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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
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cys:24 レイの歪んだ美意識

「よしっ! 行くか」


 胸の前で拳と手の平をパシッ! と合わせ、レイの想いを全力で受け止める決心をしたノーティス。

 試験場へと続く扉の前に着くと、試験補助官の女性がノーティスを待っていた。


「エデン・ノーティス様ですか?」

「はい」

「お待ちしておりました。私は試験補助官のリリーと申します」

「よろしくお願いします。ちなみに、リリーさん。今回は俺だけですか?」


 ノーティスは思わず尋いてしまった。

 自分しか受験者がいない事に、違和感を感じていたから。

 するとリリーは、少し誇らしげな顔を浮べ胸を張った。


「はい。普段は十名ずつ入り、横に並んで十名の試験官から魔法が放たれますが、今日は先程から試験官は一人です」

「一人?」

「そうです。しかも、この回は特別に、エデン・ノーティス様お一人だけ通すように言われております」

「一対一か……」

「はい♪ こんなの滅多に無い事ですよ!」


 少し興奮気味のリリーの瞳が輝く。

 そして軽くニッと微笑むと、会場の扉をゆっくり開けた。


「ではノーティス様、こちらへ」


 するとそこには、大きな庭がパノラマ状に広がっていた。


「結構広いな。けど……」


 リリーと並んで少し歩きながら、軽く呟いたノーティス。

 決して庭園という訳ではなく、むしろ殺風景な荒涼な光景が広がっているから。

 それを見て、ノーティスは即座に悟った。


───あっ、そういう事か!


 ここで繰り出される魔法の威力が大きい事を。

 木々など生やしてもムダなのだ。


 ノーティスがそう思った時、リリーはピタッと足を止めると、手を前にサッと伸ばして試験官を指し示した。

 口元には軽く笑みを浮かべている。


「あの方が試験官です」


 リリーが指し示した方を見ると、ノーティスの瞳に途轍もなく美しい女の姿が映った。

 殺風景な風景が、その女の放つオーラで一変してしまいそうなぐらいの美しさだ。


───あ、あれは……


 軽くウェーブのかかった艶のある長い金髪に、パッチリとした切れ長の目とブルーの瞳。

 また、男なら誰でもソソられる抜群のスタイルをセクシーな服装で包みこみ、それと強さが相まり立ち昇る華やかさ。

 そんな華美なオーラが、全身から溢れ出ている。


───なんて綺麗な(ひと)なんだ……!


 ノーティスは、思わず一瞬見とれてしまった。

 けれど、ハッ! と気付き意識を戻す。


───あっ、もしかして……


 その瞬間、彼女は艶のあるセクシーな瞳でノーティスを見つめ、ニヤッと妖しい笑みを浮かべた。

 耳の青いイヤリングが、軽く揺れる。


「へぇ、アナタって本当に無色のクリスタルなのね♪」

「キミは……」

「私は今日、特別にここの試験官を受け持つ事になった、スマート・ミレニアムの攻撃系王宮魔道士『クロスフォード・レイ』よ♪」


───やはりか。彼女がエミリオの姉……!


