cys:82 レイの力の源
「消え去るがいい……!」
キースが天にかざした両手に、白くバチバチとした銀色の闘気が集まり膨れ上がっていく。
その姿を、片膝を地面についたまま見上げるレイとジーク。
そんな中、ジークはレイに背を向けたまま苦しみながらもニヤッと笑った。
「レイ……安心しろ。俺が必ず全部受け止めっから」
「ダメよジーク! そんな事したらアナタ死んじゃうじゃない!」
レイは、涙を迸せながら叫んだ。
けれど、ジークは満足そうに笑みを浮かべている。
「ハッ、人間いつかは死ぬんだ。俺みたいなヤツが、惚れた女を守れて死ねたら上出来だぜ」
「いやよジーク!」
「レイ、最後ぐらい俺のワガママ聞いてくれ。それに、お前さんにはノーティスがいるだろ」
「でもっ……!」
「だからよ、俺が全力で受け止めてる間にアイツを助けに行ってくれ。頼んだぜ、愛しの女王様♪」
ジークはそう言ってニカッと笑みを浮かべると、ググッと立ち上がり、キースに向かいバッと両手を横に広げた。
「さぁこいや! テメェのキザな弾受け止めて……ブッ飛ばしてやるよ!」
そんなジークを目の前にしたキースの苛立ちが膨れ上がる。
「ならば死ぬがいい! その魔性の女と共になっ!!」
だが時、飛来したエメラルドグリーンの矢が、キースのエネルギー弾ズハッ! と、貫いた。
ドォォォォンッ! と、いう爆発がキースの頭上で鳴り響く。
「ぐっ……! これは一体?!」
キースは軽くよろめきながら、声を上げ矢の飛んできた方を見た。
すると、そこには慧眼な眼差しでこっちを見つめるロウの姿が。
「ヤツは……!」
キースが顔をしかめる中、ジークは全身の力を振り絞り立ち上がると、魔力クリスタルを輝かせた。
真紅の輝きが周囲を照らす。
「ありがとよロウ! うぉぉぉぉっ! 唸れりやがれっ! 『ギガント・アックス』!!」
ジークはボロボロの姿で力を振り絞り、キース目掛けて戦斧を振り降ろした。
巨大な戦斧がキースに襲いかかる。
「くっ……!」
キースはとっさに身体を後ろに飛び退かせたが、ジークの斧は大地を大きく叩き割り、爆音と共に砂塵と割れた岩石がブワッ! と、舞い上がる。
「チッ……! せっかくのチャンス、仕留め損なっちまったか……」
力を使い果たしたジークは、その場にドサッと片膝をつき片手で斧を地面に刺した。
キースはそんなジークを見下ろしている。
そして、両手に再びエネルギーを作っていくが、砂塵の中から突然キースに向けて飛び出してきた。
魔力クリスタルのエネルギーと輝きを放つ不死鳥が。
レイの必殺技のディケオ・フレアニクスだ。
───な、なんという凄まじいエネルギー!!
驚愕したキースは、両手に溜めていたエネルギーで再びドラゴンフォースを放ち迎え撃った。
砂塵が晴れた中で、レイのディケオ・フレアニクスとキースのドラゴンフォースが、凄まじい光と音を放ちながら中間でぶつかり合う。
「ハァァァァッ!」
「ウォォォォッ!」
互いに全力で技を放つレイとキース。
だが、徐々にレイのディケオ・フレアニクスが、キースのドラゴンフォースを押し返していく。
目を見開きギリッと顔をしかめるキース。
「な、なぜだ!? 瀕死のあの女のどこにこんな力が……!」
そんなキースに向かい、レイは力を込めたまま笑みを浮かべた。
「アナタ……そんな事も分からないの?」
「なんだと?!」
「女はね、愛でどこまでも強くなるの!」
「……ほざけ。貴様のような魔性の女が愛だと? 偽りの愛と輝きになど俺は負けん!」
キースはそう叫ぶと、技により力を込めた。
「オォォォォッ!!」
ドラゴンフォースがディケオ・フレアニクスを押し返していく。
「くっ……! な、なんて力なの」
レイは美しい顔をしかめながら必死に耐えているが、徐々に押し返されエネルギーが迫ってきている。
それにより凄まじい衝撃が吹き荒れる中、レイの胸のペンダントが大きく揺れた。
あの日、ノーティスと一緒に買ったペンダントだ。
───ノーティス、私……
心でそう零した時、ノーティスがググッ……と、立ち上がり、レイに向かって胸を張った。
全身から揺らめき立ち昇る、白輝の光と共に。
「レイっ!」
その声にハッとしてレイがチラッと振り向くと、ノーティスは白いロングジャケットをバサッと脱ぎ、上半身の鎧を脱いでドシャッと、放り捨てた。
それを目の前で見て、目を大きく見開いたシド。
「貴様……気でも狂ったか?」
けれどそんなシドの声を無視し、ノーティスはレイに向かって大きく口を開く。
「レイ、俺はこれを着けてる限り決して負けない! 必ず勝つ!!」
「ノーティス……!」
脳裏にあの日の事が蘇った礼は、再び前を向き技に力を込めてゆく。
愛を感じ沸き立つ心と共に。
「ハァァァァッ……! 私は負けない!!」
レイのディケオ・フレアニクスが、キースのドラゴンフォースを押し返していく。
「ゆ、許せん! 二人の男を誑かしている女になど……!」
「フフッ♪ アナタ……分かってないわね♪」
「なんだと!」
怒りに顔をしかめたキースを見据えたまま、レイは力強く微笑んだ。
「愛は自由で無限なの♪ 私の愛と美しさは偽りなんかじゃない。これが私の力そのモノよ!」
「くっ……! そんなバカな」
「愛も輝きも、本物かどうかはアナタじゃない……私が決めるのっ!!」
レイはそう叫ぶと、額の魔力クリスタルを更に輝かせた。
「ハァァァァッ! 華美に輝きなさい! 私のクリスタル!!」
レイのクリスタルの色が、パープルブルーからさらに気高く美しい色へと変化していく。
その光に照らされたキースは、驚愕と共に目を大きく見開いた。
「こ、この色は青の最上級、サンタマリア・アクアマリン!」
「私は、私の愛と美しさを貫くの!!」
レイは目も眩むような眩い輝きと共に、キースのドラゴンフォースをググッ……!! と、押返していく。
「バ、バカな……俺のドラゴンフォースが、こんな女に……!」
「さよなら。愛を知らない、哀しいイケメンさん♪」
そう注げると同時に、レイのディケオ・フレアニクスは、完全にキースのドラゴンフォースを打ち破った。
気高く美しいクリスタルの不死鳥が、眩い光を放ちながらキースに襲いかかる。
ドガァァァンッ!!!
