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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
22/251

cys:22 ノーティスの憂鬱

 ノーティスが部屋から出てきた姿を見たルミは、ノーティスにタタッと駆け寄り、少し心配そうに顔を見上げる。


「ノーティス樣、どーでしたか?!」

「いや、一応合格はしたんだけど……」

「おめでとうございます! ノーティス樣♪」


 パアッと明るい笑顔を浮かべたルミに、すまなそうな顔をするノーティス。


「あっ、たださ……」


 それを見たルミは、また何かあったのかと思って、ドキッとしてした。


「ど、どうかされたんですか?」

「いや、測定器斬り刻んでバラバラにしちゃって……」

「そ、測定機をですか?!」


 驚愕して目を見開いたルミに、ノーティスはすまなそうな顔をしたまま、軽くうつむく。


「あぁ……でも合格はしたというか、合格を認めてくれって試験官さんに何度も頼まれて……」

「……はぁ。測定機を斬り刻んで、合格を頼まれた……」


 ルミは斜め上を見て、魂の抜けた様な声を漏らした。

 測定器の硬度は知っていたルミは、ノーティスのあまりのぶっ飛び過ぎに、一瞬思考が追いつかなかったのだ。


───ノーティス様が強いのは知ってるけど、あの測定機を斬り刻むとか……もうムチャクチャな強さよ。測定機も弁償しないといけないし……


 ルミが心でそうボヤくと、ノーティスはそんなルミの心の声を聞いたかのように告げる。


「あっ、でもあの感じだと、弁償はしなくていいかもしれない」

「えっ?」


 チラッと見てきたルミに、ノーティスは軽く安堵の顔を向けた。


「あぁ、会場から出る時に、クロエっていう補助官の女の人から、こっちで上手くやるって言ってもらえたしさ」

「ふーん。へぇー、そうなんですか」


 ルミはちょっとムッとして、軽くツーンとした顔をした。

 そのクロエという女性の事を、ルミは知っていたからだ。

 毎年受験生から声をかけられる、綺麗な(ひと)だと。


「クロエさんに、お声がけしたんですか……」

「いや、何か友達になりたいから、連絡先交換しようって言われて」

「へぇーー、で、したんですか?」

「うん」

「はぁ、そうですか……」


───測定機は斬り刻むは、女性の心は射抜くは、全くもう……しかも、好かれてる事に無自覚だし……


 ルミの頭はショートしかけてきた。

 ノーティスの件で悩むのは、いつもの事だといえばそうかもしれない。

 けど、さっきからぶっ飛んだり妬かせる情報が、大量になだれ込んできたからだ。


───ハァッ。ノーティス様の事大好きだから頑張れるけど、そーじゃない人ならもたないわね。きっと……


 心でそう零したルミに、ノーティスは軽く笑みを向ける。


「でも大丈夫さ。試験官さんも、なぜか土下座して、合格認めて下さいって言ってくれたんだし」


 それは、ノーティスのとんでもない力に、試験官が怯えてただけじゃないかと思ったルミだが、頭がパンクしそうになったルミは、取り敢えず一旦考えるのをやめた。


「ハハハッ……」


 なんかもう、ルミは諦めたように声を零し、ノーティスをボンヤリと見つめる。


「……はい、そうですね。大丈夫ですよ……ノーティス樣。イザとなれば修理代ぐらい、あの方から事前に頂いてるお金でどうにでもなりますし、細かい事を気にするのはやめましょう……」


 ルミはノーティスに呟くようにそう言うと、今度はふっきれたように片手の拳をビッと上げ、目一杯の笑顔を浮べた。


「ノーティス様、合格バンザーイ♪」


 ノーティスは、いーのかなー?とは思いつつも、ルミの言う通り、今は弁償の事を考えても仕方ないと思い、ルミのノリに乗っかる。


「やったぜルミ! 攻撃力測定試験に合格したよ♪」

「はいノーティス樣♪ 紅茶いっぱい飲みましょう!アハハハッ!」

「おお、そうしよう」


 半ばやけっぱちな感もあるが、ノーティスとルミは取り敢えず2つ目の試験に合格した事に焦点を当てて、一緒に紅茶を飲みに行こうとした。


───ノーティス様の紅茶に入れるお砂糖の量、間違えないようにしなきゃ……


 けれど、その時だった。


「ノーティス!」


 突然後ろから強く呼びかけられ、バッと後ろを振り返ったノーティスとルミ。

 するとそこには、怒りに全身を震わせノーティスを睨みつけてくる、あのエミリオの姿があった。


 ノーティスは、どうしたんだ?という顔でエミリオを見ると、その隣で、ルミは少しキョトンとした顔でノーティスを見つめた。


「ノーティス様、あの方は?」

「あぁ、さっき攻撃力測定試験で一緒だった……人だよ」


 エミリオの名前が出てこないノーティス。


 さっきの試験でノーティスに一番印象深く残っているのは、エミリオ達から嘲笑われた事ではなく、ドラゴンの皮膚の事から思い出した、アルカナートとの修業の事だったからだ。

