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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:95 古の祠とロウの思惑

 兵士が決死の形相で告げてきた時、教皇は慌てる事無く玉座に座ったまま兵士を見据える。


「敵の目的地はどこだ」

「ハッ! 古の祠『ティコ・バローズ』でございます!」

「ティコ・バローズだと!」


 教皇は思わず声を上げた。


 ティコ・バローズとはスマート・ミレニアムが守るべき、神々の遺産があると言われている場所なのだ。


 ただ、中に何があるのかは誰も知らない。

 誰も開けられないからだ。

 これまでどんな衝撃や魔法でも、傷一つ付けられた事が無いから。


(でもよノーティス、アレって何で壊せねぇんだ?)

(一説によると、素材の時が止まっているらしい)

(何じゃそりゃ!)

(……あぁ、もちろんそんな事は魔法でも不可能だ)

(じゃあ、どうやって?)

(ジーク。だから、神々の遺産だと言われてるんだ)

(な~るほどねぇ)


 スマート・ミレニアムには、代々ここを守る使命を受け継いできている。

 ユグドラシルの関係上、少し離れた場所に建国したが、それでも第二都市よりも近い。


 そんなティコ・バローズにトゥーラ・レヴォルトが攻め入って来た事に、教皇は内心戦慄していた。


───まさか奴ら……


 けれど教皇は、焦る気持ちを抑え兵士から冷静に状況を把握していく。


 すると、敵の数は約2万。

 また、シド亡き後には新しい勇者が軍を率いている事と、到着まで2日という事等を把握した。


「ただ、1つ解せぬ」

「ハッ!と、いいますと……」

「斥候からの情報は全く無かった。一体なぜだ。まさか……」


 教皇が気付いた時、ノーティスは入口からサッと出ていく影を見逃さなかった。


「教皇様! 失礼致します!」


 ノーティスのその行動で瞬時に悟った教皇。

 一瞬で察する力は桁違いに高い。


「王宮魔道士達よ、勇者ノーティスに続け! 斥候に成り代わった賊を捉えるのだ!」


 その瞬間、皆ノーティスに続き広間から飛び出した。

 すると、ノーティスが賊の男と対峙している姿が目に映る。


 その賊はノーティスに追い詰められながらも、余裕の笑みをニヤッと浮かべた。


「さすがスマート・ミレニアムの勇者、エデン・ノーティス。キミ、察知能力が凄いね」

「フッ、周りに異変が無いかを常に見ているだけさ」

「ふーん、流石だね。まぁでもキミはボクが調べた限りだと、女の子の気持ちは全然察知出来てないみたいだけどさ」

「……! 仕方ないだろ。複雑過ぎるんだ、アレは」


 ノーティスがそうボヤいた時、ジーク達もその場に到着して賊を円形に取り囲んだ。


「ったく、上手く化けたみてぇだけど、もう逃さねぇぜ」

「フフッ♪ メイクお上手ね。後でそれもたっぷり教えてもらうわ」

「暴れないでね。キミにケガして欲しくないから」

「うーん、でもおかしなヤツじゃのう……」


 アンリがそこまで言って軽く首をかしげた時、ロウはハッと目を見開いた。


「しまった! みんな防げ!」

「アハッ♪ 流石は天才魔道軍師のロウだね。ボクはお前達を待ってたのさ」


 その瞬間、賊の体が内側から光り賊は片手を大きく上に掲げる。


「トゥーラ・レヴォルトに栄光を♪」


 賊はそう言い残し自爆魔法でドガァァァァァン!! と、大爆発を起こした。

 それにより、凄まじい熱風の衝撃波が辺りにブワッ!! と、広がっていく。


 その瞬間、ノーティスはメティアを。

 ジークはレイを。

 ロウはアンリを、それぞれ爆発から身を挺して守った。


 ただ、ロウは咄嗟に魔法で防いだものの、ノーティスとジークは背中に大きな傷を負ってしまっていた。


「ノーティス! 大丈夫!? ごめん、ボクがもっと早く気付ければ……」


 悲壮な表情で涙を浮かべ見つめるメティアに、ノーティスは痛みを我慢しながら力強く微笑んだ。


「ハハッ、言ったろ。メティアは俺が守るって」

「待っててノーティス……! 今治療するから!」


 またジークも結構重症だ。

 なにせ、城の頑丈な壁が消し飛ぶ程の威力だったから。

 そんなジークの事をレイは両手で掴み、必死の顔を向けている。


「ジーク! しっかりして!!」

「へっ、よゆーだよ……」

「どこがよ! ボロボロじゃない」

「フンッ、俺はガサツだからボロボロだろーと変わりゃしねーさ。それよか、お前さんに傷が付かなくてよかったぜ」


 そう言ってニカッと笑うと、レイは思わずジークにギュッと抱きついた。

 ジークは普段ガサツで細かいとこには全然気付かないが、いざという時は必ず守ってくれるからだ。


