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cys:67 ノーティスの怒りとレイの断罪

「さて、どう殺すかな……」

「献立考えなきゃな♪」


 指をボキボキ鳴らしながら、男達にゆっくり迫ってゆくノーティスとジーク。

 男達はそんな二人に震えながらも互いを見つめ、コクンと頷くと、素早く連携に移ってゆく。


「『マジック・スフラギー』!!」


 男の一人は両手の平をノーティスとジークに向け、サッと技を放った。

 魔力を封じる、波紋状のエネルギーが二人に向かう。

 そして、冷や汗をだくだくとかきながらも、ノーティスとジークを指差した。


「ヒャハハッ! これで、さっきみたいなデタラメな技は使えまい。油断したな! バカめっ!」


 けれど、ノーティスとジークの表情は変わらない。


「はっ? なにしてんだよ」

「ったくよぉ……」


 そんな中、もう一人の男はノーティスの背後にサッと回り、後ろからスタンガンを向けて飛び掛かってきた。

 男の下卑た瞳がギラリと光る。


「痺れちまいなっ!」


 しかし、ノーティスはその男の腕をガシッと掴むと軽く捻り、逆にそいつにスタンガンを押し当てた。


 バチバチバチッ!!


 男の体に高圧の電流が流れ気絶すると、ノーティスはその男の胸ぐらを掴んで頬をペチペチ叩いた。


「おーい、テメェ勝手に寝てんじゃねぇよ。おい、コラ」


 けれど、男は目を醒まさない。

 気絶したままだ。


「ったく、しゃーねぇなぁ……おい、ルミーーーーっ!」


 けれど、扉のせいで声が届かない。

 なのでノーティスは、男の胸ぐらを片手で掴んだまま、拳の風圧でドアをドガッ!! と、消し飛ばした。


「ルミ―――来てくれ!」

「は、はいっ、ノーティス様!」


 慌てて駆けつけてきたルミに、ノーティスは男の方を向いたまま告げる。


「ルミ、コイツを気付けの魔法で起こして。今からちょっと、拷問しなきゃいけないから」

「あっ……はい……でもノーティス様、拷問はちょっとどうかと……」


 拷問という言葉にルミは少し引き気味だが、ノーティスは変わらない。

 怒りで目が座ってしまっている。

 男の胸ぐらを掴んだまま、完全にサイコパスのような目つきだ。


「あっ? なんだよ」

「い、いえ……その……」


 怯えてモジモジしているルミの側で、ノーティスは静かに零す。


「コイツら、レイに手をかける寸前だった」


 その瞬間、ルミは目をハッ! と、見開き、ノーティスを応援する表情に変わった。


「やっちゃって下さい!! ノーティス様!」


 そして、ルミに気付けの魔法で起こされた男ともう一人の男は、壁の端でノーティスに悲愴な顔を向け、ガタガタと震えている。


「な、なんで『マジック・スフラギー』が効かないんだ……」

「それに、俺のスタンガンの不意打ちも破るなんて……」


 そんな二人を、ノーティスはゴミクズを見るような眼差しで見下ろしている。

 その瞳に、許す気持ちは欠片も宿っていない。


「バカかテメェ。あんなもん、弾き返すなんて俺らには造作もないんだよ」


 ガタガタと怯える二人の事を、ノーティスは凍るような視線で睨みつけている。


「それにスタンガンだと? 舐めてんじゃねぇよ」

「ヒイッ!」

「目の前にしてりゃ、あんなトロイ攻撃当たる訳ねーだろ。酔ってフラフラの女に当てたからって、調子こいてんじゃねーぞ! このカス野郎が!!」


 激しい怒りで口調が荒くなってるノーティスに、ジークもルミも少し引き気味だ。

 もちろん、ジークもルミも怒っているのだが、ノーティスの怒りが激し過ぎるので、逆に少し落ち着いてしまう。


「ノーティス。お前さんの怒りはごもっともだが、どーするよコイツら」

「ジーク、すまん。おしゃべりが過ぎたな。それに、師匠から昔言われたよ」

「ん?」

「物事は、手を動かしながら考えろって」

「あーーーーっ、さっすが先生だ♪」

「だろ。って、事で……」


◆◆◆


「……うっ……あっ……」

「あぅ…………うぃ……」


 ノーティスとジークに、顔面と全身を余すとこなく破壊され瀕死の男達。

 だが、ルミはそんな男達に、覚醒持続の魔法をかけた。

 無論、ノーティスの指示に他ならない。


───あぁっ、もう流石に……


 やり過ぎだと思いグッタリとしながら魔法を放ったルミに、ノーティスはニコッと爽やかに微笑んだ。

 

