cys:55 メティアの加護を知る
「やべぇな、おい……」
イクタスが振り向いた先には、セクシーに髪を揺らし妖しく微笑むレイの姿が。
それを見て、思わずニヤッと笑うイクタス。
「アンタ話が分かるじゃねーか。それに、めちゃくちゃイイ女だな。セクシーな色気が溢れ出てるぜ♪」
「フフッ♪ でも、勘違いさせたらごめんなさい」
「あっ?」
「その素敵な名前が似合うのはアナタ達って事なんだけど、分かってるかしら♪」
「な、なんだとっ?!」
イクタスは怒りに顔を歪ませた。
「テメェ……誰だか知んねーけど、イイ女だからって調子乗ってんじゃねーぞ!」
怒鳴りつけたイクタス。
けれどノーティスは、そんなイクタスをよそに爽やかに声をかける。
いつもと違い、お忍びの服装にサングラスの姿のレイに。
「レイ、来てくれてありがとう。この子が俺等の新しい仲間、ヒーラーのメティアだ」
そう言ってメティアを紹介すると、レイはメティアの瞳を微笑みながら見つめた。
「アナタがメティアね♪ 私はレイ。クロスフォード・レイよ」
「は、初めまして! ボクはフロラキス・メティアっていいます。メティアって呼んでください!」
レイから溢れる華美なオーラと艷やかな瞳に、メティアは顔を火照らしタジタジだ。
───この人が王宮魔道士のレイ様。何て綺麗な女なんだ……!
「フフッ♪ メティア。アナタもとても可愛らしくて素敵よ」
「えっ、いや、そ、そんな事ないです!」
まるで心を読まれたかのように感じ、より顔を赤らめたメティア。
すると、そこにロウも現れた。
ロウもいつもと違い、お忍びの姿だ。
そして、全てを見通すような知性に溢れた眼差しでメティアを見つめる。
「キミか、ノーティスが連れてきてくれた子は」
「は、はい」
「僕はアルカディア・ロウ。キミは綺麗な瞳をしているね」
「そんな……♪」
「それに、素晴らしい魔力を秘めてるのが分かるよ」
ロウがそう言って微笑むと、隣からレイが少し興奮気味に告げてくる。
「そうよね♪ この子なら私達と一緒に戦えるわ!」
「あぁレイ、間違いない。それにノーティス、よくやった」
「ありがとうロウ」
そんな中、イクタス達はイライラしていた。
「おいお前ら! 俺様の事無視して、何勝手にゴチャゴチャやってんだよ!」
「あっ、ゴメン。忘れてた。メティアに夢中で」
「忘れてただぁ? テメェ、無色のクリスタルのクセに舐めてんじゃねぇぞ!」
イクタスはそう怒鳴りつけ、さらに罵声を浴びせてくる。
「第一、無色のクリスタルの奴とつるんでるなんて、お前らもどーせ大した事ないランクだろ? B+ランクの俺様に対して生意気なんだよ!」
そして、仲間達の方へ顔を振り返らせギロッと睨みつけた。
「お前ら、ここまでコケにされて黙ってる事はねぇ! コイツら全員ぶっ倒すぞ!」
「そうね、マジでイラつくし」
「うむ、わからせてやらねばな」
「力の差、教えてあげる♪」
戦う気になってるイクタス達に、メティアは両手を前に出して大きく振る。
「ダメだよイクタス、この人達は!」
メティアはそう言って叫んだが、もう遅かった。
イクタス達はメティアの制止も聞かず、クリスタルを輝かしていく。
「弾けやがれ! 俺のクリスタル!」
「唸れ! ワシのクリスタルよ!」
「輝いて! 私のクリスタル!」
「煌きなさい! 私のクリスタル!」
戦闘力を最大限に引き出したイクタス達は、自信満々の態度でノーティス達を見下ろす。
それぞれの煌めきを全身に纏い、この世に敵はいないかの如くの表情を浮かべて。
「おい、無色の白服。これがB+ランクのクリスタルの輝きだ。こーなった以上、もう許さねぇぜ」
「えっ、許すって何を? そもそもメティアを仲間に出来たから、お前達にもう用は無いんだが……」
ノーティスから平然とした顔でそう言われたイクタスは、ピキッと顔を引きつらせた。
強がりでも何でもなく、ノーティスからは自分達を恐れる気持ちが一ミリも伝わってこなかったから。
まあ、ノーティスからしたら
「……の野郎! ぶっ殺してやる! いくぞお前ら!!」
「オォォォォッ!!」
イクタス達咆哮を上げ向かってくる中、ノーティスはメティアの方にサッと振り返った。
「メティア。当然手加減はするけど、万が一の時の為に、彼等にいつもしてた事をやっといてくれ!」
「分かったよ、ノーティス」
「ありがとうメティア」
メティアにそう告げた瞬間、イクタスが大きく剣を振りかぶってノーティスに飛びかかってきた。
「死ねやっ!」
イクタスはそう叫んで勢いよく剣を振り下ろしてきたが、ノーティスはそれを片手で軽くはねのけた。
「な、何ぃっ?!」
イクタスが声を上げた瞬間、ノーティスはイクタスの腹をドッと軽く小突く。
「グハッ!」
イクタスは悶絶しながら、四つん這いの格好でノーティスを睨みつける。
