表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
38/251

cys:38 笑うジーク

「ジーク、これは?!」


 ノーティスは思わず目を大きく見開いた。

 ジークから受け取った小瓶の中には、何と血清ではなく小さな鍵が入っていたのだ。


「ヘヘッ……そーゆー事よ」


 ジークのその笑みに、ハッと気付いたノーティス。


「まさかジーク……」

「あぁ、あの嬢ちゃんに毒なんて打ってねぇさ。まあ……演出の為に軽い睡眠薬は飲んでもらったけどな……」


 苦しそうにしながらもニヤリと笑ったジークを、ノーティスは切なく見下ろす。


「ジーク、お前ってヤツは……」

「けどよ、その演出が効く前に勝負は着いちまった。ハハッ……やっぱ、小細工なんてガラにもねぇ事は、するもんじゃねぇな」

「そこまでして俺と……」

「すまねぇ。それに、嬢ちゃんにもな……けどよ、どーしても俺は、本気のお前さんと戦いたかったのさ」


 ジークは負けた事の悔しさよりも、全力で戦えた事に満足気な笑みを浮かべた。

 根っからの戦士で豪快でガサツな性格だが、気のいい男だというのが伝わってくる。


「ジーク……!」


 切なく零したノーティスに、ジークはニッと笑う。


「早く行ってやんな。あの嬢ちゃん、あそこで寝かす訳にはいかねぇだろ」


 そう言われたノーティスは、ジークから受け取った鍵をグッと握り締めた。

 そして、ジークに背を向けルミのもとへ向かい手錠と縄と猿ぐつわを外す。


「ルミっ」

「ノーティス様……!」


 涙を浮かべ抱きついてきたルミを、ノーティスはギュッと抱きしめた。

 ルミの柔らかく華奢な体がブルブル震えている。


「ルミ、もう大丈夫だ。よく頑張った」

「うぅっ、ノーティス様……」


 涙を零すルミをノーティスはしばらく優しく抱きしめると、ゆっくりレイとエレナの下へ向かった。

 すると、レイはノーティスを見てニッと笑う。


「全く、危なかっかしいわね♪」

「レイ、ありがとう。ジークに勝てたのはキミのお陰だ」

「フフッ、まあでも最後はちゃんと美しく戦えたから許してあげるわ♪」


 レイがそう言って微笑むと、側に立ってたエレナは涙を浮かべたまま、ルミにタタッと駆け寄り抱きついた。


「お姉ちゃん!」

「エレナ……」


 ルミは自分に抱きついてきたエレナにちょっと驚き、ハッとした顔でエレナを見つめる。


「エレナ……てっきりノーティスに抱きつくと思ってたのに……♪」

「だって、お姉ちゃんあの時私を庇ってくれたもん!」


 それを側で聞いたノーティスは、思わずハッとエレナを見つめた。

 庇った話は聞いていなかったから。


「エレナ、どういう事だ」


 するとエレナは、ルミの胸に横顔を埋めたまま涙声で答える。


「さっきね、ジークの部下に、二人とも拐われそうになったんだけど……その時お姉ちゃんが守ってくれたの『エレナに触れる事は許しません! 連れ去るなら私だけにしなさい!』 って言って。うぅっ……」


 涙の乾かぬエレナ。

 その涙と共に、今まであったわだかまりが溶けていく。

 そんなエレナを、ルミは優しく撫でながら見つめた。


「当たり前でしょ。私はエレナの姉なんだから」

「ううっ……お姉ちゃーーん。今までごめんなさい!」

「いいのよエレナ。アナタを守れてよかった。けど、ごめんね……安心したら……なんかすごく……ねむくなっ……」


 そう零し倒れ込む様に眠ったルミの身体は、エレナからズズッと離れた。


「お姉ちゃん!」


 ドサッと倒れかけたルミ。

 だが、ノーティスがルミをサッと抱きかかえ、そのまま近くの観客席にそっと横たわらせた。

 

「ノーティス! お姉ちゃんは?!」

「大丈夫。軽い睡眠薬と疲れで眠ってるだけさ」

「えっ?」

「ジークが盛ったのは、軽い睡眠薬だったんだ」

「ふぇっ、よかった〜~~」


 安堵の声を漏らしその場にへたり込んだエレナ。

 そんな中、レイは仰向けに倒れているジークの側へ歩み寄るとジッと見下ろした。

 レイを照らす月明かりがミステリアスな後光のように輝き、まるで月の女王のようだ。


「ジーク、もう気は済んだかしら? 大分味わったみたいだけど」

「あぁ、たっぷりとな……まったく、最高のディナーだったぜ……!」


 ジークが仰向けのまま目を閉じ満足そうにニッと笑うと、レイも嬉しそうに微笑む。


「ジーク、それはよかったわ♪ じゃあ、合格よね」

「ハンッ、たりめーだろレイ。もしアイツが不合格なら……誰も試験に受かるヤツなんざいねーさ」


 最高の戦いの余韻を全身で味わいながら、ニヤッと笑ったジーク。

 

「フフッ♪ そうね。その答えは美しいわ」


 レイはそう言ってジークに微笑むと、サッとノーティスの方へ振り向いた。


「ノーティス、来なさい!」

「レイ……なんだ?」

「いいから! 早く!」


 レイに大きな声で呼ばれたノーティスは、レイとジークのいる場所に向かった。


「レイ、ジーク……」


 何を言われるんだという顔をしたノーティスに、レイは華美な光を宿した瞳を向け力強く微笑んだ。


「ノーティス、よくやったわね♪ これでギルド検定試験は全て合格よ!」

「えっ?」

「当然でしょ♪ アナタの実技試験は、彼が担当する予定だったんだから」


 レイがそう言ってニッと笑みを浮かべると、ジークも倒れたままノーティスに顔を向けて不敵に笑う。


「そうだぜ。けど……レイがお前さんの実技試験は免除だなんて言うから、こうしちまっただけだ」

「仕方ないでしょ。一刻も早く力になってほしいし、それに……」


 そこまで言って言葉を止めたレイを、ノーティスはちょっと不思議そうに見つめた。


「どうしたレイ。顔が赤いけど、熱でもあるのか?」

「な、なんでも無いわよ!」


 ちょっと怒鳴り顔をサッと背向けたレイを見て、ジークは軽く顔をしかめて笑う。

 レイがノーティスの事を仲間としてだけではなく、男として惚れてる事が分かったからだ。


「けっ、お前さんもらしくねぇ顔しやがって」

「うるさいわね!」


 背を向けたまま怒鳴ったレイと、倒れたままのジーク。

 女心れ~点のノーティスには、今のやり取りの意味は分かっていない。

 ただもちろん、ギルド検定試験に合格したというのは分かる。

 

 それ自体は凄く名誉な事であるハズなのだが、ノーティスは切なく腑に落ちない顔をして二人を見つめた。


「レイ、ジーク。俺はこの合格、受ける資格が無い……!」

なぜノーティスは、こんな事を言ったのか……

次話はノーティスの気持ちと試験の真意が明らかに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