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cys:53 約束の乾杯

 ギルドにおけるランク制度。


 冒険者になりたてのFランクからSランクまであるが、ギルドでは実質B+が最高峰だ。

 そこまでいけば、スマート・ミレニアムの正規軍に申請出来るからだ。

 もちろん、正規軍ではなく冒険者として活躍する道を選ぶ人もいる。


 ただどちらにしろ、B+になれば即正規軍になれる訳じゃない。

 そこからさらに厳しい登用試験と面接に合格し、半年間の試用期間を経て認められたら正式に採用だ。


 そこからSランクになるのがどれだけ過酷かは、もはや言うまでもない。

 Sランクとは、それだけ別格なのだ。


 メティアも当然それを知っている為、ノーティスが何を言っているのかすぐには理解出来なかった。


「ノ、ノーティス、一体何を言ってるの? 冗談にしても程があるよ。ロウ様と、Sランクの王宮魔道士様と会うなんて、ハハッ……」


 呆れた苦笑いを浮かべているメティアに、ノーティスはキョトンとした顔を向けている。


「いや、冗談でも何でもなく本当だよ。今言った通りロウは俺の仲間だ」

「えっ、ノーティス。キミは一体……」


 謎めいた顔を浮かべたメティアだが、ノーティスの表情は変わらない。


「勇者だよ。王宮魔道勇者。この前なったばかりだけど」

「ゆ、ゆ、勇者?! しかもそれって……!」

「うん。Sランクだよ」


 余りにも平然と告げてくるノーティスに、メティアは何だかストンと力が抜けた。


「ノーティス……そんな凄い事を、昨日食べた物を言うような感じで言われたら、ボク、よく分からなくなっちゃうよ」

「ん、昨日食べた物? あぁ、昨日はルミがトースト焼いてくれたんだけど、それと紅茶がメッチャ美味くてさ!」

「ノーティス、違う違う。そっちの方が力入ってるとか、オカシイって」


 思わず笑ってしまったメティア。

 ノーティスの少し天然な所が、思わぬ形で功を奏したらしい。


「あーーでもなんか、今ので気持ちが楽になったよ♪」

「そうか。よく分からないけど、よかった」

「ノーティス様の天然さも、たまには役に立ちますね♪」

「えっ、ルミ。それどーゆー事だ?」

「アハハッ♪ 二人とも、おもしろーい」


 メティアがそう言って笑うと、ノーティスはそのまま笑顔でメティアに向かい、シャンパンのグラスをスッとかざした。


「メティア。その笑顔のまま、俺とロウ達に会いに来てくれ」

「ノーティス……」


 可愛くクリっとした瞳で見つめてくるメティアに、ノーティスは澄んだ瞳で答える。


「ウチには今、メティアみたいな超優秀なヒーラーが必要なんだ」

「いや、ボクはまだそんなんじゃ……」


 メティアがそう零すと、ルミもメティアに微笑んできた。


「メティアさん、ノーティス様も伊達に勇者じゃありません。だから信じて下さい。ノーティス様と、何よりメティアさん自身を」

「ルミさん……ボクは……」


 するとノーティスがシャンパンをかざしたまま、痺れを切らしたように言う。


「メティア、乾杯しよう。メティアの夢を叶える為に!」


 そう告げられたメティアの瞳に涙が滲む。

 ノーティスとルミから伝わってくるからだ。

 二人が本当にメティアを必要としている事と、何より温かい気持ちを持っている事が。


「ノーティス……ルミさん……」


 二人の瞳を見つめたまま、メティアはグラスを片手に持ち元気に笑った。


「乾杯っ♪」


◆◆◆


 ノーティスの誕生日パーティーを終え、三人とも歩きながら火照った体を夜風で冷やしていた。

 柔らかい月の明かりと街の街灯が、彼らを優しく照らしている。

 そんな中、ノーティスはメティアに向かい微苦笑を浮かべた。


「俺のデザート、一瞬でメティアに取られたのには驚いたよ」

「ノーティス、ゴメンってば。だってあまりにも美味しそうだったからつい……へへっ♪」

「まぁまぁ、ノーティス様には今度カレッタを買って参りますので♪」

「おっ、ありがとルミ」

「えっ、カレッタ?!」


 甘い物好きのメティアは目を輝かせた。

 カレッタはその中でもメティアの大好物だからだ。


 それを聞いたノーティスは、ルミにチラッとウインクした。

