表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/251

cys:85 抱える想い

「う……嘘だ。あのシド様が破れるなんて……」


 悲しみと恐怖に顔をひきつらせた、トゥーラ・レヴォルト軍の兵士達。

 それを見て、ロウはすかさず勝鬨(かちどき)を上げる。


「トゥーラ・レヴォルトの勇者アルベルト・シドは、スマート・ミレニアムの勇者エデン・ノーティスが討ち取った! この戦……我らの勝利だ!」


 その瞬間、スマート・ミレニアム軍は、オオオオオッ!! と、大きな声を上げた。

 その声が、勝利の歓喜で辺りを震わす。

 そんな中、ロウは、撤退の号令と共に戦場から去っていくトゥーラ・レヴォルト軍を確認すると、全軍に向かい魔導の杖をバッと上に掲げた。


「勝利はクリスタルと共に!」


 すると、全軍がそれに次ぐ。


「勝利はクリスタルと共に!!」


 わぁーーーーっ!!! と、歓声の上がり皆が喜びと安堵の顔で見つめ合う。

 その中で、ノーティスはシドの亡骸を悲しく見下ろしていた。


「シド……俺は、戦士としての誇りを教えてくれたキミを……くっ……!」


 ノーティスは片膝をつき右手で剣を地面に刺したまま、悲しみの涙を零している。

 戦いの中でシドをただの敵ではなく、立場は違えど同じ魂を感じていたからだ。


 無論、勇者として倒さなければいけなかったし、シドのあまりの強さ故に全力以上で戦うしかなかった。

 けれどノーティスは、本当はシドと敵ではなく仲間として過ごしていきたかったのだ。

 無理な運命(さだめ)だと分かっていても……


『ノーティス。勇者として真の戦いはこれからよ』


昔セイラから言われた言葉が、ノーティスの胸に痛い程染みてくる。


───セイラ。けど、俺は本当は戦いたくないんだ……!


 心でそう零し涙していると、身体が温かく黄色いオーラに包まれた。

 ハッとして上を見上げると、メティアがノーティスの顔を潤んだ瞳で見つめ、ヒールの゙魔法を放ってくれている。


「ノーティス……」

「メティア、ありがとう。けど俺は、友となるべき男をこの手で……!」


 メティアのヒールLv:4で傷も体力も全快したが、ノーティスの心の傷はそのままだ。

 そんなノーティスを、メティアは優しく見つめている。


「ノーティス……ボクは側で戦いを見ている事しか出来なかったけど、二人の想いは伝わってきたよ」

「メティア……俺はシドと全力で戦った。けど、本当は倒したくなかった……矛盾しているけど、俺はシドを救いたかったんだ……!」


 メティアはそう零したノーティスの事を、正面からギュッと抱きしめた。


「ノーティス、それでもボクは思うよ。シドは、最後の相手がキミでよかったハズだって」

「メティア……うぅっ……くっ」


 ノーティスが涙を零していると、ボロボロの姿のジークとレイも側にやってきて微笑んだ。


「ノーティス。お前さんがいなかったら、俺ら全員死んでたぜ」

「そうよノーティス、アナタのお陰よ♪」

「ジーク、レイ……!」


 そう零し二人を見上げたノーティスを、レイはそっと膝を折り見つめた。

 凛と澄んだ美しい瞳を向けて。


「それにノーティス、私がキースに勝てたのはアナタの愛があったからよ♪」

「レイ……それは俺も同じだ。このペンダントが、俺に立ち上がる力をくれたんだ」

「ノーティス……貴方やっぱりどこまでも素敵だわ♪」


 レイはそう告げると、ノーティスの頬にチュッとキスをした。

 それに顔を火照らすノーティスの側で、顔を真っ赤にして慌てるメティア。


「レ、レイっ! 急にそんなの大胆過ぎるよ」

「あら、メティアもしたらいいじゃない♪ ノーティスの事ずっと大好きなんでしょ」


 するとメティアはノーティスから身体をサッと離し、顔を真っ赤にしたままレイに両手の平を向けた。


「い、いや違うよ! ボクがノーティスを大好きなのは、そーゆーんじゃなくて……!」

「フフッ♪ メティア、貴女って本当に可愛いわ♪ でも、グズグズしてると取られちゃうわよ」

「もうっ! レイのいじわるーーーーーー」


 メティアがそう言って叫ぶと、ジークがニカッと微笑んだ。


「まぁメティア、気にすんな。レイのヤツな、ノーティスに抱きついたお前さんに妬いて、ちっと意地悪言ってるだけなんだからよ♪」


 そう告げられたレイは、軽くツンとした顔をジークに向けた。


「あらジーク、アナタこそノーティスに嫉妬してるだけなんじゃなくて♪」

「はぁっ? お、俺は別に妬いてねーよ。お前さんが誰にキスしようが、俺は知ったこっちゃねーし」


 ジークがそう言って赤くした顔で口を尖らすと、レイは妖しい瞳で見つめて微笑む。


「あらそう♪ じゃあ、もっとノーティスにキスしちゃおうかしら」

「す、す、好きにすりゃいいだろ」


 ジークは、やせ我慢ギリギリの顔を浮かべている。

 実際、レイがノーティスにキスした事に、かなり妬いていたからだ。

 そんな事をしていると、ロウが間から話しかけてきた。


「まったく、まるで夫婦喧嘩のようだな。予行演習か?」


 その言葉に即座に顔を振り返らせるレイとジーク。


「違うわ!」「ちげぇよ!」

「フム、息もピッタリだな」


 少し感心しながら二人を見つめるロウを見て、ノーティスはフッと軽く笑みを零した。

 皆が自分を元気付けようと、明るい雰囲気にしている事が伝わってきたから。

 すると、みんなノーティスを見つめて笑みを浮かべた。


「おっ、やっと笑ったか」

「フフッ♪ アナタの笑顔は素敵よ」

「ノーティス、元気出していこ♪」

「キミは、勇者として立派に責務を果たしたんだ。誇っていい」


 ノーティスは皆からのそれを受けるとグッと立ち上がり、剣を鞘にスッと納めた。

 そして、涙を拭い皆を見つめる。


「みんな、ありがとう……!」


 ノーティスは皆に礼を言うと、シドの亡骸を両手に抱えザッと立ち上がった。


 レイもそれに続いてキースの亡骸を抱きかかえようとしたが、ジークが代わりにヒョイと抱きかかえてレイに微笑んだ。


「俺に任せな。お前さんが抱える事はねぇ」

「ジーク……! ありがとう」


 そしてノーティス達は、シドとキースの墓を作り手を合わせると、その場からゆっくりと去った。

 その去り際、ノーティスはシドの墓の方をスッと振り返り、哀しい想いと共に墓標を見つめる。


───シド……来世では敵ではなく、友として出会おう……!


 ノーティスは心でシドにそう告げると、皆と共にその場を後にした。

 儚い想いを胸に抱えたまま……

ここまでご覧になって下さって、ありがとうございました!

お陰様で第5章も無事に完結です。


次章からもざまぁはありつつも、愛と感動の本格ファンタジー展開が強くなっていきます。

なろうには合わない?

いえ、それでも応援してくださる方がいる限り、決してエタらず書き続けていきます。


ここまでで読んで面白いと思って頂けたら、評価お願いします!

また、ご感想もお気軽に下さい\(^o^ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