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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:89 演じるレイと焦るジーク

「レイ、勝負ってのはどーいうこった? このいけ好かねぇ野郎を、ぶちのめせって意味か?」


 ジークがそう言って肩を回すと、ウェリデがイラっとした顔でジークを睨んできた。


「おもしれぇ! やってやるよ!!」


 ウェリデはシャツをバサッと脱ぎ捨て、引き締まった身体を見せつける。

 ジークとは違い、完全な痩せマッチョ。

 周りの女の子達からも「キャー♪」っと黄色い歓声が上がり、ウェリデは自慢げにジークを見下ろした。


「オッサン。やっぱ男はこーでなきゃ。ゴツいのなんて、マジありえーねから」


 そしてレイに向かってウィンクし、心でニヤリと笑う。


───フンッ♪ 決まったな。勝負なんかするまでもねぇ。これであの女も俺に惚れたぜ。


 ウェリデは本気でそう思っているし、周りの女の子達はウェリテ見て目をハートにしている。

 だがそれとは逆に、レイは吹き出しそうになるのを堪えていた。


───ププッ、何アレ? あんな貧相な体ありえない。逞しさの欠片もないのに、よく見せれるわね。


 ノーティスやジーク、そしてアルカナートのように、ただ締まってるだけじゃなく強さを感じる体が好きなレイにとっては、ウェリデの体は薄っぺらくしか見えないのだ。


 けれど、そう言ってしまっては面白くないので、レイは女優のように逆を演じる。

 心とは真逆だが、レイにとってはお手の物だ。


「ウェリデ、さすがね。引き締まってて素敵だわ。なんか私、惚れ惚れしちゃう……♪」

「ハッ、だろ♪」


 得意げな何を顔をするウェリデの側で、ジークは哀しく訴えるような顔をレイに向けた。


「レ、レイ! お前さんも、あーーゆうのが好きなのか?」


───ハァッ……そんな訳ないじゃない。だったらアナタとデートなんてする訳ないでしょ。アナタの方がずっと素敵だわ♪


 レイは心でそう言いつつも、場を盛り上げる為に敢えて演技を続けていく。


「フフッ♪ ジーク、ときめかせてよ」

「ん! そ、それってどーゆー事だ」


 答えにならない答えを返され、言葉に詰まるジーク。

 それを見ながら、ウェリテはニッと笑みを浮かべた。


「答えるまでもねーって事だよ、オッサン♪」

「んだと! チョーシに乗ってんじゃねーぞ。この細ガキ!」

「テメェ……動物園から勝手に抜け出してきてんじゃねーぞ、このゴリラが!」

「この野郎、言わせておきゃ……捻り潰すぞ!」

「ハッ、やってみろ!」


 睨み合うジークとウェリデに、レイは妖しい眼差しを向けて微笑んだ。


「二人とも元気でいいじゃない♪ それなら、ビーチバレーで勝負するのはどうかしら」


 レイの提案に即賛同するウェリデ。


「へっ、おもしれーじゃん。俺ら体鍛えてっから、バレーも得意だぜ」


 そう言われては、ジークも黙っていられない。


「よゆーだ。玉をコートに叩きつけりゃいいんだろ」

「フフッ♪ じゃあキマりね。こっちは私とジークとノーティスの三人でいくわ。そっちは?」


 レイがそう言うと、ウェリデが大きな声でフラムとリュートに告げる。


「フラム、リュート! 今からバレーで勝負すっぞ!」

「バレーで?」

「そうだ。勝てばこの子達とデート出来っから」

「ハハッ、面白そうだな」

「だろ。いくぞ!」


 ウェリデがそう指示をしてる側で、ノーティスはジークにマジでという顔を向けた。


「ジーク! なんでいきなりこーなったんだよ」

「ああっ? 決まってんだろ。この細ガキが、レイにちょっかい出そうとするからだよ」

「けど、ジークはバレーなんてやった事あるのか?」

「ねぇよ」

「じゃあマズくないか」

「問題ねーって。この前チラッと、バレーの配信は見たからよ」

「は、配信ってジーク……」


 呆れるノーティスの隣で、フラムはメティアに少し心配そうな顔を向けた。


「まーー別にいいけど、メティアちゃん大丈夫?」

「えっ、どーゆー事?」

「いや、彼ら友達でしょ。俺ら圧勝しちゃうからさー。悪いけど、あんな田舎臭いヤツら一瞬だし」


 また、ルミもリュートに同じ様な事を言われている。


「このイケメンくんバレーとかした事無さそうだし、即俺ら勝っちゃうから」


 すると、メティアもルミも一瞬目を伏せ、キッと相手を睨んだ。


「ノーティスは負けないから!」「ノーティス様は負けませんっ!」


 同時に言い放った二人に、フラムとリュートはそれぞれニタァっと嗤った。


「へえ、大層な信頼だね」「あーそう。じゃあ、俺らがどれだけ強いか見せてあげるよ」


 そんな二人にルミはキッと睨んだまま言い放つ。


「いくらアナタ達でも、ノーティス様をバカにする事は許しません!」


 またメティアもそれに続く。

 気持ちはルミと一緒だからだ。


「そーだよ! ボクはキミ達のファンだけど、一番大好きなのはノーティスなんだからっ!!」

「メティアさん……」


 思わずチラッと見つめてきたルミに、メティアはニコッと微笑んだ。


「そーだよね、ルミさん♪」

「う、うんっ!」


 ちょっと照れながらメティアに頷きつつ、ルミは密かに感心している。