「ルミ、よくやった」

「は、はいっ……」


 軽く震えながら答えたルミ。

 ノーティスの血まみれの拳からは、ボタボタと血が滴り落ちているから。


 そんな中、ノーティスは男達を見下ろしている。

 まだまだ許さないと言った表情を浮かべて。


「テメーら。意識落ちるなんて、させねーからな。秒毎に激痛を味わってろ」

「あ……っ……」

「う……が……」


 それを目の当たりにしているジークとルミは、辛そうな顔で軽く身を乗り出した。


「ノーティス、もう充分じゃねぇか。後は、コイツらに引導渡して終わりだ」

「そうですよ、ノーティス様。もう、これ以上は……」


 二人からそう迫られたし、実際男達はボロボロだがが、ノーティスはむしろ笑いを堪えきれない。


「プププッ……ハーッハッハッハッ♪ なーに、言ってんだよ。こんなのまだ、ただのお遊びだろ」

「お、お遊びぃ?!」「お遊びですか?!」


 あまりの言葉に目を丸くした二人に、ノーティスはサラッと告げる。


「当たり前だ」

「いや、こんだけ痛めつけて、奴らの玉も握り潰したんだぜ」


 ジークが困惑した顔で首を傾げると、ノーティスは、男に踏みつぶされたペンダントを片手に持ち、悲しく見つめた。


「レイの悲しみは、こんなものじゃない……」


 ノーティスはそう零してレイの側にいくと、一瞬で鎖を引きちぎりレイを抱きしめた。

 本気のノーティスの前では、鎖など拘束具にならない。


「レイ、俺のせいだ。すまない……」

「違うわ。私のせいよ。ごめんなさいノーティス。それに私……そのネックレス守れなかった……」


 再び涙を滲ませたレイに、ノーティスは優しく微笑んだ。


「いいんだ。大丈夫だよレイ」

「えっ?」


 レイがハッと顔を上げると、ノーティスはネックレスに復元の魔法をかけた。

 男に踏み潰されたネックレスも、新品のようにピカピカになっている。

 それを見て、レイは驚き目を丸くした。


「凄いわね! アナタこんな事も出来るの?!」

「まぁ、小さなモノだけな。この前、ルミから教えてもらったんだ」


 ノーティスはそう答え、レイに軽く微笑んだ。

 その優しく爽やかな微笑みは、拷問をお遊びだと言って笑っていた男と同一人物だとは、とても思えない。


「レイ、後ろ向いて」

「えっ、まさかここで……」

「あぁ」


 ノーティスはレイの背中からそっと腕を回し、ネックレスを着けた。

 レイの胸元に再び着けられたネックレスは、さっきよりも輝いているようだ。

 そして、前を向いたレイの両肩に手を当て、凛とした瞳で見つめた。


「レイ、綺麗だ。素敵だよ」

「ノーティス……当たり前でしょ♪」


 瞳を潤ますレイに、ノーティスは精悍な顔で告げる。


「レイ、後はキミが奴らにケリをつけるんだ。キミが、キミでいる為に……!」

「……ノーティス!」


 レイは自分の気持を汲んでくれたノーティスに抱きつくと、頬に思いっきりキスをした。


「ありがとう♪」

「ちょ、あっ、あぁ……」


 顏をボッと赤くしたノーティスと、それを見て目を大きく見開いたルミとジーク。


「えっ?!」

「うおいっ!」


 二人とも思わず声を上げてしまったが、軽く唸りながらも気持ちを抑えている。

 この場は仕方ないと思いながら。


 レイはそんな二人にウインクすると、男達の前にザッと立ち見下ろした。

 その凍りつくような眼差しは、まるで断罪の女王様のようだ。


「アンタ達、覚悟は出来てるんでしょうね」

「あっ……が……」

「……う、ぅ……」


 傷だらけで口を動かす事も出来ない男達に、レイはフフン♪ と、笑みを浮かべた。


「けどアンタ達、一つだけ礼を言うわ。お陰でノーティスの気持がより分かったから♪」


 もちろん、さっきからこれを見てるルミは複雑な心境だし、レイの事を昔から好きなジークも同様だ。

 けれど先程と同様、このタイミングでは嫉妬をあらわにする事も無粋なので、そこはグッと堪え押し黙っている。


 そんな二人の側で、レイはニヤリと笑い額の魔力クリスタルをパープルブルーに輝かせた。


「だから特別に、死ぬまで夢を見させてあげるわ『エファルディス・コーディネーションα』!!」


 叫びを上げる事すら出来ず悪夢の世界に堕とされた男達を見下ろしながら、レイは静かに微笑んだ。


「フフッ♪ 現実では一日だけど、悪夢の中では百年を感じる技。私がホラムに行く頃には、二人とも廃人ね」


 レイはそう言い放つと、ノーティスに直してもらったペンダントを片手に取り、そっと愛おしく見つめた。


「死ぬまで悪夢を見てもらうわ♪ それが私の愛を踏みつけた……アンタ達への断罪よ!」

レイは復活したように見えるが、はたして……

次話はアイツがいい味を出します。

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