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cys:78 王宮魔導士達の快進撃

 ギリリッ……!


 幾つもの巨大な投石器が、鈍い音を立てている。

 その投石器に乗っている油にまみれた岩石が、火の輪をくぐると燃え盛る岩石となり、ゴォーーーッ!!と、いう音と共に、ホラムの城に目がけて放たれた。


 「行けーーーーっ!!」


 敵の上げた咆哮と共に、空を巨大な火の玉と化した岩石が飛ぶ。

 またそれと同時に、アッシュ達の体がフッと大きな影に覆われた。

 それにハッ! と、思って顔を上げると、その瞳に映る。

 目の前で巨人がググッと拳を握り、思いっきりそれを振り下ろそうとしている姿が。

 

───こ、こんなん聞いてないヨ……やられる!

───何だよこれ? 倒せる訳ねーだろ!

───こんなん……どーやって倒すのよ!


 アッシュ達が体だけでなく、心も恐怖に覆われていった時だった。


「させないよっ! 『パーメガス・クリスタルアーーミナ』っ!!」


 元気な声が、王宮から戦場に響き渡った。

 メティアが皆を守る為に、魔法を放ったのだ。

 その詠唱と共に城にブワンッ! と、クリスタルの大きな結界が張られ、真っ赤に燃え盛る岩石や巨人の巨大な拳をバシンッ! と、弾き返した。


 その光景に目を丸くするアッシュ達。


「う、ウソだ! アレを全部防ぐなんてあり得ないヨ!」

「しかも、なんだあのデカさ!」

「それに、発動までが早すぎよ!」


 メティアの巨大な防御壁に驚嘆するアッシュ達だが、驚愕は止まらない。

 投石器の周りの空間に、バチバチっ! と、異次元空間が現れたからだ。

 全てを飲み込むような、漆黒の渦を巻いている。


「ちょ、ちょっと、ありえないヨ!」

「な、何なんだよアレ!」

「こ、こんなの……」


 まるで、突然世界が壊れたのかと思ってしまうような技を目の当たりにして、アッシュ達は震えて動く事すら出来ない。

 その技を放ったのはレイだ。

 力強くセクシーな瞳で敵を見据えている。


「まったく……綺麗なお城に石を飛ばすなんて、美しくないわね。お掃除してあげるわ♪」


 レイはそう言って妖しく微笑むと胸を張り、両腕をセクシーに掴んで腕を組んだ。

 そして、上から皆を見下ろしながら、パープルブルーの魔力クリスタルをより強く輝かせていく。


「さぁ……異次元の彼方へ飛んでいきなさい……!」


 レイは艶っぽくそう零すと、バッ! と、両腕を天に掲げた。


「美しくない物は消えて! 『アナザー・アクシス』!!」


 レイの魔力が炸裂され、漆黒の渦がブワッ!! と、広がる。

 それにより、投石器は漆黒の異次元空間の中に一瞬の内に飲み込まれ、跡形も無くその場から消え去った。


「フフッ♪ 生物以外なら何でも異次元へ飛ばせるこの技、お片付けには最適でしょ♪」


 レイがそう言って微笑むと、ジークがニカッと微笑んだ。

 自分とは異質の強さに、どうしても笑みが溢れてしまう。


「レイ、お前さんスゲェじゃねぇか! いーつの間にあんな技を覚えたんだよ」

「フフッ♪ この前アンリから教わったの。今度、アナタのお部屋も綺麗にしてあげてもいいわよ♪」

「へっ、そうかい。けどな……」


 ジークはニヤッと笑うと、王宮のテラスから大きく飛び出した。


「うらぁぁぁっ!」


 勇ましい咆哮上げ戦斧(ハルバード)を大きく振りかぶり、巨人の頭上に飛びかかってゆく。


「まずは一体お片付けだ! 喰らいな! 『クリーシス・アックス』!!」


 その叫びと共に、真紅の巨大なオーラに包まれた斧を、巨人の頭上に思いっきり叩きつけた。

 ズシャァッ!! と、頭が真っ二つにカチ割れた巨人は、ゆっくりと倒れてゆく。


「オ……オォォォォォン……」


 そしてそのままズトォンッ!! と、轟音を立てて倒れると、周囲に大きな砂塵が舞い上がった。

 あまりの強さを目の当たりにした敵兵達は、恐怖に体をガタガタと震わせている。

 そんな中、ジークはレイをニヤッと見上げた。


「女を部屋に上げる前にはよ、自分で部屋を綺麗にするのが男ってもんだ」

「あらジーク、それならまだ他が片付いてないわよ! これじゃ、上がれないわね♪」

「へっ、バーロ。今からだよ」