「テ、テメェ……な、何なんだよ、無色のクセに」
そんなイクタスを、ノーティスが無言のまま見下ろしていると、ヒカイトとリィーテが襲いかかってきた。
「うぉぉぉぉっ!」
「焼き尽くしてあげる! 火の神と精霊よ。目の前の敵を焼き尽くす、地獄の業火を与え給え! ハァァァァッ……いくわよ! 『ブレイズLv:2』!!」
ヒカイトの斧とリィーテの放った複数の火炎の玉が、ノーティス目がけて降り注ぐ。
けれど、ノーティスは動じない。
「メティア!」
「任せて! 『クリスタル・アミナ』!」
メティアが両手を前に翳すと、ノーティス達を覆う大きなクリスタルの障壁が現れた。
「なっ?!」
「えっ?!」
ヒカイトの斧はバァンッと弾かれ、リィーテの火炎の玉は障壁に当たり全て消える。
「なんという硬度!」
「嘘でしょ?! アレを無詠唱でなんてありえない!」
動揺が隠せない二人。
今のメティアの技は、クリスタルを輝かせ詠唱を行い多大な魔力を使った上で、初めて発動する代物だからだ。
無論、並のヒーラーに出来る芸当ではない。
それを見たロウとレイも嬉しそうに、メティアを見つめている。
「こいつは驚いたな。想像以上だ」
「えぇ、美しいわ♪」
その光景を見たハティは、顔を真っ青にして立ち尽くしている。
「う、嘘よ……そんなハズが」
ノーティスはその姿を静かに見つめたまま、メティアに言う。
「ありがとうメティア。もう大丈夫だ」
「うん♪」
メティアはそう言って微笑むと、クリスタル・アミナを解除した。
そしてノーティスは、イクタス達を哀れむように見据える。
「まだやるか?」
そう告げるとイクタスの仲間達は顔を青ざめさせ押し黙るが、イクタスは苦しみながらもノーティスを睨み声を絞り出す。
一瞬でやられた事に、恐怖よりも不可解さが拭えないからだ。
「ふざけんなよ……何で俺のスカーレット・イグニスがお前らなんかに……くそっ!」
「フッ、随分元気そうだな」
「クソが! コレぐらいのダメージ、まだ……」
「フゥッ、まだ分からないのか?」
「何だと?」
キッと睨みつけてきたイクタスに、ノーティスは見下ろしたまま告げる。
「本当はそんなもんじゃ済まない」
「あっ?」
その瞬間、ノーティスは道に落ちてた石を拾い、ガガンッ! と、一瞬で粉々に砕いた。
「なっ?!」
目を丸くしたイクタス。
「イクタス、本来お前はこうなってる。けど生きてるだろ。なぜだか分かるか?」
「……まさか?!」
ハッとしてメティアを見つめるイクタスに、メティアは少し悲しげな表情を零す。
「うん。みんなが万が一大ダメージを喰らわないように、守護魔法『プロスタシアlv.2』はかけておいたよ」
「バカなっ、あの瞬間にだと?!」
イクタスはさらに吠える。
「いや、ありえねぇ! こいつは役立たずのヒーラー……そのくせ、特級ヒーラーなんて目指してるヤツなんだ!」
「フッ、イクタス。本当の役立たずを、俺ら王宮魔道士の仲間にする訳がないだろ」
「お、王宮魔道士?!」
イクタスとその仲間達が戦慄に震える中、ノーティス達は平然と言い放つ。
「あぁ、俺は王宮魔導勇者エデン・ノーティス」
「私は王宮魔道士のクロスフォード・レイ」
「僕は王宮魔道軍師のロウだ」
イクタス達は戦慄して言葉も出ない。
自分達が戦いを挑んだ相手が、スマート・ミレニアム最強の存在だと知ったからだ。
───もし本気でやられてたら今頃……!
ゾッとしてカタカタ震える。
けれどその中で、イクタスだけは声を絞り出す。
スカーレット・イグニスのリーダーの意地を見せる為に。
「なぜオマエら……アナタ達がメティアなんかを」
「簡単な事さ。もう分かってるだろ。メティアにそれだけの実力があるからだ」
「ぐっ……」
全てを悟ったイクタスとその仲間達に、ノーティスは哀しい瞳を向ける。
「キミ達は守られてたんだ。メティアの力に。昔から……そして今でも」
「くっ……うぅっ。そんな……だとしたら俺は……俺達は……」
ノーティスがさっき放った拳よりも、遥かに強い後悔の拳に打ちのめされるイクタス。
そんなイクタスを哀れみながら、ノーティスは静かに告げる。
「けれど今のが最後だ。お前達はメティアを……お前達をずっと守ってきたメティアを、理不尽極まりない理由で追放したんだから……」
「う……うぉぉぉぉっ!!」
泣き崩れるイクタスと、遅すぎる後悔に沈痛な面持ちでうつむくイクタスの仲間達。
ノーティスがそれを黙って見つめる中、メティアはノーティスの前にそっと出て、イクタス達を哀しく見つめた。
「イクタス……みんな……」
するとその瞬間、イクタスはとんでもない事を告げてくる。
「メティア……俺達のパーティに戻って来てくれ!!」
イクタス達が今さら言ってきたって、もう遅い……?
次話はメティアの想いが弾けます。




