cys:85 抱える想い
「う……嘘だ。あのシド様が破れるなんて……」
悲しみと恐怖に顔をひきつらせた、トゥーラ・レヴォルト軍の兵士達。
それを見て、ロウはすかさず勝鬨を上げる。
「トゥーラ・レヴォルトの勇者アルベルト・シドは、スマート・ミレニアムの勇者エデン・ノーティスが討ち取った! この戦……我らの勝利だ!」
その瞬間、スマート・ミレニアム軍は、オオオオオッ!! と、大きな声を上げた。
その声が、勝利の歓喜で辺りを震わす。
そんな中、ロウは、撤退の号令と共に戦場から去っていくトゥーラ・レヴォルト軍を確認すると、全軍に向かい魔導の杖をバッと上に掲げた。
「勝利はクリスタルと共に!」
すると、全軍がそれに次ぐ。
「勝利はクリスタルと共に!!」
わぁーーーーっ!!! と、歓声の上がり皆が喜びと安堵の顔で見つめ合う。
その中で、ノーティスはシドの亡骸を悲しく見下ろしていた。
「シド……俺は、戦士としての誇りを教えてくれたキミを……くっ……!」
ノーティスは片膝をつき右手で剣を地面に刺したまま、悲しみの涙を零している。
戦いの中でシドをただの敵ではなく、立場は違えど同じ魂を感じていたからだ。
無論、勇者として倒さなければいけなかったし、シドのあまりの強さ故に全力以上で戦うしかなかった。
けれどノーティスは、本当はシドと敵ではなく仲間として過ごしていきたかったのだ。
無理な運命だと分かっていても……
『ノーティス。勇者として真の戦いはこれからよ』
昔セイラから言われた言葉が、ノーティスの胸に痛い程染みてくる。
───セイラ。けど、俺は本当は戦いたくないんだ……!
心でそう零し涙していると、身体が温かく黄色いオーラに包まれた。
ハッとして上を見上げると、メティアがノーティスの顔を潤んだ瞳で見つめ、ヒールの゙魔法を放ってくれている。
「ノーティス……」
「メティア、ありがとう。けど俺は、友となるべき男をこの手で……!」
メティアのヒールLv:4で傷も体力も全快したが、ノーティスの心の傷はそのままだ。
そんなノーティスを、メティアは優しく見つめている。
「ノーティス……ボクは側で戦いを見ている事しか出来なかったけど、二人の想いは伝わってきたよ」
「メティア……俺はシドと全力で戦った。けど、本当は倒したくなかった……矛盾しているけど、俺はシドを救いたかったんだ……!」
メティアはそう零したノーティスの事を、正面からギュッと抱きしめた。
「ノーティス、それでもボクは思うよ。シドは、最後の相手がキミでよかったハズだって」
「メティア……うぅっ……くっ」
ノーティスが涙を零していると、ボロボロの姿のジークとレイも側にやってきて微笑んだ。
「ノーティス。お前さんがいなかったら、俺ら全員死んでたぜ」
「そうよノーティス、アナタのお陰よ♪」
「ジーク、レイ……!」
そう零し二人を見上げたノーティスを、レイはそっと膝を折り見つめた。
凛と澄んだ美しい瞳を向けて。
「それにノーティス、私がキースに勝てたのはアナタの愛があったからよ♪」
「レイ……それは俺も同じだ。このペンダントが、俺に立ち上がる力をくれたんだ」
「ノーティス……貴方やっぱりどこまでも素敵だわ♪」
レイはそう告げると、ノーティスの頬にチュッとキスをした。
それに顔を火照らすノーティスの側で、顔を真っ赤にして慌てるメティア。
「レ、レイっ! 急にそんなの大胆過ぎるよ」
「あら、メティアもしたらいいじゃない♪ ノーティスの事ずっと大好きなんでしょ」
するとメティアはノーティスから身体をサッと離し、顔を真っ赤にしたままレイに両手の平を向けた。
「い、いや違うよ! ボクがノーティスを大好きなのは、そーゆーんじゃなくて……!」
「フフッ♪ メティア、貴女って本当に可愛いわ♪ でも、グズグズしてると取られちゃうわよ」
「もうっ! レイのいじわるーーーーーー」
メティアがそう言って叫ぶと、ジークがニカッと微笑んだ。
「まぁメティア、気にすんな。レイのヤツな、ノーティスに抱きついたお前さんに妬いて、ちっと意地悪言ってるだけなんだからよ♪」
そう告げられたレイは、軽くツンとした顔をジークに向けた。
「あらジーク、アナタこそノーティスに嫉妬してるだけなんじゃなくて♪」
「はぁっ? お、俺は別に妬いてねーよ。お前さんが誰にキスしようが、俺は知ったこっちゃねーし」
ジークがそう言って赤くした顔で口を尖らすと、レイは妖しい瞳で見つめて微笑む。
「あらそう♪ じゃあ、もっとノーティスにキスしちゃおうかしら」
「す、す、好きにすりゃいいだろ」
ジークは、やせ我慢ギリギリの顔を浮かべている。
実際、レイがノーティスにキスした事に、かなり妬いていたからだ。
そんな事をしていると、ロウが間から話しかけてきた。
「まったく、まるで夫婦喧嘩のようだな。予行演習か?」
その言葉に即座に顔を振り返らせるレイとジーク。
「違うわ!」「ちげぇよ!」
「フム、息もピッタリだな」
少し感心しながら二人を見つめるロウを見て、ノーティスはフッと軽く笑みを零した。
皆が自分を元気付けようと、明るい雰囲気にしている事が伝わってきたから。
すると、みんなノーティスを見つめて笑みを浮かべた。
「おっ、やっと笑ったか」
「フフッ♪ アナタの笑顔は素敵よ」
「ノーティス、元気出していこ♪」
「キミは、勇者として立派に責務を果たしたんだ。誇っていい」
ノーティスは皆からのそれを受けるとグッと立ち上がり、剣を鞘にスッと納めた。
そして、涙を拭い皆を見つめる。
「みんな、ありがとう……!」
ノーティスは皆に礼を言うと、シドの亡骸を両手に抱えザッと立ち上がった。
レイもそれに続いてキースの亡骸を抱きかかえようとしたが、ジークが代わりにヒョイと抱きかかえてレイに微笑んだ。
「俺に任せな。お前さんが抱える事はねぇ」
「ジーク……! ありがとう」
そしてノーティス達は、シドとキースの墓を作り手を合わせると、その場からゆっくりと去った。
その去り際、ノーティスはシドの墓の方をスッと振り返り、哀しい想いと共に墓標を見つめる。
───シド……来世では敵ではなく、友として出会おう……!
ノーティスは心でシドにそう告げると、皆と共にその場を後にした。
儚い想いを胸に抱えたまま……
ここまでご覧になって下さって、ありがとうございました!
お陰様で第5章も無事に完結です。
次章からもざまぁはありつつも、愛と感動の本格ファンタジー展開が強くなっていきます。
なろうには合わない?
いえ、それでも応援してくださる方がいる限り、決してエタらず書き続けていきます。
ここまでで読んで面白いと思って頂けたら、評価お願いします!
また、ご感想もお気軽に下さい\(^o^ )




