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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
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cys:208 三人の意志と覚醒

「ならば死ねっ! その報われぬ愛と共に!!」


 シルフィードの振り下ろす剣が迫る中、セイラはギュッと瞳を閉じた。


───ごめんね……アルカナート……!


 最後まで自分の愛を貫いた事に、後悔は無い。

 ただ、それでもアルカナートを守れなかった事が、哀しくて仕方ないのだ。


 そんなセイラに迫る刃は、その想いも愛も断ち切ろうとしてきている。

 絶対的な死によって。


 しかし、その刃がセイラに届く事はなかった。


 ガキインッ!! と、いう音と共にセイラがスッと目を開くと、その瞳に映ったのだ。

 シルフィードの剣を受け止めている、アルカナートの姿が。


「アルカナート……♪」


 驚きつつも、顔をほころばせたセイラ。

 その背中から、ハッキリと伝わってくるから。

 アルカナートがナターシャの死を乗り越え、力強く復活した事が。

 だがシルフィードは、そんなアルカナートの事を驚愕と苛立ちと共に睨みつけている。


「き、貴様……一体どうやって……」


 シルフィードには分からなかったのだ。

 さっきまで廃人のようになってたアルカナートが、なぜ力を滾らす事が出来るのかを。


「お前はナターシャの死によって、もはや剣を振るえる精神状態では無いハズ……!」


 そんなシルフィードの剣をググッと防ぎ顔を軽く伏せたまま、アルカナートは絞り出すような声で告げる。


「託されたからだ……」

「なんだと……」

「俺は確かにナターシャを救えなかった。だから、勇者の資格なんてありゃしねぇ……」

「ならば、なぜまだ戰う!」


 怒声を浴びせてきた時、アルカナートは剣をバチンッ! と、弾かせシルフィードを退かせた。

 そして、剣を斜めに下げたまま艶のある瞳で見据える。


「ナターシャは死んでねぇ」

「何を言っている? 貴様、気でも触れたか?」

「アイツは俺の心に生きてる。だから、俺は剣を置かねぇ。俺の目に映る奴らを救う為に剣を振るう! それが、俺と……そして、ナターシャの意志だ!!」


 そう言い放ったアルカナートを、セイラは両手を口に当て涙を浮かべて見つめている。


「うぅっ……アルカナートぉ……」


 愛するアルカナートが復活してくれたのが、嬉しくて堪らないから。

 そんなセイラに、アルカナートは涼し気な流し目を向けて微笑んだ。


「ったく、なーに泣いてんだよ」

「だって、嬉しいんだもんっ! 悪いのっ?!」

「フンッ……まっ、お前のバカみてにデケェ声で、目が覚めたってのはあるからな」

「もうっ、それってどーゆー事よっ」


 可愛く頬を膨らませムスーっとしているセイラをよそに、アルカナートはザッと前に出た。

 全身からは、精悍なオーラが立ち昇っている。


「んじゃセイラ、お前は下がってろ」

「なんで?! 私も一緒に戦うよっ!」


 身を乗り出して見上げてくるセイラを、アルカナートは一瞬チラッと見て微苦笑を浮かべた。


「セイラ、お前は充分戦ったろ」

「そんな事……」


 セイラがそこまで言った時、アルカナートはその先の言葉を遮り告げる。


「バカか」

「はあっ? なによもうっ! せっかく人が心配してあげてるのにっ!」

「忘れたのかよ、自分で言ったくせに」

「えっ?」


 一瞬キョトンと可愛く口を開いたセイラ。

 そんなセイラの隣で、アルカナートはサッと軽くそっぽを向いた。

 ちょっと照れているからだ。


「……淹れてくれんだろ」

「へっ?」

「コスモティーだよ」

「あっ!」


 そうだった! と、いう顔を浮かべたセイラに、アルカナートはサッと向き直った。


「さっき、お前が言ったんだろ」

「ごめーーんっ♪」

「ったく……」

 

