cys:90 ノーティスの諭し方
「ジーク!」
そう言って叫んだノーティスを、ハッとして見たジーク。
「ノーティス……」
そして、なぜ腕を急に掴まれたのかを分からず唖然とする中、ノーティスはジークの腕をググッを掴み、レイの方へと近づけていく。
「お、おい、お前さん何を……!」
ジークがそう焦りを零す中、ジークの手はノーティスに誘導されレイの肩にポンと乗せられた。
そのまま思わずレイの肩を握ったジーク。
「ん? ん? んんん????」
ジークは一瞬何がなんだか分からず声を漏らしたが、ハッと気付くとすぐに手を離した。
「レ、レイ! 違うんだ、これはノーティスが勝手に」
「うるさいわね、分かってるわよ!」
レイはそう言ってイヤな顔をすると、ノーティスに尋ねる。
「ノーティス、なんで貴方こんな事を……」
「すまないレイ。ジークに分かって欲しいからだ」
「えっ?」
レイが不思議そうな顔をした時、ノーティスはジークに精悍な眼差しを向けた。
「ジーク、今のレイの顔を見たか」
「うっ……あぁ、見たぜ。メチャ嫌がってたな」
もちろん、レイはジークの事がイヤとかではないのだが、急にああいう事をされたので気味が悪かったのだ。
「だろう。でもジーク、もし俺らが負けたらレイは今の100倍以上イヤな想いをする事になる」
「ぐっ……! ちげぇねぇ」
「だよな、レイ。いやごめん。尋くのも野暮だった。忘れてくれ」
ノーティスはそう言うと、ジークにさらに諭すように話を続けていく。
「ジーク、キミがレイを好きな気持ちは知ってるし、それ自体は何も悪くない。でもジーク、キミがここですべき事はカッコつける事なのか? それともレイを取られないように、ベストの事をやる事か? どっちなんだ」
そう言われたジークは、思い出した。
ノーティスと初めて戦ったあの日、ノーティスが怒りに支配され、本来の目的を忘れて暴走した時の事を。
無論、レイもだ。
「……ノーティス、すまなかった。まあ、少し違うが、まるであの時のお前さんのような事をしちまったな」
「ジーク、覚えててくれたのか」
「たりめーだ。なぁレイ?」
「フフッ♪ 忘れる訳ないでしょ」
レイも懐かしそうな顔をして、微笑んだ。
それに嬉しかった。
あの時自分が叱咤して気付いた事を、ノーティスがちゃんと活かしてくれたから。
しかも、自分以外の人の為に。
「ノーティス、貴方やっぱり素敵よ♪」
「レイ、キミのお陰だ。キミにあの日気付かせてもらった事は、俺の中にずっと生きている」
ノーティスはレイにそう告げると、再びジークを見つめた。
「ジーク、俺はここで目立とうとかは一切思わない。ただ勝つ為だけにベストを尽くす。レイをアイツらに指一本触れさせたくないからな」
「おおっ、たりめーだ。すまなかったな……ノーティス、それにレイ」
「別に分かればいいのさ。だよなレイ」
「ええ、別にいいわ。この人私の事になるとおバカになるのは昔からだし♪」
レイは呆れた顔をして軽く微笑んだ。
そしてビーチに刺さったボールを手に取り、片手に乗せて凛とした瞳を二人に向けた。
「さあノーティス、ジーク、ここから反撃よ♪」
「あぁ、もうここからは1点も取らせない」
「やってやらぁ!」
ジークが意気込んだ声を上げると、ウェリデが大きな声で告げてくる。
「おーーーい、まだかよ。今度はそっちからのルールだぜ」
「すまねぇ、今からやるわ」
「ったく、サッサとしてくれよ。早くお姉さんとホテル行かなきゃいけねーんだからさ♪」
ウェリデはそう言って挑発してきたが、ジークはフッと溜め息をつきニヤッと笑うと、凛とした眼差しを向けた。
「ケッ、細ガキが。お前さんに……」
ジークがそこまで言った時、ノーティスがサッとウェリデに告げる。
「キミにレイは早すぎる」
するとジークはマジかという顔をして叫ぶ。
「あーーーっ、ノーティスお前さん、俺が言おうと思ったセリフを!」
「すまん、そうだったのか」
そう零したノーティスに、ジークはニカッと笑みを向けた。
「……ケッ、まあいいさ。ちゃんと仕事して、女王様を守れりゃよ♪」
「フッ、ジーク。やっとらしくなったな」
「たりめーよ。ノーティス、アイツらに必ず勝つぞ」
「ああ、当然だ」
頼もしそうな笑みを浮かべたノーティスとジーク。
レイはそんな2人を見て微笑むと、ボールをサッと大きく放り上げた。
「いくわよ……!」
腕に魔力を込めて思いっきりサーブを打つと、そのボールは凄まじい早さでウェリテ達のコートにザッ! と、突き刺さった。
それを目の当たりにして、ビックリし目を大きく開いたウェリデ達。
「おっ、おいマジかよ!」
「なかなか早いな……」
「油断した。でも、ちゃんと見れば取れなくはない……!」
彼らがそう零す中、ノーティス達はパチンッとハイタッチして喜んでいる。
「ナイス! さすがレイだな」
「やるじゃねぇか女王様♪」
「フフッ♪ 当たり前でしょ。いい女は反撃の隙を与えないの」
レイがそう言ってフフン♪ と、した態度を取った時、ウェリデが怒りと共にサーブを打ってくる。
「調子に乗んなよ! いくぜっ!」
その瞬間ノーティスはジークにサッと告げる。
「ジーク、レシーブはキミ任せた!」
「りょーかい!」
ジークはサーブを捉え軽く上に上げようとしたが、つい30メートル程の高さに打ち上げてしまった。
それを見て嗤うウェリデ達。
「ハハハハハッ! オッサン、上げすぎだ」
「あーーー何やってんだか」
「全く、分かってないよねー」
すると、ノーティスはジークにちょっと厳しい眼差しを向けた。
「ジーク、上げすぎだ! 配信で勉強したんじゃなかったのか」
「すまねぇ! 実はニュースでチラッと見ただけだ」
「ジーク……それは、バレーを配信で見たとは言えないだろ」
「ちげぇねぇ。しかも、軽く飲みながらだ!」
「ジーク、物事は最初から出来るだけ正確に伝えてくれ!」
ノーティスは軽く笑いそうになるのを堪えると、勢いよく飛び上がった。
ここから反撃開始……!
次話は、ほのぼのざまぁ炸裂です。
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