cys:91 プロデューサー・アンリ
ノーティスが飛び上がったその高さは約20メートル。
その跳躍を見て、目が飛び出る位驚くウェリデ達。
「は、はいっっっ!??」
けどノーティスはそんな事より、コートを見ながら心で念じていた。
───彼らにケガさせないようにしないとな。ルミとメティアの憧れの人なんだから。そーっと、そーっと……
ノーティスはそう念じながらボールを打ったが、その直後、凄まじい速さでボールは進み、コートにズドンと突き刺さった。
コートから砂塵がブアッ! と、大きく舞い上がる。
「やっば!」
ノーティスはコートにスタッと降りると、ウェリデ達に向かい両手を合わせた。
「すまんミスった! ケガは無いか?」
「ミ、ミスっただぁ? 舐めやがって!」
ウェリテはノーティスのサーブに恐怖しながらも怒りでボールを掴み、思いっきりサーブをかます。
「喰らい……やがれっ!」
ウェリテから勢いよくサーブが放たれた瞬間、ノーティスはジークにサッと告げる。
「ジーク、今度は俺が受け止める」
「おっけーーー」
そして、ノーティスがウェリテのサーブを真綿を包むようにレシーブすると、ボールは本当にちょうどいいぐらいの高さに跳ね上がった。
「ノーティス♪ さすがね。いいレシーブだわ」
レイがそう言ってニコッと笑うと、ジークがそのボールに向かい飛び上がりアタックした。
すると、ボールは地面にバシュン! と、突き刺さった後、パンッ! と、音を立て破裂してしまった。
それを見て恐怖に目を見開いたウェリテ達と、冷静にジークを叱るノーティス。
「ジーク、ボールを壊しちゃダメだろ。優しく優しく」
「いやノーティス、お前さんが最初強くやり過ぎたせいだぞ」
「まぁ確かに……すまんジーク。でも、ジークも加減ミスったろ」
「チッ、ムズいんだよ。柔らけぇから」
ジークがそうボヤくとノーティスは少し考え、ワザとハッ! と、した顔を浮かべてウェリデ達を見る。
「すまん、ボール買ってくるよ。次は割れないように、鋼鉄玉にしよう。気付かなくてごめんな」
ノーティスはそう告げるとルミをチラッと見た。
「ルミ、すまない。今から至急、鋼鉄製のボールを調達してくれないか」
「ノ、ノーティス様、本気で仰ってるんですか」
「当り前だろ。あんなボールじゃ柔らかすぎて、加減が難しいんだ。勝負する以上、ボールは壊れないのがいい。鋼鉄玉なら何とかもつだろ」
すると固まってたウェリデ達は、ヒィィッと悲鳴を上げ震える。
ノーティスが強がりでも嫌味でもなく、本当にそう思ってるのが伝わってきたからだ。
そんなウェリテ達に向かい、ノーティスはニコッと微笑んだ。
「すまなかったな。次は鋼鉄玉で再開しよう!」
「ババババ、バカヤロウ! そんなもん、死んでしまうだろ! 勘弁してくれーーー」
ウェリデ達が逃げるようにバタバタ走り去るのを見て、ノーティスは内心ホッと胸を撫で下ろした。
───よかった〜〜〜次加減間違えたら、ルミとメティアの憧れの人に怪我させちゃうとこだったし。
ノーティスがホッとする中、走り去るウェリテ達はドンッ! と、人にぶつかってしまった。
「っ! いってーな!」
倒れたウェリデがイラつきながら見上げると、そこにはアンリとロウの姿が。
「こっちこそいったいのー。って、ウェリデじゃニャいか♪」
「ア、アンリさん! 何でここに?」
「いや、ノーティス達がおると聞いての♪」
アンリがそう答えると、ノーティスが笑みを向けてきた。
「アンリ! ロウ!」
「ニャハハ♪ 元気そうじゃの」
「フム、キミにボールは柔らかすぎたようだな」
そう零したロウに、ちょっとすまなそうな顔を浮かべたノーティス。
「いや、測定器の時もそうだけど、俺、師匠から手加減だけは教わってなくて……」
「まあ、先生は確かにそれは教えてくれなかったな」
