爆破って最高だよね☆」
「だろぉ!? よし、お前ら気に入った! 歓迎会するぞ! テーマは“火と鉄と友情と焼肉!”」
「やったー! 焼肉ーっ!」
「ちょ、ちょっと待て! 話が飛躍しすぎ──」
しかし、すでにテンションは最高潮。避難所の面々もどこか飢えていたのか、次々にコンロや食材を持ち寄ってきた。
「焼肉は正義だ……!」
「なんでお前が一番感動してんだよ、ゴロー……」
煙と匂いが立ちこめるなか、陽一郎はふと、避難所の壁に貼られた巨大な地図を見つける。
そこには無数の赤いピンと、円で囲まれたエリア。そして――
「これは……“進化震源地”?」
「そうだ」と、いつの間にか隣にいたケンジが言った。
「ムーの影響が最も強く現れた場所……そこでは、オベリスクが“異常進化”を引き起こしてる」
「異常進化……?」
「俺たちが進化して力を得たように、アイツらも進化した。だが理性も倫理も捨てて、ただの怪物になっちまった」
陽一郎はゴローとはるかを見た。
「……だったら、やっぱり行かなきゃな。俺の家族がいるかもしれないし、真実を知るためにも」
ケンジがニカッと笑う。
「いい目だ。その覚悟、気に入ったぜ。よし、俺も同行する!」
「は!?」
「よっしゃ〜! 新メンバー加入〜! 異能戦隊・焼肉団、出動なのだ〜!」
「勝手に戦隊組むな!!」
濃い! キャラが濃い! 火山拳次、ようやく本編登場です。テンション高めですが、彼もまた“ムー”と戦う覚悟を背負う進化者の一人。次回はいよいよ“進化震源地”に迫ります。お楽しみに!