cys:59 You are my reason
「キャーーー♪ ノーティス様ーーーーー♪ 素敵ーーーーー」
「レイ様、美しすぎですーーーーー!」
戦いが終わり城門をくぐったノーティス達に、国中の人達から割れるような大きな歓声が送られてくる。
「ヤバっ! レイ様マジでエロすぎる。付き合いてぇーーーーー!」
「あっ、上見て! ロウ様が手を振ってる!キャーーーッ♪ ロウ様ーーーーー」
ノーティスやレイ、そしてロウに向けられる鳴り止まない数多の黄色い声援。
ただ、そんな声援の中に、それとは異質の物が混じっている。
「おっ、ジーク様だ。やはりカッコイイな! せーの、ジーク様ーーーーー!!」
「ふぁ、あぁぁぁっ……ジーク樣は、たくましいのぉ……エフっ、エフっ、エフっ……」
「わぁーーージーク様だ! やっぱカッコイイぜ!」
暑苦しい男達の野太い声とヨボヨボの爺さんの声、それと男の子達の元気な声が、ジークの耳に絶え間なく届く。
「おーーい、ノーティス。なんで俺っちだけ、野郎や老人からだけなんだよ。オカシイだろ?!」
「フッ、そうガッカリした顔をするなって。それに……」
ノーティスが軽く笑いながらジークに目配せをすると、その先には、花束を持った小さな女の子が、頬を赤くしながらジークを見つめている姿が。
「ん?」
なんだこの子は? と、思って軽く顔を前に突き出すと、その子はそのままそっとジークに近寄ってきた。
そして、恥ずかしそうにモジモジしながらジークを見上げている。
「ジーク様、あの……私……これ、受け取って下さいっ!」
その声と共に花束をバッと差し出されたジークは、驚いて思わず目を丸くした。
「お、俺にぃ?!」
「うんっ♪ この前ニーナが転んで足痛くしちゃった時、ニーナの事おんぶして、ヒーラーさんのとこ連れてってくれたでしょ」
「う~~ん……あっ! あーーあの時の嬢ちゃんか!」
ハッと思い出したジークに、ニーナは花束を差し出したまま頬を赤らめて、恥ずかしそうに叫ぶ。
「あの時からジーク様が……大好きなんですっ!」
「えっ?! あっ、あーーー。 ……ん? 俺を?」
ポカンとした顔を浮かべるジークを上目遣いで見つめながら、小さくコクンと頷くニーナ。
恥ずかしさをギュッと握りしめた小さな手の中に、汗が滲んでいる。
そんな可愛らしい告白に、ジークは少し戸惑いながら片手で頭を掻いた。
「そうかい……」
そして、スッと片膝を曲げてしゃがむと、ニーナからそっと花束を受け取った。
ニーナの精一杯の勇気を受け止めるのに相応しい、力強く優しい微笑みを向けて。
「ニーナ、ありがとうな。この花は大事に飾っておくぜ♪」
「うんっ! ありがとうジーク様っ♪」
ニーナは嬉しそうに笑うと、照れた顔のままテテッと走り去っていった。
「フゥッ。俺は花なんか、ガラじゃねぇんだけど、悪くねぇもんだな……」
優しく微笑みながら花束を見つめているジーク。
その肩にノーティスはポンと片手を置き、おどけた顔で覗き込む。
「よっ♪ モテ男」
それに続くレイ。
「ジーク、モテるじゃない♪ 適齢期以外の子からは。アハッ♪ 妬けるわーー」
「う、うるせぇぞ! お前ら」
ジークはノーティスとレイに軽く口を尖らすと、それを誤魔化すかのように声を漏らす。
「あれっ? そーいや、アンリはどこいんだ?」
「いつも通りよ。こーゆーの苦手だから勝手に瞬間移動して、今頃はお部屋で寝てるんじゃないかしら」
「なんだそりゃ。ったく、便利な魔法だぜ」
ジークがワザと少し大げさにボヤく中、メティアは恥ずかしそうにうつむいたまま歩いていた。
ノーティス達と違ってこういう場は苦手だし、それに加えて初陣帰りの凱旋の為、街中の皆から好奇の目に晒されているからだ。
「ねぇ、あの子誰ーー?」
「でも、お目々クリクリで可愛いーーっ♪」
「けどさ、あの子なんなのーー? 今までいなかったよね」
そんな眼差しを受けているメティアを見たノーティスは、ピタッとその場で足を止めた。
そして、メティアにニコッと微笑む。
「メティア、みんなに自己紹介しよう♪」
「い、いーよノーティス! ボクはそういうの苦手だから」
顔を火照らし両手を向けたメティア。
元気な性格だが、人前に出るのは恥ずかしいタイプだから。
けれどそんなメティアを、ノーティスは優しく見つめる。
「メティア。気持ちは分かるけど、今度こそちゃんと知ってもらおう」
「けど……」
「もう、勘違いされるのはイヤだろ」
その言葉にハッとしたメティアは、真摯な眼差しを向けた。
ノーティスを見つめるその瞳が、光に揺らめく。
「うん。そうだね……! ノーティス」
