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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第1章 闇から光に転じるまで
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cys:3 心を切り裂く両親と弟

落ち込み系はこの話までです。

「ただいま……」


 皆から追放されたノーティスは家に帰った。

 無論、足取りも重く心は失意に塗り潰されていたが、学校にはいれないし帰るしかなかったから。

 ただ、家に帰りドアをけると居間の明かりはついているのに返事は無かった。


───あれっ、誰もいないのかな……?


 そう思って居間への扉をそっと開けると、ノーティスの瞳に飛び込んできた。

 ソファーに座っている父と母の後ろ姿。

 そして、その向かいのソファーに座っている、腹違いの弟であるディラードの下卑た笑みが。


 ちなみに、ディラードはノーティスの異母兄弟で弟に当たるが、生まれた日が少し違うだけで年は同じだ。

 その三人から、異様なオーラが立ち昇っている。

 まるで可視化出来そうなぐらい、邪悪でドス黒いオーラが。


───まさか……!


 一瞬で嫌な予感を感じ、不安な面持ちで背中から恐る恐る両親を呼びかけるノーティス。


「父さん……母さん……」


 けれど二人から返事は無く、異母兄弟のディラードはノーティスを見下した目で、ニヤニヤと見つめたままだ。

 それによりノーティスは悟ってしまった。

 今日の事を、もう知っているのだという事を。


「うっ……ううっ……」


 ノーティスは悲しくて泣き出しそうになるのをグッとこらえ、再び両親の背中に呼びかける。


「父さん、母さん……」


 すると父親はスッと顔を振り向かせ、冷酷な眼差しでノーティスを射抜く。


「気安く呼ぶな。このゴミめが」

「と、父さん……」


 そして、母もソファーに座ったままバッと顔を振り向かせ、ノーティスの事を忌まわしいモノを見る目つきで、キッと睨みつけた。


「うるさいわよ!」

「母さん……」


 両親から汚らしい物を見るような眼差しを向けられ、心が絶望に染まっていくノーティスに、両親はさらに黒い言葉をぶつけてくる。


「キサマ、無色の魔力クリスタルだったそうだな……」

「ホント、信じられないわ」


 その黒い残酷な言葉がノーティスの心に呪いのように染み渡っていき、ノーティスは胸が苦しくなりうつむいた。

 けれど、両親はさらに呪詛の様な暴言を吐き、ノーティスの心を闇に塗りつぶしていく。


「まさか我が家から、無色のクズが出るとはな……ノーティス、お前はなぜ生きている?」

「そうよ。アンタのせいで、私達まで変な目で見られたらどーすんのよ!」


 自分の子供に向けるとは思えない言葉をぶつけてくる二人に、ノーティスは震えながら声を絞り出す。

 たった今朝までは、温かい笑みで見つめてくれていた、二人の顔を思い出しながら……


「父さん……母さん……俺も、好きでこんなんになった訳じゃ……」


 ノーティスは涙を滲ませ二人を見つめるが、両親からの黒い罵倒は止まらない。

 むしろ勢いを増し、黒い濁流のように襲いかかる。


「当たり前でしょ! なろうと思ったってなれないわよ! アンタみたいなクズに!」

「母さんの言う通りだ。ゴミはゴミらしく黙っていろ! お前の吐く息で家が穢れるわ!!」


 あまりにも冷酷で無惨な言葉により、ノーティスの心の中にある優しかった時の二人の顔が黒いモノで塗り潰されていく。

 それによりノーティスは声にならない悲鳴を上げ、その場に震えながら立ち尽くす。


「あっ……あっ……」


 そんなノーティスの前で、母親はディラードに優しく微笑み両手を広げた。 


「ディラードちゃん、こっちにいらっしゃい♪」

「はい、お母様」


 ディラードが側に来ると母親はギュッと彼を抱きしめ、ワザとらしくディラードに問う。

 ノーティスには今後、二度と向けられないであろう優しい微笑みを浮かべながら。


「ディラードちゃんは、どんなお色だったんだっけ♪」

「はい、お母様。僕の魔力クリスタルは黄色でした。僧侶に向いていて、色も鮮やかだと神官様からお褒めを頂きました」

「まあっ! 素晴らしいわ、ディラードちゃん♪」


 すると、父親もディラードを誇らしく見つめてきた。


「うむ、ディラードよ。お前なら、きっと将来立派な僧侶になれるだろう」

「はい! 将来は王都の()えあるスマート・ミレニアム軍に使え、僧侶として皆を癒やしたいと思ってます!」


 これ見よがしに胸を張って答えたディラードを、母親は更に愛おしく抱きしめたまま頬ずりする。


「もうっ♪ なんていい子なのかしらディラードちゃんは。愛してるわよ〜〜」


 猫撫声で頬ずりする中、父親もディラードの肩にポンッと片手を乗せて精悍な眼差しを向けた。


「ディラード、お前は我が家の誇りだ。素晴らしい! しかし、それに比べ……」


 父親がスッとノーティスを見ると、母親もディラードを抱きしめたままノーティスの方へ振り返った。

 侮蔑と憎しみに満ちた瞳と共に。


「このゴミクズが、邪魔で仕方ないな」

「本当に……ああっ、穢らわしい!」


 その眼差しを受け、悲しみに倒れそうになるノーティス。


「なんで……父さん……母さん……」


 すると、ディラードが両親に向かい、ニコッと優しく微笑んだ。

 完全に勝ち誇ったオーラを醸し出しながら。