───メティアさん、いいなー。あんなにハッキリ好きって言えて。それに比べて私は……


 そう思っているルミの隣で、リュートはノーティスに軽く見下した眼差しを向けた。

 ノーティスが強そうなのは分かってはいるが、あまりスポーツはした事ないのを見抜いていたし、リュートはスポーツを一通りこなせるからだ。


 「キミ、この二人から凄く慕われてるみたいだけどさ、今日でそれが終わっちゃってもいい?」

 「ん? どういう意味だ」

 「まっ、簡単に言えば、キミがこれから二人の前で無様な姿を晒す事になるって事さ♪」


 またそんな中、ウェリデもジークを嘲笑う。


「オッサン、すぐに勝ってやるよ♪ 覚悟しとけ、ド素人が」

「覚悟すんのはそっちだ。素人でも関係ねぇかんな!」

「ハッ、おっさん。バレーはバナナ食うのとは訳がちげぇんだぞ」

「こんのヤロ……! 言わせておきゃ、ぬけぬけと……」


 イラついているジーク。

 ヴェリテはそんなジークを前に、レイの事を見つめてニヤッと笑った。


「お姉さん。このオッサン倒したら、一緒にホテルいこーーーなっ♪」

「フフッ♪ 勝てたらね」

「ハンッ、よゆーだし」


 ウェリデがそう言って笑うと、みんな互いにそこから陣地を決めて準備を始めていった。

 そしてルール説明が終わると、ウェリデ達はノーティス達をニヤニヤしながら見下ろしている。


 そして、ウェリデは自信に満ちた顔で胸を張った。


「じゃあ始めっか! 三本先取な!」


 先行はウェリデ達から。


「んじゃ、まず一本頂きますか。田舎もんさんよっ!」


 ウェリデはサッと跳び上がると、サーブを勢いよく放った。

 身体も鍛えスポーツもやってるだけあって、なかなかの速さだ。

 むしろ、アマチュアレベルなら最高峰といっていい。

 だが、普段戦場で戦っているノーティス達には、そのサーブがまるでスローモーションのようにゆっくり見えてしまう。

 

 なので、まずはレイがレシーブをしてボールを捉えようとしたが、ノーティスがサッと横に出た。


「レイ、サーブは俺が捉える。キミの腕を万一でも傷つける訳にはいかない」

「ノーティス♪」

 

 突然の優しさに、ポッと顔を赤くしたレイ。

 それを見たジークは、ノーティスの隣にサッと割って入った。


「ノーティス! それは俺の役だぜ」

「おいジーク、気持ちは分かるがこれじゃ……」


 ノーティスがそう零した時、ボールはノーティス達のコートにサクッと叩きつけられた。


「あっ!」「やべぇっ!」「うそっ!」


 ノーティスとジークとレイは、三人同時に声を漏らした。

 そして、ノーティスとジークは、やってしまったという顔で見合わせている。

 そんな二人に、レイが呆れと怒りの眼差しを向けてきた。


 「二人とも何やってんのよ! みすみす一点取られちゃったじゃないっ!」

 「すまない。でも、ジークが無理やり来るから……」

 「ノーティス、お前さんがどかねぇからだろ」

 

 その光景を見て、ニヤニヤ嗤うウェリデ達。

 この分なら楽勝だ、という雰囲気が伝わってくる。

 レイはそれを感じ、ハァッ……と、ため息を零した。


 「いい、二人とも。こんな事してたらすぐ負けるわよ」

 「問題ねぇよレイ。まあ、ちっとミスっちまったけど、相手のサーブは余裕で見えてんだしよ」


 ちょっと不満そうに声を漏らしたジークを、レイをキッと睨んだ。


 「何言ってんのよ! それでも今負けたのよ!」

 「うっ……まっ、まぁそうだけどよ……今度は上手くやりゃあよ……」


 そこまで言った時、レイはジークを心底呆れた瞳で見据えた。

 そうとう怒ってる時の顔だ。


 「ホントに呆れた。もういい。これで負けたら、私、ウェリテに抱かれるから」

 「いいっ! ちっ、ちっ、ちっと待ってくれ! そいつはダメだ!!」

 「何がダメなの。これはそういう勝負でしょ!」


 冷たい眼差しで見下ろされ、とんでもない後悔に顔をしかめたジーク。

 さっきは勢いで言ってしまったものの、よく考えれば確かにそういう勝負なのだ。

 

───ど、ど、どーーーーーすんだこれ!


 マジでシャレにならんという顔を浮かべてるジークの肩に、ノーティスが片手をポンと置いてきた。

 そして、ジークを真摯な眼差しで見つめる。


「ジーク、まずは落ち着け」

「ノーティス、これが落ち着いていられっか! 負けたらレイが、あの野郎に抱かれちまうんだぞ!!」


 ジークが悲壮な叫びを上げると、それを聞いたウェリテがニヤニヤしながらジークに告げる。


「おーーーい、オッサン。あんがとな♪ 後二回、その調子で頑張ってくれや!」

「あ、あ、あの野郎っ!!!」


 怒りに顔を真っ赤にするジークだが、ウェリデはニタニタしたまま、今度はレイの事を見て笑みを浮かべた。


「お姉さーーーん。そんなゴリラ置いといて、早くホテル行こ―――ね♪」

「フンっ……」


 プイっとそっぽを向いたレイ。

 あんな奴に抱かれるのは嫌だから。

 けど、さっき約束してしまったし、このままじゃ本当に負けそうだから悔しかったのだ。


───マジで最悪……!


 レイが心でそう零した時、ノーティスがジークの手を突然ガシッ! と掴んだ。

このままでは、まさかの敗北?

次話はノーティスが腕を掴んだ真意が分かります。


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