 ジークはレイにそう言って笑うと、もう一体の巨人を見てニヤッと笑みを浮かべた。

 ここが戦士としても男としても、見せ所だからだ。


「悪ぃなデカいの。レイを部屋に入れてぇから、お前さんからお片付けさせてもらうぜ!」


 巨人に向かい、ヤル気満々で斧を構えたジーク。

 だが、その巨人の上からノーティスの声と白輝の光が轟いてきた。


「邪悪なる者よ! 冥府へと還るがいいっ! 『エクス・ギル・スラッシュ』!!」


 その光輝く剣が、巨人を頭上からズジャァァァッ!! と、いう音と大量の血しぶきと共に斬り裂いてゆく。


「なっ、なんでぃありゃあっ?!」


 あまりの威力に目を丸くするジークの前で、巨人は真っ二つに引き裂かれた。

 やはり、ノーティスの剣は他の者の追随を許さない。

 その光景にジークは一瞬呆気に取られていたが、ハッと気付きノーティスを指差した。


「あーーーっ! ノーティスお前さん、せっかく俺が片付けようとしてた所を」

「ん、マズかったか?」

「いやーー、まぁ……別にいいんだけどよ」


 少し口を尖らせて片手で頭を掻くジークに、ノーティスは軽く目を閉じて微笑んだ。


「フッ、俺も部屋の片付けをしないとな」

「なっ、聞こえてたんかいっ!」

「当たり前だろジーク。楽しい話は耳に入りやすい」

「ぐぬぬぬぬっ……お前さん、さてはワザと邪魔しやがったな」

「いや、恋は障害が多い方が燃えるんだろ♪ 前に飲んだ時、ジークがそう言ってたじゃないか」


 そんな二人を見下ろしながら、レイは楽しそうに微笑んでいる。


「ノーティスさすがね。美しいわよ♪」

「フッ、何言ってる。レイ、キミには負けるよ」

「フフッ♪ そうかしら」


 レイは顔を少し火照らし笑みを浮かべると、ジークを見つめ楽しそうに微笑んだ。


「ジーク、惜しかったわね♪」

「けっ、よくゆーぜ。最初から、んな気ねーくせに」

「あら、そーでもないわよ♪」

「へんっ、どーだか」


 ジークがやれやれのポーズを取る中、アッシュ達はただ呆然戸立ち尽くし、ノーティス達を見つめている。


「これが本物のSランクか……僕らと全然違うネ」

「くっそ……あの脳筋野郎の方が、ずっとスマートじゃねぇか……!」

「異次元に放り込むなんて。あんな技、考えた事もないわよ……」


 サロメがそう零した時、アッシュ達の体が黄金色にパァァァッ……と光り、一気に体力が回復した。


「こ、これはまさか?」


 サロメ達がハッと振り向くと、そこには魔力クリスタルを鮮やかな黄色に輝かせ、両手を天に向けているメティアの姿が。


「皆、もう大丈夫だよっ! 『オーラLv:3』をかけておいたから♪」


 そう言ってニコッと微笑んだメティア。

 そんなメティアを見つめながら、アリーシアは驚愕に目を見開いた。

 メティアが今放った魔法は、傷も体力も全回復させる聖魔法だからだ。


「オ、オーラって本当に存在したんですね……それ、聖魔法ですよ!」

「うん、そうらしいね。ボクも最近知ったんだ」

「えっ?」

「前いたパーティーで、皆を助けたいと思ってずっとヒール放ってたら、自然に出来てた♪」


 そう言ってニコッと微笑むメティアを、アリーシアは少し不思議そうな顔をして見つめる。


「凄いですね……でも、メティアさん程の人が抜けるってなったら、前のパーティーの人達怒りませんでしたか?」

「ううん、そんな事ないよ。ボク……追放されたから」

「えっ?! つ、追放っ?!」


 思わず声が裏返ってしまったアリーシアに、メティアは少し寂しそうに笑みを零した。


「まぁ、色々あってさ……」


 イクタス達の事を思い出したメティア。

 乗り越えたとはいえ、決して消えはしない。

 大好きだったみんなから、役立たずだと追放された悲しい記憶は。

 けれどメティアは、アリーシアを見つめてニコッと微笑んだ。


「でも、結果こうしてノーティス達の仲間になれたし、何がいいか悪いかは分からないよ♪」

「そうなんですね……」

「うん♪ だからボク、今は幸せだよ……!」


 そう答えたメティアに、アリーシアは少し悲愴な顔を浮かべて体を乗り出した。


「……どうしたらっ!」

「えっ?」

「どうしたら私も……メティアさんのようになれますか?!」


 声を絞り出したアリーシア。

 メティアを見つめる瞳には、涙が滲んでいる。

