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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
32/251

cys:32 アンリの『クリスタル・ゲート』

「えっ? 降参って……」


 ノーティスは逆に戸惑ってしまった。

 一体なぜアンリが突然降参してきたのか、全く分からなかったから。

 けれど、アンリが完全に闘気も消したので自分も闘気を収めた。


「なぜだアンリ? なぜワザワザこんな事を……」

「ニャハハッ♪ まっ、それについては今から答えるニャ♪」


 アンリがそう言ってニカッと笑うと、ルミを閉じ込めていた透明な箱がシュッと開いた。


「あっ……」


 ルミは一瞬呆けた顔をしたが、すぐにノーティスに向かってタタッと駆け出した。

 ルミの乾いた足音が部屋に響く。


「ノーティス様!」

「ルミ!」


 ノーティスはルミがギュッと抱きついてくると、優しくギュッと抱きしめた。


「良かった……ルミ」

「申し訳ございませんノーティス様。ご迷惑をおかけしました……!」

「気にするな。あんなん防ぎようがないさ。それよりも、ルミが無事で本当によかった!」


 ノーティスから安堵の気持ちが溢れ出ている。

 それを感じたルミは、うるっと涙を浮かべノーティスを見上げた。


「私、ノーティス様にあんな態度取ってしまったのに……」


 そんなルミに、ノーティスは澄んだ瞳を向けて優しく微笑んだ。


「ルミ、いいんだよ。ルミのそういう所も含めて、ルミは俺の大切な人だから」

「うぅっ、ノーティス様ーーっ♪」


 再びノーティスの胸に顔をうずめ涙を零すルミと、そんなルミの頭を優しく撫でるノーティス。

 それを見ているエレナは、バタつきたいのをグッと堪えていた。


───またお姉ちゃんバッかりズルいーーー! でも……


 今はルミが無事だった事がエレナも本当に嬉しかったし、今騒いだとしても、ノーティスからは呆れられるだけど分かっているからだ。

 それはエレナの望む事ではない。


───今はいいよ。それに、本当によかった……


 ちょっと切なさを感じているエレナをよそに、ノーティスはルミを片手で抱きかかえたまま、アンリを精悍な瞳で見据えた。

 ルミが無事で安堵はしたが、不可解な気持ちは残ったままだから。


「アンリ、ルミをさらった本当の目的は何だ?」

「すまんすまん、でも実際に危害を加えた訳でもないし、そう怒らなくてもよかろーーー」

「いやアンリ、そういう問題じゃない。ちゃんと話してもらうぜ」


 するとアンリは、ノーティスをジッと見つめたまま飄々と答えていく。

 さっきまでと違い、いつものアンリの雰囲気だ。


「ふむぅ……理由は二つニャ♪ 一つはノーティス。お主の光の力がどれだけのモノか、測定したかったのじゃ」

「測定? なんでわざわざ……俺は勇者志望だから、魔力測定検査は無いハズだけど」

「その理由が、二つ目の理由ニャ♪」


 アンリはそう告げ、アーチがかかった大きな鉄製の扉のような物の前に行くと、それに手をそっと(かざ)し解除の呪文を唱えた。


 すると扉のような物はブワンッと消え、そこには何と円形の大きな工作物があった。

 鉄製で出来ていて、真ん中には大きな穴が開いている。


「これニャ♪」


 アンリが指し示したそれには、六つの位置に魔力クリスタルが配置されていた。


「アレはまさか……!」

「赤、青、黄、緑、ピンクの魔力クリスタルと、一番上には色の無いクリスタルがある……なんか、凄い作りをしてますね!」

「わぁっ、キラキラしてて綺麗だし、何か不思議ーー♪」


 ノーティス達が各々の感想を抱く中、アンリは得意げな顔をグイッと向けた。

 自信と悦びが全身から溢れている。


「これは私が作った、異世界への門じゃ♪」


 そして満面の笑みを浮かべると、スラッとした両腕を斜め上に広げた。


「名付けて『クリスタル・ゲート』ニャ♪」

「異世界だって?」


 ハッとし目を見開いたノーティス。

 クリスタルの配置に意味がある事に気付いたからだ。


「アンリ、このクリスタルの配置は『六芒星』を創り出しているのか!」

「ニャニャッ! さっすがノーティスだの。そのとーりじゃ♪」


 ノーティスの洞察力に感嘆の声を上げ、嬉しそうに笑ったアンリ。

 そのアンリを前に、ノーティスはクリスタルゲートを興味深そうにジッと見つめている。


───異世界……ゲート……六つの魔力クリスタルと六芒星。これに通じる物は……まさか!