 後は、弁償とクロエの優しさ。


 それを感じたエミリオは、ノーティスに吠える。


「エミリオだ!」

「あっ、そうだったな。すまないエミリオ。で、何の用だ?」


 ノーティスがあっけらかんとした顔で答えると、エミリオは怒りをさらに爆発させ、顔を大きくしかめた。


「ふざけるなよノーティス! どんなトリックを使ったのか知らないけど、ボクにあんな恥をかかせやがって!」

「いや、トリックじゃなくて、上手く手加減出来なかっただけなんだけど……」

「手、手加減だと?! お前は……どこまでボクをバカにすれば気が済むんだ!」


 怒り狂うエミリオを、ノーティスは不思議そうに見つめる。


「えっ? バカになんてしてないだろ。だだ測定器壊しちゃったのはマズかったと思ってるし、後、才能や家柄とかじゃないってのは事実を言っただけだ」


 ノーティスがそこまで言うとエミリオはブチ切れて、ノーティスに向かいビシッと指を差す。


「ノーティス、もう許さない! 決闘だ!」

「け、決闘?」


 ちょっとギョッとした顔をしたノーティスを、エミリオは指を指したままキッと睨みつけた。


「そうだ。ギルド試験の最中に、受験者同士の闘争は禁止されている。けど、ギルドの許可と立ち合いの元なら決闘が許されてるのは、キミも知っての通りだ!」


 エミリオからビシッと告げられたノーティスは、隣に立つルミに顔をちょっと寄らせ、小声でそっと尋ねる。


(ルミ、そんなルールあるの?)

(はい。一応あります)

(マジかーーーー)


 ノーティスは片手を額に当て目を閉じたまま、体を軽くのけぞらせた。

 そしてエミリオに向き直ると、すまなそうな顔をして、片手でゴメンのポーズを取る。


「ごめんっ。無理だエミリオ」

「なんだと? なぜだ!」


 エミリオは訝しむ顔を浮べたが、ノーティスはバツ悪そうに軽く視線をそらして片手で頭を掻くと、ボソッと答える。


「いや、今からルミと……紅茶飲みに行くから」

「紅茶だぁ? キサマはこの俺との決闘よりも、その子との紅茶の方が大切だとでも言うのか!」


 エミリオは大きく口を開きノーティスに怒声をぶつけたが、ノーティスは悪びれる事なく、むしろ、ちょっとムッとした顔をエミリオに向けた。


「当たり前だろ」

「なっ?」

「エミリオ。俺は元々、戦いは好きじゃないんだ。それにどう考えたって決闘よりも、ルミと紅茶を飲む方が楽しいに決まってる」

「オマエな……!」


 エミリオが、まだ何か言いたそうな雰囲気を感じたノーティスは、逃げるように片手で再びサッとゴメンのポーズを取った。


「じゃ、という事でまた。行こうルミ」

「えっ?いいんですか、ノーティス様」


 チラッとノーティスを横目で見上げたルミに、軽くウンザリした顔を向けたノーティス。


「いいよいいよ」

「まあ、ノーティス様がいいのであれば……」


 ルミが一応納得した顔でそう答えると、ノーティスはエミリオにサッと背を向けて歩き出した。

 そして、ルミはエミリオに軽くすまなそうにお辞儀をすると、ノーティスの後にタタッと駆け寄る。


 そんな2人の後姿を見つめながら、唖然と立ち尽くすエミリオ。

 決闘は、そもそも相手が受けると言わなければ成立しないし、何より、今のやり取りで強烈に感じさせられたのだ。


「ボクとは戦う価値すら無いって事か……くっっっそう!!」


 エミリオは悔しさに震え、ダンッ!と片足で地面を勢いよく踏みつけると、ハァッと溜息と共にガクッと肩を落とし、失意と共にトボトボとその場を後にした。


◆◆◆


 そんなエミリオとは逆に、ノーティスはルミと紅茶を飲みながら、楽しい反面少し顔を強張らせていた。


 ようやく、またルミと紅茶を飲む事が出来たが、女心が分からないと言われたままでもあるからだ。

 ある意味こっちこそが、ノーティスにとっての決闘に他ならない。


───せっかくいい感じに戻ったから、またルミの事怒らせたりしないように気を付けなきゃな……!


 ノーティスがそんな事を考え、軽く目を閉じ紅茶を飲んだ時だった。


「ノーティス様」

「はいっ!」


 ルミから不意に呼びかけられ、思わずドキッとしてしまったノーティス。

 ルミはそんなノーティスを、少し不思議そうに見つめる。


「えっ、どうしたんですかノーティス様。いきなり変なお声出して」

「ア、アハハッ、いや別に。なんでもないよ」

「そうですか……で、次の防御力測定試験なんですけど、ここからは魔力使わないと、流石にノーティス様でも厳しいと思います」


 ルミは、要注意だぞという顔でノーティスに話した。


 ノーティスの実力は信頼しているが、ルミはノーティスに試験を確実に突破してほしいのだ。

 今までどれだけノーティスが頑張ってきてるかを、ちゃんと分かってるから。


───それに、ノーティス様には出来ればケガしてほしくない。きっと試験は厳しい試練だと思うけど……


 その気持ちを感じたノーティスは、ルミの顔を見ながら微笑んだ。


「ありがとうルミ。けど、なんで魔力使わないと厳しいのかな?正直このままでも、ある程度の魔法なら防げる自信はあるんだけど」


 するとルミは、一瞬顎に手を添えて視線を軽く斜めに落とし、考える顔をチラッと浮べた。

 そして、両肘をテーブルに乗せ上半身を少し乗り出すと、ノーティスの顔をジッと見つめる。


「ノーティス様。普通なら確かにそうですけど、次の試験はもしかすると……」

ルミはいつもノーティスの事を想ってる……

次話はセクシーな王宮魔導士の登場です♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] エミリオの負け犬ムーブが止まらない。 でもそんな事よりルミとお茶しようぜ。 という感じのやや天然気味のノーティスが素敵です♪
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