第二話「犬と少年と焼きうどん」
文明が崩れた世界で、少年は“焼きうどん”を作る。
しゃべる柴犬とともに──。
進化と崩壊が交差する未来で、小さな日常と大きな決意が動き出す。
奇妙な立方体との出会いが、物語を加速させる。
「よし、焼きうどん完成だ!」
陽一郎は缶詰の野菜と、非常食の麺で調理した即席の焼きうどんを皿に盛る。
ゴローがじっと見つめる。
「……いい匂いだな。柴犬にこんな味覚があるとは知らなかった」
「お前、何味覚えてんだよ」
「しょうゆベースだな。野菜の甘みと旨味、そして焦げた麺の香ばしさ。グルメ番組だったら☆4.5だ」
「細かいな!」
食後、陽一郎は倒壊した家の瓦礫をどけて、父の研究室へと向かう。
「親父の資料……残ってれば、今の状況がわかるかもしれない」
その研究室には、奇妙な立方体が安置されていた。
「これは……『オベリスク』?」
ゴローが静かに言う。
「それは進化を促す装置だ。世界中で見つかってる。親父さん、ムーとこのオベリスクに関わってたのかもしれないな」
「……なら、やることは一つだな」
陽一郎は拳を握った。
「家族を探し出す。そしてこの進化の謎を解く。ムーが何か、オベリスクが何を意味するのか。それを確かめる旅に出る」
ゴローがしっぽをふる。
「了解。目的は三つ──家族の捜索、オベリスクの調査、そして……進化に抗う者として、異形の連中と戦うことだな」
「異形?」
「そう。進化の副作用で、すでに“化け物”になった連中がいる。奴らは話が通じない」
陽一郎は頷いた。
「だったら──戦ってでも、前に進む」
かくして少年と犬は、崩壊した街を後にする。
焼きうどんの香りを背負いながら。
ご覧いただきありがとうございました!
今回は「焼きうどん」で始まり、「進化の謎」へとつながる回でした。
柴犬・ゴローは本作の相棒枠ですが、ただのマスコットではありません。
今後も陽一郎との掛け合いを通して、読者の皆様に笑いやシリアスな一面を届けていきます。
次回はいよいよ、街の外へ──少年と犬の“本当の旅”が始まります。
「うどんを背負って進む」物語、よろしければ引き続きお付き合いください!