 ノーティスが真相に辿り着き目を大きく見開くと、アンリはニッと笑い、魔力を保存する小瓶をサッと取り出して掲げた。

 

「そう、これが必要だったのじゃ」

「それは『マジック・アーカイブ』! と、いう事はやはり……」

「そうじゃノーティス。お主の白輝(びゃっき)の力がどうしても必要だったのニャ♪」


 アンリはその小瓶を持ちノーティス達にスッと背を向けると、クリスタルゲートの方へゆっくり歩きながら話を続ける。


「このクリスタルゲートは、クリスタルの魔力によって動くのじゃが、ご覧の通りニャ」


 アンリは、ゲートの一番上の中央に設置してある白輝のクリスタルを指さした。


「この白輝の魔力クリスタルは、私が考えうる限り、お主の持つ光の魔力によってしか作動せんのニャ」


 アンリはそこまで言うとノーティスに振り返り、少しすまなそうな顔をして、両手でゴメンのポーズを取った。


「じゃから、すまんのぉ。お主の光のエネルギーが、  どーしても欲しかったのじゃ」

「だから、ワザと俺を怒らせるような事を……」


 ノーティスはそこまで言った時、ハッとしてルミの方へ振り向く。


「まさか、ここまでの事をアンリから聞かされていたのか?」

「いえ、ここまで詳しくは聞かされてませんが、私に危害が及ばないように、ここへ入ってろと言われまして……」


 ルミがそう答えると、アンリはニヤッと笑みを浮かべた。


「万が一戦いになって、お主の大切な人に傷が一つでも付いたらいかんからの♪」

「アンリ……! 荒い口調になってすまなかった」


 ノーティスがすまなそうにうつむくと、アンリはニコッと微笑んだ。


「気にするでない。私が勝手にルミを召喚して、お主をワザと怒らせたんだからの。むしろ、こちらこそすまなかったな」

「アンリ……」

「ニャハハハッ♪ まあその分、今から凄い物を見せてやるニャ♪」


 アンリはそう言って笑うと、ワクワクしながらマジックアーカイブの差込口を開いた。


「じゃーーーついに、白輝の光の魔力を注入するニャッ♪」


 そう宣言して、マジックアーカイブをカチャッと差し込んだ。


 すると六つの魔力クリスタルがキュイーン! と、いう音共に強く光輝き、その光が六芒星の形を作り出していった。

 そして、その装置から放たれたエネルギーがゲート内の空間を歪めていく。


「おおっ! やはり間違いニャかった。ついに、異界へのゲートが開くニャ! どんな世界ニャんだーーーーー?!!」


 長年の研究成果が実り、歓喜に打ち震えながら異世界へのゲートを見続けるアンリ。

 もちろん、ノーティス達も恐れと好奇心に彩られた瞳でゲートをジッと見続けている。


 すると、スマート・ミレニアムとはまるで違う雰囲気の、巨大な四角い建物が立ち並ぶ異世界の姿が、ゲートの中に見えてきた。


「おおおおっ! これが異世界か! 凄いニャ!!」


 歓喜の声を上げ瞳を輝かすアンリと、そのゲートを目を大きくして見つめているノーティス達。

 が、しかしその時だった。

 ノーティスは、その景色を見た瞬間襲われてしまったのだ。

 頭が割れるような強烈な頭痛に。


「くっ……! な、なんだこれは……あ、頭が……」


 苦痛に顔を歪め、両手で額を押さえその場にドサッと(ひざまづ)いたノーティス。


「ぐっ……!!」

「ノーティス様、大丈夫ですか!!」

「ノーティス大丈夫?!」


 悲痛な表情でノーティスの顔を上から覗き込む、ルミとエレナ。

 その姿に、アンリもハッとして顔を振り返らせた。


「ノーティス、どうしたのじゃ!」


 するとその時、突如ゲートに漆黒のエネルギーがブワッと舞い込み、ジジジッ……という音と共にゲートを強制的に塞ぎ始めた。


───なっ!?


 アンリは異変に気付きゲートにサッと向き直ると、それを見て驚き目をカッと見開いた。


「そ、そんな馬鹿ニャ! まだエネルギーは大量に残っておるし、どこにも不具合は無いハズじゃ!」


 だがアンリの想いも虚しく、ゲートはドンドン閉じていく。


「くっ! なぜニャ……なぜニャーーー!!」


 そして、完全に消えてしまった異界への扉とクリスタルの光。

 その光景を見たアンリは、落胆すると同時に恐怖に戦慄した。

 アンリは今の出来事の原因を脳内で高速にシミュレーションし、確信に近いモノがあったからだ。


───これは消えたのではない。誰かに消されたニャ……先程の漆黒のエネルギーは、まさか……! そんな……くっ………!


 消えてしまった、いや、ほぼ間違いなく何者かに消されてしまったゲート。

 それがあった虚空を、アンリはジッと見つめながら再び思考を巡らせていく。

 そして、自分の出した結論に戦慄しながらも、アンリは跪いているノーティスに近寄りそっと顔を覗き込んだ。


「ノーティス、大丈夫かニャ?」


 すると、ノーティスはゆっくりと立ち上がり、アンリにすまなそうな顔を向けた。


「も、もう、大丈夫です。ただ、さっき急に……」

「……『知らない記憶』が流れ込んできたのじゃろ?」

「な、なぜそれを?!」


 ハッと驚いた顔を向けてきたノーティスを、アンリは一瞬目を閉じてからジッと見つめた。


「ノーティス、お主は……」

アンリはノーティスに、何をどう告げるのか……

次話はノーティスが重大な事に気付きます。

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