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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第3章 白輝の勇者エデン・ノーティス
40/251

cys:40 アルカナートの謎

───ハッ!


 ルミは目を覚まして上半身をガバっと勢いよく上げると、そこはもう闘技場ではなく、ノーティスの自宅だった。


 そして右側には、椅子に座ったまま腕を組んで眠っているノーティスの姿が……

 ルミが眠った後、ずっとそこで見守っていた事が伝わってくる。


「ノーティス樣……」


 ルミはノーティスの寝顔を見つめたまま華奢な手を伸ばし、顔をそっと近づけた。


───綺麗な寝顔……私、執事なのに、ノーティス様にはずっとお世話になりっぱなしです。


 ルミの胸がトクンと波打つ。


「ノーティス様、私は……」


 ルミは静かに声を漏らし、ドキドキしながらノーティスの唇に自分の唇を近づけていく……

 が、その時、部屋のドアがガチャっと開き、ルミは慌ててノーティスからバッと飛び退いた。


「あっ、お姉ちゃん起きてたんだ! よかったー♪」

「う、うん。エ、エレナ。お、おはよう!」

「ん? お姉ちゃん、どうかしたの? それにまだ夜だよ」

「ううんっ、何でもないよ。いやー、凄く寝ちゃったなーって思って」


 間一髪見られなかったものの、慌ててしろもとどろのルミ。

 起きたばかりなのに、全力疾走したかの如く心臓はバクバクだ。


 エレナはそんなルミを、ふーんといった顔をしてまじまじと見つめる。


「お姉ちゃん……」

「な、なに?」

「顔真っ赤だし、汗だくだよ。まだ体調良くないの?」

「あっ、あぁ。ちょっと疲れたまってかもー」

「だよね。じゃあ、ここにお粥置いとくから、よかったら食べてね」

「ありがとう、エレナ」


 ルミがそう言うと、エレナは少し切ない笑顔でルミを見つめながら、ドアをパタンと閉めた。

 そして、ドアを背に当てたまま切なく零す。

 実はさっきの場面、一瞬見てしまったから。


「あーーあっ。やっぱり好きなんじゃん。それに、何かお似合いだったな……」


 エレナがそう呟いたのも知らないまま、ルミはドキドキしながら、ベットの中からノーティスの横顔を見つめていた。


◆◆◆


「んっ……」


 ノーティスが目を覚ましベットを見ると、そこに寝ているハズのルミはいなかった。


───あれ? ルミいつの間に……


 そう思い居間の方へ行くと、テーブルの上にはズラッと朝食が並び、ルミが席についてノーティスに微笑んでいる。


「ノーティス樣、おはようございます♪」

「おっ、ルミ。もう大丈夫なのか? それにこの朝食は……」

「はいっ♪ お陰様でもう大丈夫ですので、作っておきました」

「そっか……よかった。ありがとうなルミ」


 ノーティスはそう言って席につき、ルミと大きなテーブルを挟んで食事を始めた。


「ノーティス様、紅茶のお味はいかがですか?」

「うん、美味しい。やっぱルミが煎れてくれた紅茶が一番だよ」


 するとルミは紅茶を綺麗に口につけながら、チラッと上目遣いでノーティスを見た。

 嬉しくドキドキする気持ちを、紅茶を飲んで落ち着ける。


「……ありがとうございます♪」


 そして紅茶をソーサーにカチャッと置くと、ノーティスに満面の笑みを向けた。


「ノーティス様♪ ギルド検定試験に合格、おめでとうございます!!」

「……ありがとう! ルミのお陰だよ」


 優しく微笑んだノーティス。

 それに、またドキッとしてしまったルミは軽く瞳を伏せた。


「いえっ、私は何も……むしろ、色々ご迷惑おかけしちゃって……」

「いや、ルミがエレナを守ってくれたからこそ、俺は合格出来たんだ」

「そんな……エレナは私の大切な妹ですから当然の事をしただけです」


 軽く瞳を伏せ静かに微笑むルミに、ノーティスは優しい眼差しを向けている。


「ルミ、今から俺の故郷に一緒に行ってほしい」

「えっ?」

「ルミと一緒に行きたいんだ。師匠とセイラに会いに」

「あ、あの方々にですか?」


 脳裏にアルカナートの事が浮かんだ。

 ノーティスが王都に来る際、執事としての契約の為に一度顔合わせをしたからだ。

 けれど、セイラとはまだ会った事が無かった。


───そういえば、セイラ様とはまだ直接お会いした事はなかったっけ。どんな人なんだろう……? ほとんど一緒に暮らしてるような感じだって聞いたけど……


 ルミがその事に想いを巡らせていると、ノーティスがサラッと告げてくる。


「あぁ。二人にちゃんと報告しておきたいから」


───ほ、報告っ?! そ、それって……


 ルミはドキッとして、食事を喉に軽く詰まらせた。

 そして、火照らせた顔でノーティスを見つめる。


「えっ! あの、報告って何を?」

「ん? 何って、合格した事をさ」