「ぐわぁァァァっ!!!」
キースは空中に大きく弾き飛ばされた。
また、魔導服は一瞬で燃やしつくされ、鎧は粉々に。
そしてそのまま落下し、頭からドシャッ! と、大地に叩きつけられた。
レイの完全なる勝利。
その姿を見て、ノーティスはレイに微笑んだ。
「レイ、キミは誰よりも気高く美しい」
「ハァッ……ハァッ……」
レイは息を整えると、スッと両手を下げノーティスを見つめた。
その美しく輝く瞳で。
「フフッ♪ ノーティス、アナタのお陰よ」
そう言ってノーティスに微笑むと、レイはジークの方へクルッと振り返った。
美しく長い髪がフワッと揺れる。
そしてジークの下にタタッと駆け寄ると、片膝をついて抱きしめた。
「ジーク! しっかりして!」
「……へっ、さすがだなレイ。それに、ノーティスも無事でよかったぜ……」
「ジーク、もう喋らないで! 今メティアに診てもらうから」
「ハハッ……それまで持つか分かんねーよ」
「バカっ!」
レイはそう言ってジークを抱きしめた。
「お、おいレイ」
顔を赤くしたジーク。
その瞬間レイはジークの頬にキスをすると、涙を滲ませながら微笑む。
「死んだら許さないから♪」
「へっ……安心しろ。今死神が、怒って俺の部屋から出て行ったぜ。お前さんを入れる為によ」
「バカっ……♪」
レイとジークが見つめ合う中、シドはキースに駆け寄り片膝を折ったまま、キースを抱きかかえていた。
「キース! しっかりするんだ!」
「シド……」
キースは命が消えかける中、悲しみに満ちた瞳でシドを見つめている。
そして、キースの中にシドとの今までの事が走馬灯のように駆け巡っていく。
「すまない……お前との夢、一緒に見れなくなってしまった……」
「もう喋るなキース! 大丈夫だから。まだ、大丈夫だ!」
「……シド、あの子……大切にしろよ……」
「キース! 分かった。分かったから!」
「必ず……取り戻してくれ。俺達の桜と……」
キースはそこまで言って涙を流すと、ガクッと首を倒した。
その瞬間、とてつもない悲しみがシドを襲う。
「キーーーーーーースっ!!!」
シドは、キースの亡骸を抱きしめたまま叫びを上げると、涙を伝わせているキースの瞳をそっと閉じた。
そして、スッと立ち上がると顔をうつむけたまま、両拳をギュッと握り締め体を怒りでブルブルと震わす。
「よくも……よくもキースを……俺の友を……」
シドはそう声を震わせると、レイとジークをキッと睨みつける。
「貴様ら……絶対に生きて帰さん!!」
そう怒声を上げ剣を振りかぶると、レイに向けて振り下ろした。
しかし、
ガキインッ!!
と、寸での所でノーティスに止められ、シドはバッ! と、後ろに飛び退いた。
「チッ……!」
声を漏らしたシドに、ノーティスは精悍な瞳を向ける。
「シド! お前の相手はこの俺だ!」
「……いいだろう。お前を殺し、その後キースを殺したその女共々始末してやる!」
そう言い放ったシドをノーティスは見据えたまま、レイに告げる。
「レイ、ジークの事を頼む」
「分かったわ……!」
レイはそう答えジークに肩を貸しその場から立ち上がると、ノーティスの方へチラッと振り返った。
「ノーティス、必ず帰ってくるのよ」
「あぁ、必ず帰る」
ノーティスがそう答えた時、胸のペンダントがキラリと光った……
レイは愛で戦い愛に生きる……
次話から、ノーティスとシドの最終決戦。
二人想いがぶつかり合う激しく感動の戦いに……!
まだの方は是非ブクマしておいて下さい\(^o^ )




