cys:88 人気グループ『ミュトス』の誘い
「キャーーーーーーーーーっ♪ 素敵ーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ノーティス達がいるビーチに、女の子達からの歓声が響き渡ってきた。
それに反応したノーティス達。
「ん、どうしたんだ?」
「さぁ? なんだろうね」
「ったく、何だってんだよ。キャーキャーうっせぇな」
「あら、誰か有名人でも来たのかしら♪」
そう思ってザワつく方を見てみると、女の子達に囲まれながらノーティス達の方へ歩いてくる、男達の姿が目に映った。
スマートでキラキラしたオーラを放つ五人組の男達が、女の子達に囲まれている。
「超カッコイイーーーー♪」
「これからどこ行くのーーーーーっ♪」
「一緒に飲みたーーーーーーいっ♪」
そんな中、レイはビーチベッドに寝たまま、かけてるサングラスをチラッと下にズラす。
そして、彼らの姿を確認すると、興味を失くしたかのようにサングラスをスッと元に戻した。
「彼ら、第二都市『イドラ』の人気グループ『ミュトス』のメンバーね」
「ええっ! あのミュトスですか!」
ルミは思わず声を上げたが、ノーティスとジークはキョトンとしている。
二人とも、こういう事にはてんで疎く、キョトンとしたまま顔を見合わせた。
「ミュトス……誰だそれ? ジークは知ってるか?」
「知る訳ねーだろ。ただ、なんかいけ好かねぇ匂いがするぜ」
ほけーっとしてるノーティスと、ちょっと鼻息を荒くしたジーク。
そんな二人に、ルミは興奮気味に息を荒くした。
「お二人とも、ご存じないんですか?! ミュトスといえば今をときめく超人気グループですよ!」
「へぇ、そうなんだ。知らなかった」
「そーなのかい」
ノーティスもジークもまるで沸かない顔をしているが、ルミは興奮している。
「そうですよ! そもそも第二都市イドラは、魔力クリスタルのエネルギーを使って、芸能や音楽が発展してる都市なのはご存じですよね」
「あぁ、それは知ってるけど、歌とかは全然……」
ノーティスがボンヤリと答えると、ルミは片手を額に当てて体をのけ反らせた。
「もーーなんでそんなに疎いんですか……!」
「だって、そんなん見てこなったし、興味も無いし……」
そう言ってノーティスが軽くダルそうな顔をすると、ジークもそれに加わる。
「そのとーり! んなもん、男なら知らなくていいんだよっ! 男は酒と女と戦いだぜ!」
ジークがヘンっとした顔でそうボヤくと、ルミは人差し指を立てながらジークに向かい、グイッと身を乗り出した。
「ジーク様、戦いに身を置くのは素晴らしいですが、こういうのも知っておくべきです」
「ケッ、いらねーよ。んなもん」
「いいえ、女の子はこういう話題好きですから。知らないと、レイ様とも会話弾みませんよ」
「な、なんだって? マジかよそりゃ!」
それはヤバいという顔をして、ジークがレイの方をチラリと見ると、レイはサングラスをちょっと下ろしてジークに微笑む。
「フフッ♪ そうね。ルミの言う通り、ガサツな感じだけじゃ愛せないかも♪」
「レ、レイ、マジかよ!!」
「さーねーー♪」