 サラッとそう答えたノーティスに、完全に肩透かしを喰らったルミ。

 一瞬体をピタッと止めて、納得しながら話す。


「あっ、あーーそう、そうですよね。ハイ。報告しなきゃいけないですね……」

「あっ、あぁ……そうだよ」


 どうしたんだ? という顔でノーティスが見つめる中、ルミは、一瞬別の事を期待してしまった自分を罵る。


───あーーもうっ、私ったら何を考えてるのよ。でも、ノーティス様の言い方も、ちょっと紛らわしいですよ……


 心でそうボヤいたルミは、紅茶を片手でクイッと飲むと、サッとソーサーに置いてスッと立ち上がった。

 こんな事はルミにとって日常茶飯事。

 いちいち気にしていたら、ノーティスの執事は務まらない。


「よし、じゃあ行きましょう! ノーティス様♪」


◆◆◆


 車を飛ばして早二十五時間……


 途中休憩を挟んだとはいえ、プラチナゴールドエリアからブロンズエリアまでは遠い。

 一つ一つのエリアは広大だし、何十区画にも分かれているからだ。


 なので、だいぶ時間がかかってしまった二人は、車から降りると大きく伸びをした。


「んーーーノーティス様、お疲れ様でしたー♪」

「おーーーっ、ありがとうルミ。やっと着いたな」

「はい♪ 長旅ご苦労様でした」


 ルミがニコッと微笑む側で、ノーティスは少し懐かしそうに周りを見渡すと、ルミと並んで歩き始めた。

 直接車で行ってもいいのだが、少し歩きたいとノーティスが言ったからだ。


 そして少し歩いた所で、ルミはちょっと不思議そうな顔をノーティスに向けた。


「けれどノーティス様、あの方々、本当にブロンズエリアにお住まいなんですか?」

「うん。まあ一応そうだよ」

「う〜ん。あの方々なら、プラチナゴールドエリアにも住めるハズなのに……」


 少し唸ったルミに、ノーティスは補足する。


「あぁ。けど、師匠は自由の剣で人を助ける為に、色んなエリアに行ってるし、家も幾つもあるような無いような……」

「ハハッ、さすがスケールが違いますね……あっ、でも、確かあの方は剣を置いたのでは?」


 すると、ノーティス少し切ない顔を浮かべた。

 端正な横顔に少し影が差す。


「うん……勇者としては」

「どういう事ですか?」


 そう問いかけられたノーティスは、少し切ない横顔を向けたまま一瞬目を閉じた。


「……勇者として剣を持つ資格はない。師匠は俺と初めて出会った時に、そう言ってた……」

「そんな……剣聖とまで言われた方なのに、一体なぜですか?!」


 悲しく謎めいた顔を浮べたルミ。

 けれど、それも仕方ない。

 もしアルカナートが勇者失格なら、一体誰が相応しいのか分からないから。

 また、あの傲岸不遜なアルカナートが言うセリフとは思えないのだ。


「セイラはそれを知ってるけど……師匠に口止めされてる」

「そうなんですか……でもやはり知ってますよね。セイラ様はアルカナート様が率いていた、伝説のパーティのお一人ですもんね」

「あぁ……けど、師匠は昔言ってくれたんだ。一人前の勇者になったら教えてやるって」

「では……!」

 

 サッと身を乗り出したルミに、ノーティスは力強く微笑む。


「あぁ、今日聞けるかもしれない」

「そうですね……!」


 ルミは精悍な顔で笑みを浮かべると、今度はフワッとした笑顔で尋ねる。


「そういえば、セイラ様ってどんな方なんですか?」


 するとノーティスは表情を変え、懐かしさと愛しさが混じった顔をルミに向けた。


「セイラは、思いやりがあって愛に溢れてる、可愛くて綺麗な大人の女性だよ」

「ふーん、そうなんですね」


 ちょっとふてったルミ。

 ノーティスがセイラの事を、自分の前で大絶賛するからだ。

 けれど、女心れ〜点のノーティスは、そんな事は全く分からず話を続けいく。


「それに、孤児達を救う為に、シルバーとブロンズの境目で寮を営んでるんだから凄いよな。まあ言ってみたら、明るい女神様かな♪」

「す、素敵な方ですね」


 嫉妬しつつも怒れないルミ。

 セイラの素晴らしさは認めるしかないからだ。


───セイラ様って本当に凄いな。そりゃノーティス様も好きになるわよね……


 そんなルミの心も知らず、楽しそうにセイラの話を続けるノーティス。

 悪気0だから始末に負えない。


「それに、セイラの所には色んな人が来るし、師匠も俺の修行時代には当然毎日来てたよ。修行は厳しかったけど楽しかったなー♪」


 ノーティスは嬉しそうな顔を浮かべ、ルミに修行時代の事を話しながら歩いていたが、そんな中、不意に後ろから呼びかけられた。


「ノーティス……?」


 その声にノーティスはハッと振り向いた。


 すると、なんとその目に飛び込んできたのは、嬉しそうに目を大きく開け、自分を見つめているセイラの姿だった。


「セイラ!」

久々の再会……!

次話はセイラとルミを交えたほのぼの回です。

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