 ノーティスは、レイから放たれる華美なオーラに気圧されながらも、屈する事なく精悍な瞳でレイを真っ直ぐに見据えた。

 ここで呑まれる訳にはいかないから。


「俺はエデン・ノーティス。ギルド検定試験の受験者だ」


 するとレイは、美しい髪を片手でファサッとかき上げ、妖しげな魅力を宿した瞳でノーティスを見下ろした。

 艷やかな薫りが広がってゆく。


「フフッ♪ ノーティス、アナタのせいよ」

「なんだと?」

「アナタのせいで、さっき他の受験者達にも、少ーし強く当たっちゃったんだから。罪な男ね♪」


 その時ノーティスは思い出した。

 必要以上に傷付いた、さっきの受験者達の姿を。


───彼らの事か………


 彼らは見た感じ、正直少しガラが悪かったし直接関わり合いは無い。

 とはいえ、彼らに自分のとばっちりを喰わせてしまったと思うと、やっぱり気分が悪い。


───すまない……


 ノーティスは心でそう零すと、レイに少し憐れむような顔を向けた。


「そんな綺麗なのに八つ当たりとは、美しくないぜ」


 そう告げられたレイは、怒りで眉をピクッと動かしノーティスを睨む。

 レイは美しいかそうでないかに、とても敏感だからだ。


「美しくないですって?」

「あぁ、そうさレイ。八つ当たりなんて美しくない。キミは、あのエミリオの偉大な姉だろ」


 そう言われたレイはスッと表情を戻し片手で髪をかき上げると、再び蔑んだ瞳で見下ろした。


「へぇ、知ってたのね。アナタ如きの存在でも♪」


 けれどノーティスはそれに構わず、レイを真っ直ぐ見つめたまま話を続ける。


「あぁ、だからキミの想いはある意味正しい。けど、関係の無い人間に八つ当たりするのは間違ってる」


 ノーティスがハッキリそう告げると、レイはこれまで溜め込んでいた怒りを爆発させ、ノーティスをキッと睨みつけた。

 瞳に怒りの炎が燃え盛ってゆく。


「黙りなさい! 学校も中退させられた無色の魔力クリスタルの落ちこぼれのアナタが、私に美しさを語るなんてありえないわ!」


 レイの怒りに恐怖や悲しみよりも、ノーティスは少し違和感を感じた。


「レイ……キミは弟さんの事で、俺に怒ってるんじゃないのか」

「えぇ、もちろんそうよ……でも分かってるでしょ。あの子がもし強い相手に負けたのなら、まだ仕方ないの。でも……」


 レイはそこまで告げると、怒りに体を震わせてゆく。


「アナタのような美しくない人に負けるなんて……私は絶対許せない!」


 まるで、断罪するように強く言い放ったレイ。


 人の価値観は色々あるが、レイは自分の中に確固たる美意識が確立されている。

 今回の件は、レイのその琴線(きんせん)に触れる事だったのだ。


 そんなレイをノーティスは哀しく見つめ、残念そうに零す。


「歪んでるな……」

「何ですって?!」


 訝しむ顔を向けてきたレイを、ノーティスは澄んだ瞳で見つめ返した。


「レイ。キミの見た目はとてつもなく美しい。けど……心は醜く歪んでいる。そんな心じゃ俺を倒す事は出来やしないぜ」


 そう言われた瞬間、レイはさらなる怒りでブルブル身体を震わせた。

 ノーティスの透き通るような澄んだ瞳に、吸い込まれそうになるのをグッと耐えながら。


「美しくない……アナタは何もかも美しくないわ! だから気に入らないの! アナタの言動だけじゃなく……その瞳が!」

「レイ、何を言っている」


 怒鳴りつけてきたレイに、クールに答えたノーティス。

 けれど、それがレイの怒りをより加速させ、ノーティスを睨む眼光がより鋭さを増していく。


「アナタにその瞳は、相応しくないって言ってるの! だから、ちゃんと塗り替えてあげる……無色の魔力クリスタルのアナタに相応しい、絶望の色に!」


 レイはそう言い放つと、片手を胸の中心に添え、額の魔力クリスタルに意識を集中させていく。


「華美に煌めきなさい! 私のクリスタル!!」


 その詠唱と共に、レイのパープルブルーの魔力クリスタルが、鮮やかな光を放った。

 周囲に鮮やかな青い光が満ちてゆく。


 そこから放たれる華美な煌めきに、ノーティスは思わず目を細めた。


「くっ……なんて鮮やかで美しい光だ」


 ノーティスがそう零した時、レイはその煌めきを全身に纏い華美な笑みをノーティスに向ける。


「フフフッ♪ 言っとくけど、まだ本気じゃないから」

「なっ?!」

「でもノーティス。アナタにはこれで充分よ♪」


 そう告げられたノーティスは感じた。

 エミリオとはまるで次元の違う煌めきと、そこから放たれる圧倒的な戦闘力を。


───さすがは王宮魔導士。今までの相手とは格が違う。しかも、まだ全力じゃないなんて。だけど……


 少し苦しい表情でレイを見つめるノーティス。

 そんなノーティスに、レイは自信に満ち溢れた顔を向け、両手をスッと下に下ろし妖しく微笑んだ。


「ノーティス、断罪の時間よ。圧倒的な力の差に絶望して、アナタの醜さを知りなさい!」


 けれどノーティスは、その瞬間言い放つ。

 レイに澄んだ瞳を向けたまま。


「レイ。悪いけど、キミには無理だ……!」

ノーティスが言ったのは強がりか? それとも……!

次話は遂に王宮魔導士レイとの初対決!

熱い展開になっていきますので、ブクマまだの方は是非しておいてくださいっ\(^o^ )

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