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第十話「門番との交戦」

三体の純粋進化体を前に、交渉の余地は断たれた。

銀髪の少年が語る「試練」の意味とは?

空間が歪み、知性と暴力を兼ね備えた門番たちが襲いかかる中、陽一郎たちは力と連携を試される。

“進化”に値する者とは誰か──戦いの幕が今、上がる。

「ゴロー、あの衝撃波……今の威力、解析できるか!」


陽一郎が叫ぶ間にも、銀髪の少年は音もなく空間を圧縮しながら前進してくる。足音すら存在しない。まるで、この世界の重力そのものが歪んでいるかのようだ。


「重力波と断定。中心点から半径三メートル以内、骨密度レベルで破砕される圧力。生身なら即死だ!」


「ってことは、あれ喰らったら終わりってことかよ……!」


拳次が歯を食いしばり、火炎放射器を両手で握り直す。岩男――蒸気を噴き上げる個体が、拳次に再び突進してくる。


「燃え尽きろッ!!」


咆哮と共に、灼熱の火炎が放たれる。だが、岩男は微動だにしない。表面の火山岩のような装甲が熱を吸収していく。


「熱耐性……ありかよ!」


拳次の火炎の中をそのまま踏破した岩男が、腕を振りかぶる。だが次の瞬間、彼の前に立ちふさがった影があった。


「《重力バリア・斥力展開》」


静かな詠唱とともに、銀髪の少年が手をかざす。見えない壁が拳次を守るように展開され、岩男の拳が寸前で停止した。


「ちょ、お前! 敵だろうがッ!」


「秩序なき戦闘は“試練”ではない。これは試練。故に、公平に課す」


少年は淡々と言い放ち、視線を陽一郎に向けた。


「君から始める。“適合率”が高い。まずは、その力を見せろ」


「上等だよ……こっちだって、簡単に負けるつもりはない!」


陽一郎は霧の中を走り、昆虫型の進化体と対峙する。空中に舞い上がったそれは、羽音とともに周囲に無数の幻影を撒き散らしてきた。


「分身……いや、フェロモンによる残像投影か!」


「見破れるか……“進化”のセンスを試してやる!」


自らに言い聞かせるように叫ぶと、陽一郎は立ち止まり、深呼吸。目を閉じた。


――見える範囲に限定される“瞬間移動”の能力。


だが今、彼が使うべきは視界ではなく、直感。


「来る……!」


バッと左にワープした刹那、幻影の一体が通り抜け、続けざまに右から本体が牙をむいて突進してくる。


「──こっちだッ!」


右脚を踏み込むと同時に、陽一郎は地を蹴って真上へ飛翔。空中で一回転しながら、肘を振り下ろした。


「喰らえッ!!」


ドガァン!


昆虫型が地に叩き落とされ、地面を抉る。


「やったか……?」


だが、複眼の光が濁ることはなかった。音もなく立ち上がり、身体を震わせる。周囲に鋭利な鱗粉がまき散らされる。


「な……毒霧かよッ!」


「陽一郎、下がって!」はるかの声が飛ぶ。


同時に、風を切る音が駆け抜けた。風圧が毒の霧を吹き飛ばし、その中を走るのは、はるかだった。手にはその辺に落ちていた鉄の塊を無理矢理指で引っ張って作った剣を構えている。


「《ノイズ・ディバイダー》!」


彼女の剣が昆虫型の羽を裂き、爆音が周囲に広がる。


「援護、感謝する!」


「お礼はあとで! まずはこいつらを倒さないと!」


一方そのころ、拳次と岩男の衝突は継続していた。拳での戦いは不利と見た拳次が、足元の爆薬を起動。


「こっちは爆裂武器でいくぜ……《爆雷コンボ・タイプB》ッ!」


起爆とともに、岩男の体が跳ね飛ぶ。だが直後、背中から新たな蒸気が噴き上がり、空中で体勢を立て直す。


「跳ね返しやがった……反動推進器か、あいつ……!」


ゴローの分析が鳴り響く。


「全個体、単独で戦略級の力を保有。“試練”とは名ばかり、これは実戦に限りなく近い状況と断定!」


そして──。


銀髪の少年が、再び手を掲げる。


「戦力確認、終了。では、“進化の刻”を始めよう」


その声とともに、空間がゆがむ。上空から、歪んだオベリスクのような“光柱”が降りてきた。


「何だ、あれ……?」


陽一郎が空を見上げる。


「これは……“ムー”の視線。あいつは、試練の記録を送っているんだ!」


ゴローの声が震える。


「やはり、ここはただの通過点じゃない。“観察されている”……!」


「だったらなおさら……負けられないッ!」


陽一郎が叫ぶ。


「みんな、連携するぞ! ここで退いたら、“進化”に飲み込まれる!」


激戦は、さらなる次元へと進化しようとしていた――。

門番との初交戦、いかがでしたでしょうか。

それぞれの個性が際立つ“純粋進化体”とのバトルは、今後も彼らの成長と進化を照らし出す鏡になります。

次回、いよいよ試練は次の段階へ。

陽一郎たちは「観察者」の目にどう映るのか……お楽しみに。

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