メティアの答えを受けたノーティスはコクンと頷き、街の人達に振り向きバッと両手を広げた。
「みなさん、ご声援ありがとうございます! 今日は皆様に、自分達と、この街を敵の脅威から守ってくれた、俺達の新しい仲間を紹介します!!」
その宣言に皆からおおっ! と、いう声が上がる中、メティアは爽やかに皆に告げる。
「王宮魔道回復士、特級ヒーラーのフロラキス・メティアです!!」
その瞬間、笑顔で盛り上がる街中の人達。
メティアはそれに照れながらも、メティアらしく可愛く元気な顔を皆に向けた。
「ボ、ボクは勇者ノーティスから紹介された、特級ヒーラーとして戦う事になった、フロラキス・メティアです!」
皆の間に精一杯の可愛い声を響かせると、メティアは皆をジッと見渡してゆく。
そして、皆に告げる事を決めた。
「突然だけど……ボクから一つ、皆様にお願いがあります」
その発言に皆が、なんだなんだ? と、思う中、メティアは話をしていく。
「それは、自分自身の事を、もっと愛してあげてほしいって事です」
ハッキリそう言い切ったメティア。
今さっきまでのモジモジとした態度は消え、顔はまだ火照ったままだが吹っ切れた表情だ。
「ボクはここに来るまで、ずっと人に遠慮がちでした。自分を出すのって、あまり得意じゃないから……」
メティアは、これまでの事を振り返りながら言葉を紡いでゆく。
「でも、過ぎだ遠慮は時に誤解を生みます。それに、人と争いたくなくて遠慮していても、そのせいで相手から誤解されて、逆にイザコザをおこしちゃう事もある……」
皆がメティアの話に聞き入っている。
大なり小なり、皆経験した事があるからだ。
「ボクは以前、自分よりパーティの皆に自信を持ってほしくて、自分の行った支援魔法の事を言わずに隠してました。そしたら、そのパーティから、役立たずと思われて追放されたんです……!」
その瞬間、皆からザワザワとどよめきが起こった。
けれどメティアは話を続ける。
「でもその後、ノーティス達と出会いボクは救われました。けど追放されたのは、自分が遠慮しすぎたのが悪かったと思ってます。だからありのままの自分を愛して、等身大で人と関わってみてください」
メティアがそこまで言うと、聴衆の一人から声が上がった。
若い元気な男の子だ。
「でもメティアさん、それでケンカになったらどうするんですか?」
するとメティアは、その男の子を見つめたままニコッと微笑んだ。
「ケンカしちゃって下さい♪」
「えっ?」
「ケンカしないと、分からない場合もあります」
「そ、それはそーかもしれないけど……」
ちょっと納得いかない顔をしている男の子に、メティアはより明るく笑みを浮かべた。
「それにケガしても、ボクらヒーラーが必ずアナタを助けますから♪」
「そ、そーなんですか?!」
「うんっ♪ ボクは、頑張る皆を一人でも多く助けたくてヒーラーになったから!」
メティアがそう言った時、街中の皆から割れるような拍手と喝采が沸き起こった。
「うわーーー! メティア様ーーーーー! これからよろしくお願いしまーす」
「メティア様……凄くいい話ありがとうございます!」
「いやーー俺、メティア様に治してもらう為に、ワザとケガしちゃうかもーー♪」
そんな皆に微笑みながら手を振るメティアからは、もう揺るがない自信が溢れている。
それを感じたノーティスは、メティアに澄んだ瞳を向け微笑んだ。
「メティア、俺と出会ってくれてありがとう。キミが俺の生きてきた理由だ」
「ノーティス……! もうっ♪ また、ハンカチぐちゃぐちゃにさせる気なの」
メティアは瞳に涙を滲ませたまま、ノーティスの袖をそっとつまんだ……
メティアを見つめる観衆達の声援と、ノーティスから伝わってくる大きな愛を感じながら。
◆◆◆
メティアが名実ともにノーティス達の仲間になり、喜びの涙を浮かべて皆から祝福されている時、敵国トゥーラ・レヴォルトでは復讐の炎に身を焦がす男がいた。
「くそっ……俺達トゥーラ・レヴォルトが負けるなんてありえない。あってはいけないんだ!」
トゥーラ・レヴォルトの若き剣士『アルベルト・シド』は憤り、怒りと共に声を零す。
次は自分が戦場に赴く覚悟と共に。
「イデア・アルカナート……そして、その後継者エデン・ノーティス……俺は、お前達を絶対に許さない……お前達を倒して父さんの仇を討ち、全てを取り戻す事が俺の生きる理由だ!!」
ノーティスが生涯忘れられない相手となる、宿命の相手シド。
そのシドと、ノーティスが勇者として真に戦わなければならない時が、今、訪れようとしていた……!
ここまでご覧になって下さって、ありがとうございます!
仲間との絆という事でまだ4章が続きますが、新たな局面へと進みます。