「ジーク、ありがとう……!」

「おっ、おい。お前さんにあんまくっつかれると、俺、全身焼けどしちまうだろ」

「バカっ……♪」


 レイがそう言ってほほ笑む中、メティアが放ったオーラLv:4でノーティスもジークも傷は回復した。


「メティア、ありがとう」

「ありがとうよ、メティア」

「うん♪」


 メティアがニコッと微笑むと、ノーティスはロウに軽く頭を下げた。


「ありがとうロウ。後ほんの少し遅ければ、大惨事になる所だった」

「気にするなノーティス。ただヤツは、昔存在したとされるシノビの様なヤツだったな……」

「シノビ?」


 不思議そうな顔をしたノーティスに、ロウは慧眼な眼差しを向ける。


「まあ、斥候のような者だが、その技術や戦闘力の高さ、また主への忠誠心は桁違いだったと聞く」

「ロウ。それってもしかして、大戦前の世界の存在か」

「そうだ。かつて悪魔に操られ、終わりの光という兵器で人類同士で滅亡しかけた大戦……それより前にいたと言われる存在だ」


 ロウがそう答えると、アンリが興味深そうに笑う。


「う〜〜ん、やはりあの国がどんな物なのか気になるニャ♪」

「あぁそうだな。ただ、あの国の資料は殆ど無いし、国も不思議な力で守られてるから、斥候も近くまでしか行けないしな……」

「それが問題なのじゃ。私でもあそこへは行けんしニャ~~~」


 アンリが悔しそうに猫口をしてそう零すと、広間の方から兵士達がドタドタと足音を立てながら到着し、破壊された壁を見てギョッとした。


「こ、これは一体……」


 ノーティス達は兵士達に事情を話すと、そのまま教皇に事の顛末を伝えた。


「そうか……ご苦労だったな。ただ、お前達には今から準備をして、明日の朝から向かって貰わねばならん。あそこは禁止区域の為、転送魔法陣も無い」


 教皇はそう告げると玉座か颯爽と立ち上がり、ノーティス達に右手をバッと伸ばす。


「スマート・ミレニアム最強の王宮魔道士達よ! 必ずティコ・バローズを死守し、トゥーラ・レヴォルト軍を迎え討つのだ!」


 ノーティス達は教皇からの勅令を受けその場を後にすると、さっそく準備に取り掛かっていった。

 そして、レイは準備をしながら残念そうに零す。


「ハァッ、ノーティス。デートはお預けになっちゃったわね」

「まぁ、仕方ないさ。今回守るのは神々の遺産だから」


 すると、メティアが好奇心に満ちた目を向けてくる。


「でも神々の遺産って、どんなんだろー♪」

「いや、誰も知らないんだ」

「そ~なの?」

「あぁ、気にはなるけどさ……あっ!」


 ノーティスはそこまで言って思い出し、目を大きく開いた。

 それに反応したアンリ。


「ノーティス、どうしたのじゃ」

「前にセイラから言われたんだ。ティコ・バローズに行ってみろっていう、師匠からの言付けがあったって」

「ニャンだと! で、行ってみたのか?」


 目を大きく開いて見つめてきたアンリに、ノーティスはすまなそうな顔をして軽くうつむいた。


「いや、ごめんアンリ。完全に忘れてた……」

「ノーティスーーー、お主は頭がいいくせに、そういう所は抜けとるのぉ」

「ごめん、行こうとは思ってたんだけど……」


 やってしまったという顔をして、片手で頭を掻いたノーティス。

 やはり、忙しくても大事な事はサッサとした方がいい。

 明日やろうはバカヤロウだ。


 そんなノーティスの隣で、ロウは慧眼な眼差しを湛え顎に軽く手を当てた


「フム。先生がそう仰るなら、あるいは……」


 ロウはそう呟き、ピタッと足を止めて考え始めた。

 その顔をアンリがそっと覗き込むと、先を歩いていたノーティスがロウに振り返る。


「おーいロウ、どうした?」

「いや、何でもない。今軽く作戦を考えていた所だ」

「……そうか。じゃあ、俺先行くから後でよろしく」

「あぁ、また後でな」


 ノーティスが先に行くと、アンリはいつになく真剣な面持ちでロウを見つめる。

 アンリは、ロウが今何を考えてるのか分かっているからだ。


「ロウ、今はまだ早いニャ……」

「……そうかも、しれないな」


 軽くうつむいたままそう答えると、アンリと一緒にゆっくり歩き始めるロウ。

 けれど、その時崩れた壁から強風が吹き、ロウはサッと後ろを振り返った。


 ロウは崩れた壁から見える外の景色が、自分の考えを裏付けているのを示唆されているように感じ、軽く瞳を閉じる。


───ノーティス。キミの数奇な運命、僕も支えるからな。


 ロウがそう決意する中、ノーティス達の運命は大きく捻れようとしていた……

ロウとアンリは何に気付いたのか……そして、ノーティスに迫る運命とは……

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