 それを受けたルミは、心の中で優しいため息をついて微笑む。


「メティアさんの分も買っておきますから♪」

「さすがルミ! じゃーまた今度一緒に食べよう」

「わあ♪ 二人ともありがとう!」


 メティアがはしゃいだ時、ちょうど岐路に着いた三人は立ち止まった。


「じゃあメティア。明日さっき言った時間に、ギルド検定試験会場入口で待ち合わせな」

「分かった。約束したもんね、ノーティス」

「あぁ、約束した。明日必ず会おう」

「うんっ♪」


 笑顔で手を振り宿泊所へ帰っていくメティアの事を、ノーティスとルミは優しく見つめていた。

 メティアの姿がだんだん遠のき、街の雑踏の中へと消えてゆく。

 そして姿が見えなくなると、ルミはノーティスをチラッと見た。


「ノーティス樣、今お車呼びますね」


 けれどノーティスは無言のまま、左手を顎に当てジッと何かを考えている。


「ノーティス様?」


 ルミは呼びかけたが返事が無い。


「ノーティス様?」

「ノーティス様っ!」

「わっ、なんだよルミ」

「なんだよじゃありません。さっきから呼んでますよ」

「あっ、ごめんルミ」


 そう言って少し切なげな顔をしたノーティスの事が、ルミは気になった。

 いつもとはちょっと違う雰囲気だから。


「ノーティス様、どうされたんですか?」

「いや、何でもない……ちょっとボッとしてただけだ」

「ホントですか?」

「あぁ……そういえば車は?」

「今呼びます! もうっ、だからさっきからそう言ってるじゃないですか」


 そう言ってルミが車を呼んでる中、ノーティスは心の中で確信していた。


───間違いない。メティアは……


◆◆◆


 翌日、ギルド検定試験会場入口。


 メティアは、約束した時間よりかなり早めに来ていた。

 ノーティス達と、万が一にもすれ違う事にならないようにする為に。


───なんか、いつも来てた場所なのにドキドキするな……


 胸の鼓動を高鳴らせるメティア。

 昨日ノーティスに会ったのに変かもしれないが、王宮魔道士に会えると思うとドキドキしてしまう。


 けれど後から、そんなメティアを嘲笑する声が聞こえてきた。


「おいおい、メティア。オマエまだいのかよ?」


 メティアがサッと振り向くと、そこにはメティアを嘲笑うイクタス達の姿が。


「イクタス……!」


 怯えながらも睨むメティアに、イクタス達はニヤニヤと歪んだ笑みを向けてくる。


「メティア。お前さ、あんだけ言われてまだ来るとか、マジでいい加減にしろよ。なめてんのか?」

「なんかーー、諦めの悪いモテない女の子って感じ。キャハ♪」

「ハティの言う通りよ。同じ女としてありえないわ」

「うむ、その通りだ。主は見苦しい」


 心無い言葉を投げつけてくるイクタス達。

 けれど、メティアは小さな体にありったけの力を込めて、イクタス達に毅然と言い放つ。


「言ったハズだよ。ボクは必ず特級ヒーラーになって、多くの人を助けていくんだって!」


 その想いを受けたイクタス達は、苛立ち顔をギリッと歪ませた。


「テメェ……本気で目障りだわ。最下層ランクのヒーラーのクセに、デカい夢語ってんじゃねーよ。マジで消すぞ!」

「そうよ。この前教えてあげたのに分からないなら、お仕置きが必要かもね♪」


 イクタス達はそう言って遂に脅してきたが、メティアは怯まない。


「イクタス、みんな、そんな事してもムダだよ」

「なんだと?」

「ボクは、夢を叶えるって誓ったんだから!」


 メティアの瞳に輝きを見たイクタスは、よりイライラが募りブチ切れた。


「ああメティア、お前マジでイラつく! ここまで言っても分かんねーようなら、力ずくでここに来れなくさせてやるよ!」


 イクタスはメティアに向かい殴りかかろうとした。

 が、その時イクタスは背中からゾワッとした気配を感じ、大量の汗をブワッと流した。


───うっ!! き、斬られた……?!


 一瞬、そんな錯覚を起こしてしまうような殺気を感じたイクタスの背中に、静かに怒りの込められた声が響く。


「いい加減にしろ、お前ら」

この殺気を放ったのはもちろん……

次話はイクタス達がノーティスの力を思い知ります。

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