 アルカナートは呆れたような顔で一瞬軽く瞳を閉じると、艶のある瞳でセイラを見つめた。


「だから、そこでジッとしてろ」

「なんで?」

「お前がいなくなったら、コスモティー飲めねぇだろうが。言わせんな、バカ」


 相変わらず口調は荒いが、その艶のある瞳には優しさが溢れている。

 セイラは、そんなアルカナートの顔をニヤニヤしながら覗きこんだ。


「そんなに私と紅茶飲みたいのかな〜〜♪」

「チッ、コスモティーが飲みてぇんだよ」

「アハッ♪ もーー素直じゃ無いんだからっ♪」


 セイラはそう言って可愛く笑うと、凛とした眼差しでアルカナートを見つめた。

 その瞳に宿る光を揺らめかせながら。


「アルカナート、絶対無事に帰ってきてね。ここで見守ってるから」

「……セイラ、お前一人にコスモティーを独占させねぇよ」


 アルカナートは軽く笑みを浮かべ再び前へザッと出ると、シルフィードを真っ直ぐ見据えた。


「すまねぇな、シルフィード。バカのお陰で待たせちまった」

「フッ、そのバカに復活させてもらったんだろう」

「まっ……アイツは俺の鞘だからな」

「鞘か……クククッ、大層なご身分だな」


 軽く皮肉めいた笑みを浮かべたシルフィードに、アルカナートは問いかける。


「テメェにはいねぇのか」

「いるハズが無いだろう……俺は、スマート・ミレニアムに復讐し滅ぼす為に戦ってきた。もし、鞘があるとすれば……」


 シルフィードはそこまで話すと、アルカナートに向かい剣をビュッ! と、突き出した。

 剣先が漆黒にキラリと光る。


「それはアルカナート、お前の死だ! お前の体にこの剣を突き刺し、真紅の鞘に変えてやる!」


 そう言い放ったシルフィードの体から、紫白(しはく)の魔闘気がグワッ……! と、立ち昇ってゆく。

 その魔闘気に照らされる中、アルカナートは剣先を右斜め上に向けてジャキッと構えた。


「ったく……そんな作り方、上手くいくわけねぇだろ!」


 アルカナートの体から白輝(びゃっき)の闘気がブワッ……! と、立ち昇る。

 どちらも互いに引けを取らない強さと輝きだ。

 そんな輝きを放つ中、二人の想いを乗せた眼差しが交叉する。


「シルフィード、もう終わりにしてやるよ」

「終わりだと? クククッ……アルカナート、ここから始まるのだ。貴様らの崩壊がな……!」


 思えば、この戦いの始まりはどこからだったのか。

 無論、二人の運命を引き合わせ、二人をこの場に立たせたのはナターシャだ。

 けれど、これよりもっと前から二人は戦う運命にあったのだ。


 二人が同じ『無色の魔力クリスタル』を授かりながらも、そこから互いに違う道を選んだ瞬間から。


「させねぇよ……シルフィード、俺が白輝のクリスタルと共に戦い続ける限り……!」

「フッ、崩壊は止められん。この滅輝乃魔眼の力で貴様は死ぬのだからな」


 シルフィードはそう告げると、闇に染まった瞳でアルカナートを見下ろした。


「仮にこの俺に勝ったとしても、白輝のクリスタルはお前のみ。貴様がいずれ剣を振るえなくなれば、その時に我らの戦力を止める者はいなくなる」

「フンッ、分かってねぇなシルフィード」

「なんだと……!」


 訝しむ顔を浮かべたシルフィード。

 アルカナートを除けば、今現在、戦力自体はトゥーラ・レヴォルトの方が上回っている。

 それを、アルカナートが知らないハズが無いと思っているからだ。

 そんなシルフィードに向かい、アルカナートはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「俺には弟子達がいるのさ。アイツらは将来必ず強くなる。それに……いつか必ず出会うハズだ。この俺の白輝のクリスタルを受け継ぐ奴にな……!」


 確信に満ちた想いでそう言い放ったアルカナート。

 もちろん、この時はまだノーティスの存在は全く知らない。

 けれど、いつか出会う事を直観的に感じていたし、何よりこれはアルカナート自身の願いなのだ。


「そして、俺はそいつに示してやる。シルフィード、お前が本当は辿れたハズの道をよ……! それが、ナターシャから託された、俺の貫くべき意志だ!」


 その言葉を受けたシルフィードは、激しい怒りと共にグッと目を見開いた。


「ふざけるな……ふざけるなよアルカナート! そんな未来など来させてたまるか! 貴様はここで必ず殺す! この俺の滅輝乃魔眼の力によってな!! オォォォォォッ……!!」


 シルフィードの魔闘気がかつて無い程大きく膨れ上がってゆき、空間その物をゴゴゴゴゴゴゴ……! と、震わせていく。

 また、シルフィードの体から周囲一帯に激流のように広がってゆくエネルギー波が、アルカナートとセイラに襲い掛かる。


「フンッ……!」

「うっ……! な、なんて魔闘気なの……」


 アルカナートは憮然とした表情でシルフィードを見据えているが、セイラは思わず顔をしかめてしまった。

 その、あまりにも凄まじい闘気の力を感じてしまったから。


───どうししたらいいの……やっぱり彼の滅輝乃魔眼の力は、アルカナートよりも……!


 セイラが心で焦りを零す中、シルフィードはアルカナートを見据えながらニヤリと嗤った。


「アルカナート、この力の前に散るがいい! 所詮、白輝の魔力クリスタルなどここで滅ぶ運命なのだ!」


 圧倒的力を放ちながらそう言い放ってきたが、アルカナートは動じない。

 

「シルフィード、白輝のクリスタルを……俺の意志を舐めるなよ! ハァァァァァッ……! 限界を超えて銀河のように煌めけ! 俺のクリスタルよ!!」

「フッ、ムダな事を。いくら魔力を滾らそうが、この俺の魔闘気の前では……」


 シルフィードはそう言いかけて言葉を止め、目を驚愕と共に見開いた。


「なっ、なんだその輝きは……!」

 

 体を固めたまま、額からツーっと汗を流すシルフィードの瞳に映る。

 白輝の魔力クリスタルを超えた輝きの色が。


「そ、その輝きはまるで……」

「だから言ったろ、シルフィード。これが白輝の魔力クリスタルが秘める真の力『ゴールド・クリスタル』だ……!」

遂にゴールドクリスタルを覚醒させたアルカナート。決着は近い……!

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