そう言って雑誌に目をやるレイを見ると、ジークはルミの両肩をガシッと掴んだ。
「わ、分かったよ嬢ちゃん。ちっと勉強すらぁ! で、何て奴らだっけ。ミュ、ミュ、ミュなんだ……?」
ジークが懇願するような目をルミに向けると、横からメティアが嬉しそうに答えてくる。
「アハハッ♪ ミュトスだよ、ジーク」
「ありがとよメティア。って、お前さんも知ってるのか!?」
「うん♪ ボクも彼らの歌はよく聞くよ。切なくて甘いバラードとか凄くいいんだ。ラビリンスって曲が特にオススメだよ♪」
そう言ってニコッと笑うと、ルミが横からメッチャ楽しそうな笑顔をメティアに向けてきた。
「分かるーーーーっ♪ あれいいよねっ!」
「あっ、ルミさんも好き?」
「大好きだよー♪ あれ切なくて最高だよねーーー!」
ルミとメティアが盛り上がってる中、顔をしかめながら必死に覚えようとするジーク。
「ミュ……トスに、ラビット……」
その肩にノーティスはポンと片手を乗せて、振り返ったジークに向かい哀しそうに顔を横に振る。
「ジーク、無理だ。やめとこう。ついでに言うと、ラビットじゃなくてラビリンスだ。ウサギじゃない」
「えっ、あっそーか。ウサギじゃなくてラビットだな」
「だから違う。ウサギじゃない」
「ああん? もう訳わかんねーーーよっ!」
苛立つジークに、ノーティスは諭すような顔を浮かべた。
哀しく憐れみのような眼差しと共に。
「いいんだジーク、もうやめとけって。そういうのは頭に入らないように出来てるんだよ」
「いーや、ノーティス。ちゃんとラビットってヤツを覚えねぇと……」
「レイと仲良くなれないのか」
「あっ、いや、まぁその、そーゆー訳じゃねーーんだけども……なんだ、別に……なぁ……」
口ごもるジークの前で、ノーティスはレイをチラッと見つめた。
「レイ、別に必要無いよな。知ってても知らなくても」
「私ミュトス大好きー」
レイは全く感情のこもってない返事をしたが、ジークは、それみた事かと言わんばかりだ。
まるで、今レイにフラれたような、悲しく焦りの表情を浮かべている。
「なっ、やっぱそーなんだよノーティス! 俺は覚えるぞ! ミュラビットを!!」
「いやいやジーク、今の返事は明らかに興味ないだろ。俺でも分かったぞ」
「うるせいっ! レイは今、ミュール大好きって言ったじゃねーか」
逸るジークに、ノーティスは哀しい顔を向けたままため息をつく。
「ハァッ。キミは、レイの事になると知能指数が激減するよな……それに、名前も全然違う。ミュトスでラビリンスだ」
「あっ、ああそうか。まぁとにかくだな……」
そんな話をしてると、ミュトスの五人のメンバー達がルミ達を見つけ寄ってきた。
「おっ、何か超可愛い子達集まってるじゃん♪」
「ああ、確かにそうだな」
「どの子も可愛いけど、あの子特に可愛いなー♪」
「いや、マジであの子エロいじゃん! ヤバッ」
「ふぁ〜〜ぁ、ボクはいいや。それよかお腹すいたー」
ミュトスのメンバー達を目の前にして、緊張するルミとメティア。
顔を真っ赤に火照らせて、ガチガチになっている。
(ヤ、ヤバい。本物ですよメティアさんっ……!!)
(う、うん。キンチョーするね、ルミさんっ……!!)