 元来内気な性格だが、どうしても尋かずにはいれなかったのだ。

 アリーシアは、いつも自分の゙無力さに苛立ちを感じ、悔しさを噛み締めているから。

 その切ない想いが、メティアの心に伝わってる。


「アリーシア……」


 メティアはそんなアリーシアをジッと見つめたまま、その気持ちを見透かしたかのように優しく見つめた。


「アリーシア、キミは誰よりも頑張ってきたんだね」

「えっ? そ、そんな事、ないです……」


 少し照れながらも切なくうつむいたアリーシアに、メティアは優しく問いかける。


「アリーシアは、何で力を持ちたいと思ってるの?」

「えっ?」

「その理由がハッキリ分かれば、自然と力はつくよ。想いが魔力クリスタルの輝きを作るから」

「メティアさん……」


 その光景を見ていたアッシュは、ギュッと拳を握りしめてサッと顔を上げた。


「みんな! 僕達もやるヨ! 負けてられないからネ♪」

「アッシュ……」

「グローリー、僕達はどう動いたらいいかな?」


 アッシュにそう問われたグローリーは、一瞬目を丸く見開いた。

 いつも自信家で自己中なアッシュが、自分に尋ねてくるなんて今まで一度も無かったからだ。


「ハハッ……アッシュ、お前が素直に尋ねてくるとはな」

「だって、負けっぱなしは嫌だからサ♪」


 アッシュがそう言ってニッと笑うと、グローリーはロウを見上げた。


「ロウ! 俺達は敵兵を全力で止める! だから、人間以外は任せていいか!!」


 それを受けたロウは、魔力クリスタルをエメラルドグリーンに輝かせ魔法弓を出現させ、宙を舞うワイバーンに狙いを定めた。

 ロウのエメラルドグリーンの光が、より輝きを増していく。


「グローリー! これが答えだ! 『コズミック・スターアロー』!!」


 ロウの放った光の矢は、エメラルドグリーンの光の渦を纏いながら、凄まじい速さでワイバーンの胴体をズドンッ!! と、貫いた。


 そして、ズジャアアア!! っと、ワイバーンが地に落ちると、ロウはグローリーに向かい微笑んだ。


「ちょうど僕も今、キミにそうして欲しいと思ってた所さ」


 ロウが頼もしそうな笑みを浮かべると、グローリーも同じ様に笑いアッシュ達の方へ振り向いた。


「アッシュ、バロン、サロメ、アリーシア。敵兵は必ず俺達で倒すぞ!」


 その号令と共に、アッシュ達はクリスタルと武器を輝かせ敵兵達に向かっていく。

 決して負けない決意を胸に。


 そんな勢いづくアッシュ達を見た参謀のキースは、黒い魔導服のフードの中から、シドに鋭い眼光を向けた。


「どうするシド。勢いづいたとはいえ、奴らは大した敵じゃない。俺達の本当の敵は、後から出てきたあの白服達だ」

「あぁ、分かってる。恐らく、あの白服がスマート・ミレニアムから来た勇者だ」

「……と、いう事は」

「そうだ。ヤツがあのアルカナートの後継者と言われている……エデン・ノーティスに違いない!」


 シドはそう言うと、グッと左拳を握り締めた。

 激しく滾る怒りと共に。


───この戦況では、ヤツを倒さない限りアルカナートは引きずり出せないか……ならば……


 そう思いを巡らせたシドは一瞬瞳を閉じると、キースの事を強く見つめた。


「キース、俺はあの白服……エデン・ノーティスを倒す!」


 シドからは、決して揺るがない決意が溢れている。

 それをヒシヒシと感じたキースは、願いを込めるようにシドをジッと見つめた。

 伝わってきたからだ。

 溢れ出る決意の中に混じる、悲壮な想いが。


「シド、分かった。他の奴らは俺達で何とかする。だから……死ぬなよ、シド」


 そう告げてきたキースに、シドはコクンと頷くと、サッと背を向け立ち去った。

 その銀色の鎧から、悲壮なる決意を立ち昇らせながら。

 そして、シドはしばらく歩くとピタッと足を止め、胸のペンダントを手に乗せそっと見つめた。


───待っててくれ。必ず奴を倒し、俺はキミの今になる。


 シドは愛する彼女に心でそう誓うと、ノーティスに向かいゆっくりと近づいていった……

ノーティスとシド。二人の勇者の刃が今交わる……!

次話から、熱い少年バトル漫画のような戦いに。


まだの方は是非ブクマしておいて下さい\(^o^ )


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