「お父様、お母様、もうそれぐらいで。お兄樣も、決して望んでこうなってしまった訳ではないのですから」


 もちろんこれは、ノーティスの為を思って言った訳ではない。

 これを機に、父親と母親からより寵愛を受ける為だ。

 そして、ディラードの思惑通り両親は感動に目を大きく開き、ディラードを大絶賛してゆく。


「ああっ、ディラードちゃん! アナタなんて優しいの♪」

「うむ、素晴らしい! こんな廃棄物のようなヤツにまで、優しさを忘れないとはな」

「お母様、お父様。そんな事はありませんよ〜〜♪」


 ディラードはわざとらしく照れた顔をして立ち上がると、ソファーに腰掛けている両親の側を通り過ぎ、ノーティスの前に近寄りニコリと微笑んだ。


「お兄様っ♪」

「ディラードお前……」


 ノーティスが困惑した表情を浮かべると、ディラードはニタァっとした下卑た笑みを浮かべ、ノーティスの肩にポンと片手を乗せた。

 そして耳元で囁く。

 最低にして最悪の言葉を。


(アンタの居場所は、もうどこにも無いんだよ。哀れな無色の魔力クリスタルさん。クククッ♪)

「オマエっ!」


 その言葉と態度に激昂したノーティスは、ディラードの胸ぐらをグイッ! と吊し上げた。

 が、その瞬間、ディラードはニヤッ嗤うと体重を後ろにかけ、自分の背中をワザとそのままドンッ! と床に打ちつける。


「うわぁっ!」


 そしてワザとらしく声を上げると、ノーティスを怯えた顔で見上げた。


「に、兄さん何を……」


 小刻みに震えるディラード。

 ノーティスを追い落とす為の迫真の演技だが、使い方は最悪だ。


 そんなディラードを見た母親は、血相を変えソファーからバッと立ち上がると、ディラードの元へ駆けつけギュッと抱きしめた。


「ディ、ディラードちゃん! 大丈夫?!」


 また、父親もソファからサッと立ち上がり、ディラードへ心配そうな顔を向けた。


「大丈夫かディラード!」


 そんな風に心配してくる2人に、ディラードはワザと殊勝な態度で微笑む。

 まるで役者のように。


「ハハッ、大丈夫ですよ……お母様、お父様。僕はお兄様に気にしないで下さいと伝えたんですが、きっと僕の伝え方が悪かったんです……」


 ディラードがワザと神妙そうに言うと、父親と母親はまるで鬼の様な形相でノーティスを睨みつけてきた。

 二人の瞳が、蔑みから激しい怒りの炎に変わる。


「ノーティス! キサマーーーーーっ!! ゴミクズ以下の存在のくせに!!!」

「そうよ! アンタみたいな能無しで冷たいヤツが、ディラードちゃんを突き飛ばすなんてありえない!!」

「いや、違うよ! 俺は……」


 ノーティスは呆然と立ち尽くしたまま声を漏らしたが、両親はそれを一切聞かず、叫ぶようにおぞましい罵声を浴びせてくる。


「黙れ! 消えろ!! 今すぐに!!!」

「そうよ! この出来損ない!! 二度と私達に近寄らないで!!!」

「ぐっ……父さん……母さん……!」


 涙を浮かべ立ち尽くすノーティスを、父親は発狂しながら睨みつけている。


「何をしている! 去れ! 早く視界から消えろ!! ほら、金ならくれてやるから!」


 父親は、ノーティスに魔力クリスタルから送金しようと思ったが、ノーティスの魔力クリスタルが作用しない事を思い出すと、財布から札束を出してノーティスの胸にグイッと突っ込んだ。


 そして、生ゴミが手についてしまったかの如く、ノーティスの目の前で両手の平をゴシゴシと擦り合わせた。


「ぬぅっ、汚らわしい物を触ってしまった。この腐った生ゴミめが! だが、せめてものよしみだ。これでもくれてやる。だから早くここから去れ!!」

「そうよ! もういいでしょ。お願いだから消えてちょうだい!! 早く! 早く!! 早くーーーーーーーっ!!!」


 そんな最中、ディラードは母親に抱きしめられたまま、ノーティスに向かいニイッと嘲けた顔を向けると、言葉を発さず口だけゆっくり動かしていく。


(さ・よ・う・な・ら。お・ち・こ・ぼ・れ)


「ぐっ……!!」


 ノーティスは三人からの呪詛のような言葉に、もはや染まる部分すら無くなってしまった真っ黒な心を抱え、家をバンッ! と、勢いよく飛び出した。

 瞳から涙を横に流しながら……


 そんなノーティスが去ると、父親と母親はニヤリとほくそ笑んだ。

 ノーティスには言ってなかったが、実はノーティスは里子でディラードが実子だから。


 この国では里子を引き取ると、十二歳までは国から多額の支援金が得られるのだ。

 無論、ノーティスが一人前になればその後の面倒を看てもらおうと思っていたが、無色の魔力クリスタルならそれも期待出来ないので必要無い。


───もうアイツには、塵ほどの価値もない。

───ディラードちゃんさえいれば、もう用済みよ。


 そんな事は露ほども知らないノーティスは、悲しみと絶望の中、当てもなく街を彷徨っていた。

 漆黒の闇に染められた心を抱えたまま……

悲しい展開はここまでです。

4-5話は感動系で、6話から、ざまぁ展開です。

ブックマークまだの方は、よろしくお願いします\(^o^ )


また、途中苦難があっても、必ずハッピーエンドへ向かっていく物語ですのでご安心ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クリスタルが無色と知った途端、 冷徹になる神官、そして友人達。 これは色々と辛いですね。 でも落ち込み系はここまでようなので、 4話以降の展開に期待したいです。 面白かったので、ブクマさせ…
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