そんな二人にメンバーがニコッと微笑んできた。
まず最初に声をかけてきたのは、グループのリーダーであるリュート。
「ちょっとゴメンね」
リュートはノーティスをサッと押し退け、艶っぽい瞳でルミに微笑んだ。
「キミ可愛いね。俺はミュトスのリーダーのリュートっていうんだけど、知ってるかな」
「は、はい! 知ってます」
「よかったー♪ キミは何て名前?」
「ル、ルミです……」
「へーっ、ルミちゃんていうのか。可愛い名前だね♪」
「そ、そんな事……」
ルミが緊張して火照らせた顔を軽くうつむかせる中、ノーティスは軽く心配しながら、その光景を見つめている。
───顔が赤い。憧れの人に会えてよかったけど、やっぱりルミは熱があるのかもな。気を付けて見とかないとダメだな……
ノーティスがまるで見当違いの事を考えている中、メティアに話しかけてるのは、メンバーの一人のフラムだ。
爽やかなスマイルに、女の子のファンも多い。
「キミ、マジで俺の超タイプだよ♪」
「えっ、ど、どうも」
「アハハッ♪ 緊張しなくて大丈夫だって。俺フラムっていうだけど、キミの名前は?」
「メ、メティアです……」
「メティアちゃんか♪ キミに俺の歌ってるとこ、見てもらいたいなっ♪」
「えっ、えぇっ! ボ、ボク、いつも見てますよ!」
「ハハッ♪ ありがとメティアちゃん」
そして、グループの盛り上げ隊長のウェリデは、レイを見ると一目散にタダッと駆け寄った。
隣にジークがいても関係ない。
「キミ、マッッッジで可愛くてエロいじゃん! 気に入った♪ 遊びに行こうぜ!」
ヴェリテはニカッと笑みを浮かべてレイの事を見下ろしたが、レイは軽くいなすように微笑んだ。
「フフッ♪ ごめんなさい、私アナタ達にキョーミ無いの」
「ハアッ? ウッソだろ! 俺、ミュトスのウェリデだぜ!」
ウェリデは猛アピールしてくるが、レイは本当に全く興味が無かった。
レイは強い男が好きだからだ。
───こんなの全然ダメね。
その様子を見てジークはフゥッと胸を撫で下ろしている。
レイが着いていくんじゃないかと、内心大慌てだったから。
「ふぃーーーっ、よかったぜ」
ただ、レイはそんなジークを見ると、どうしてもイジワルしたい気持ちが湧いてきてしまい、ヴェリテを見つめ艶っぽく微笑んだ。
「うーん……じゃあいいわよ♪ そこまで言うなら。せっかくだし、ちょっとだけ付き合ってあげる♪」
そう言ってパタンと雑誌を閉じたレイ。
それを見たジークは、我慢が出来ずウェリデにズイッと近寄りギロッと睨んだ。
「おい! 勝手に何してんだよ!」
「ん、アンタ誰? この子の彼氏?」
「あっ、いや、ち、ちげぇけど……」
ジークは軽くどもりながら口を尖らせた。
彼氏だと言いたいとこだが、まだレイとはそこまではいけてないから。
すると、ウェリデはウザッたそうにジークの顔を覗き込んだ。
「じゃあ邪魔すんなよ、オッサン。今から俺らデートなんだから」
「レイとデ、デートだと?! てっめぇーーーー」
ジークは激しく睨んだが、ウェリテは怯む事無くニヤッと笑う。
「なんだよ。第一さ、アンタ肌の手入れとかしてる?」
「は、肌の手入れだと? テメェ、男のクセに何を……」
顔をしかめてそこまで言った時、ヴェリテは吐き捨てるようなため息でジークの言葉を遮った。
「はあっ、まったく……! あのな、今はオッサンみたいなマッチョより、美意識高いキレイ系男子がモテるんだって」
「キ、キレイ系男子?」
「時代遅れのオッサンは、どっかでずっと筋トレしてろよ♪」
「チッ、何言ってんだ。男が綺麗でどーーすんだよ。綺麗な女を守るのが、男だろーーが!」
そう言って身を乗り出してきたジークに、ウェリデはやれやれのポーズで呆れた顔を浮かべた。
「ハイハイ。そういうのいいから。で、結局それでこのお姉さんとも付き合えてないんだろ。それが答えだって。キレ系男子、いや、キレ系おっさんか。ハハハッ♪」
「う~~~~~言わしておけば……んなろーーー!」
ジークはぐぬぬと顔をしかめている。
普段から常人の何十倍以上の運動もするし、タンパク質も浴びる程摂っているから肌はキレイだ。
けど、あくまでそれは戦闘の為に体を鍛えまくってる副産物だし、体には無数の傷がある。
キレイ系にするなんて、意識した事すら無いのだ。
───ちっくしょーーーーー! こういうのがモテんのかよ!
そう憤る中、レイが妖しく微笑んできた。
「じゃあ二人とも、男らしく勝負したらどうかしら♪」
「あんっ?」「勝負?!」
レイはどんな勝負を言ってくるのか……
次話はほのぼだけど、ちょっとした真剣勝負に。
本格的なシリアスに向かう前に、こういうのもありかと。




