cys:48 追放されたヒーラー
『スマート・ミレニアム、ギルド休憩広場』
人の世とは皮肉なモノだ。
ノーティスが教皇から正式に勇者として認められ、割れるような拍手と喝采の中で『合格』とされていた時、とある女の子は、自分の所属するパーティから『失格』の烙印を受け追放されていたのだから……
『スカーレット・イグニス』
リーダーの男と戦士と女魔術師。
そして、可愛いヒーラーの四人からなる、火力重視の今、一番勢いのあるB+ランクパーティだ。
彼らは今休憩所で、この前のクエストを振り返り笑い声を上げている。
けれどそんな中、リーダーの『メタニーノ・イクタス』は、仲間と笑い声を上げた後、スッと表情を変えた。
そして、ウザったそうに振り返って見据える。
部屋の隅で一人静かに準備をしているヒーラーの少女、メティアの事を。
───ちっ、メンドクセぇ。
イクタスは心でそう零すと、ダラダラと歩きながらそのヒーラーの所へ行き冷酷な目で見下ろした。
しゃがんだまま準備をしているヒーラーの体に、イクタスの影がスッと差す。
「ん? どうしたのイクタス」
チラッと見上げてきたメティア。
すると、イクタスは嘲る顔でニヤッと嗤い、親指で首をビッと切るポーズを取った。
「メティア、お前は今日でクビだ」
「えっ?」
メティアは、仲間達からの突然の宣告に驚きサッと立ち上がると、大きく目を見開いた。
「えっ、イクタス! な、なんでボクがクビなの?!」
可愛い瞳に悲しみと焦りの表情を浮かべ、両腕を前に突き出して訴えるメティア。
すると、パーティのリーダーであるイクタスは、イラッとした顔でメティアを見下ろした。
「ハァッ……ったく、そんな事も分かんねーのかよ」
「分からないよ!だって、今までボクはヒーラーとしてみんなの事を……」
メティアが悲しく零し訴えようとすると、イクタスはそれを遮るように仲間達の方へ振り返る。
「おいお前ら! 役立たずがなんか囀ってんだけど、マジで何なの?」
イクタスは、脇に立つ戦士のヒカイトと魔導士のリィーテに同意を求める眼差しを送った。
「イクタス……」
自らの弁明を遮られ、悲しみの表情を浮かべるメティアに、ヒカイトとリィーテが蔑みの眼差しを向けてくる。
「あぁ、回復なんてさせてもらった事が無いから、ヒーラーだって事も忘れてたぞ」
「そーそー。第一さ、私が援護射撃してるから傷なんてつけられた事無いし。アハッ♪」
イクタスは二人の発言を聞くと、満足気で歪んだ笑みを浮かべてメティアを見下ろした。
「そういう事だ、メティア。火力重視の俺らのパーティーに、お前みたいな役立たずはいらないんだよ」
ニヤリと歪んだ笑みで見下ろしてきたイクタスに、メティアは悲しい顔をして訴える。
「そんな……! 今までボクは、みんなが戦いやすくなったり傷付かないように、ずっと支援を……」
そんなメティアを、イクタスはキッと睨んだ。
その瞳が、それ以上の言葉を許さない。
「うるせぇんだよクソが! ゴチャゴチャ言いやがって!」
「待ってイクタス、ボクの話を……」
メティアが、今まで自分がしてきた事を必死になって伝えようとすると、イクタスがメティアにグイッと上半身を乗り出して睨んできた。
「まだ分かんねぇのか?! メティア、テメェは追放だって言ってんだよ! 去れ、役立たずのゴミ女!」
「イ、イクタス……!」
涙目でイクタスを見つめながら震えるメティアに、ヒカイトとリィーテが追い打ちをかける。
「去れ、メティア。お主の様な役立たずにいられては、気分が悪い。吐き気すらする」
「そぅそぅメティアー、私さ、アンタ見てると同じ女である事が嫌になりそうなの。だから消えて。今、す・ぐ・にっ♪」
今まで一緒に戦ってきたパーティの皆から、心を抉られるような暴言を吐きかけられたメティアは、あまりの悲しみに言葉が何も出てこない。
口をどう動かしたらいいかすらも分からない程に……
イクタスは、そんなメティアを蔑みながらニヤリと嗤った。
「ハンッ! 返す言葉も無いみたいだな。じゃ、今までご苦労さん。役立たずのエセヒーラーさんよ!」
イクタスはそう吐き捨てると、ヒカイトとリィーテを連れ、下卑た嗤い声を上げながら去っていく。
メティアはそんな彼らの背中を悲壮な顔で見つめ、体を震わせながら片手を伸ばしたが、その手は届く事は無かった……
追放の悲しみに打ちのめされるメティア……
次話もメティアの話ですが、主人公はノーティスで変わりません。
第4章からも、よろしくお願いします!