ロウがそう答えると、ノーティスはアンリの方へ顔を向けた。
今さっきの会話が気になったからだ。
「アンリはウェリデと知り合いなのか?」
「うーん、知り合いというか、私がプロデュースしてるニャ♪」
「えぇっ?!」
ノーティス達は驚いて目を丸くした。
「アンリがプロデュース?」
「まあの♪ 色々作るのが好きだからニャ♪」
アンリがニカッと笑うと、ウェリデ達は体を震わす。
「アンリさんと知り合いって、まさか……」
「ん? お主ら誰だか知らずに対決しておったのか。彼らは私と同じ、王宮魔道士達ニャ♪」
それを聞いて、一気に顔を青ざめさせたウェリデ達。
「お、王宮魔道士って……す、すいませんでした!」
バッと頭を下げたウェリデ達に、ノーティスは逆にすまなそうな顔をする。
「いや、こっちこそ加減ミスってごめんな」
「いいんです! じゃ、俺らはこれで」
そう言って去ろうとしたウェリデ達を、ノーティスは引き止める。
「あっ、ちょっと」
「な、なんすか?」
「いや、一応さ俺らが2本取って終わったから、俺達の勝ちでいいんだよな?」
「も、もちろんですよ」
「じゃー申し訳ないんだけど、一曲歌ってくれないか」
「えっ?」
突然そんな事言われてビックリしたウェリデ達に向かい、ノーティスは両手を合わせて頼み込む。
「頼むっ! ギャラは払うから一曲だけ。ルミとメティアに聞かせてあげてほしいんだ」
「……まっ、いいですけど、機材無いっすよ」
ウェリデがそうボヤくと、アンリがマジック収納ボックスから機材をササッと取り出した。
「これで出来るニャ♪」
「はぁーーー、アンリさん何でもありっすね」
「ニャハハ♪ まっ、一応王宮魔道士じゃからの♪」
そして始まったミュトスの生ライブに、ルミもメティアも大興奮。
「生ライブだよメティア♪」
「うんっ♪ 夢みたいですね! ルミさん」
レイも静かに聴いている。
───ふーん、悪くはないわね。切ないのがシンクロしちゃうわ……
ただそんな中、一番感動して涙を流しているのはジークだ。
「くうっ……いーーーーー曲じゃねぇか、ちくしょう! ラビット最高だぜ!」
「ジーク、感動してる所悪いがラビリンスだ。ラ・ビ・リ・ン・ス」
「おっ、おう。覚えたぜ! 応援してるぜラビリンーース!」
───グループ名はミュトスなんだけど……まっ、いっか♪
そう思いジークや皆の姿を見て微笑んでいると、アンリがニャッと横から笑みを浮かべてきた。
「ノーティス、いい思い出が出来たようじゃの♪」
「あぁ、アンリのお陰だ。ありがとう」
「良いのじゃ♪ ノーティス、お前は勇者として特に辛い場面もあろう」
アンリにそう告げられ、シドの事が脳裏に蘇る。
もうあれから2年経つが、ノーティスはシドの事を忘れた事は無い。
むしろ、その悲しみを忘れたいかのように、より修行に打ち込んできた。
「それにお主は、これまで以上に困難を超えていかねばならんのじゃ」
「アンリ……それはやはり、あの異世界に何かあるという事か」
「まあ、装置が完成しない以上、確実にとは言えんがな……けどノーティス、何があっても仲間との絆を一番大切にするのじゃぞ」
「アンリ……!」
するとロウも、隣から慧眼な眼差しをノーティスに向けてくる。
「そうだノーティス。勇者だからといって、別に全てを1人で抱え込まなくていい。仲間と共に戦う中に、真の意味が出来るからな」
「ロウ、ありがとう……」
2人からそう言って貰えたノーティスは、皆に感謝しながらも感じていた。
もうすぐ、自分達の運命が大きく動き出していく予感を……
アンリはサッと出てきていい味を出す……!
ほのぼのざまぁ回も終わり、この章の本編が始まります。
次話は今までにない展開に……
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