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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
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cys:200 滅輝乃魔眼と白輝の魔力クリスタル

「チッ、あれが滅輝乃魔眼か」


 警戒しながら顔をしかめるアルカナート。

 今までに感じた事の無い、異様なオーラと強大な力をヒシヒシと感じるからだ。


「テメェ、その力は一体……!」


 そんなアルカナートを、シルフィードは哀しみに怒りを交叉させた瞳で見下ろした。


「捨てられたのさ。俺は」

「なんだと?」

「……アルカナート、貴様は知っているか? 極まれに起こる『魔力クリスタルの不適合』を」

「魔力クリスタルの、不適合?」


 謎めいた顔を浮かべたアルカナートを見て、シルフィードはフッと溜め息を吐いた。


「所詮、貴様のような勇者には無縁の話か」


 そう吐き捨てたシルフィードからは、怒りよりも哀しみのオーラが漂っている。

 また、その話からアルカナートはハッと目を見開いた。


「お前、まさか……」


 アルカナートの脳裏によぎった悍ましい直感。

 それは、スマート・ミレニアムに潜む、奥深い闇の部分。

 その直感で背筋にゾクッとした物を感じた時、シルフィードが剣を横に構え襲いかかってきた。

 艶のある銀髪が横に靡く。


「アルカナートっ!!」

「くっ!」


 ガキィンッ! と、いう剣がぶつかる音と共に、二人は鍔迫り合いを始めた。

 驚きと哀れみが入り交じるアルカナートの眼差しと、怒りと哀しみが交じるシルフィードの眼差しが、剣と共に交叉する。


「シルフィード、もし、俺が思った通りならお前は……」

「黙れっ! 哀れみなど不要だ……!!」


 シルフィードは咆哮を上げ、ガリィィンッ! と、剣を弾かせ後ろへ飛び退いた。

 そして、憎しみに満ちた瞳でアルカナートを見据える。


「くだらぬ事を話してしまった。俺に必要なのは憐れみでも同情でもない……アルカナート、お前の死だ!」

「シルフィード……」


 アルカナートは剣をジャキッと右斜め上に立て、精悍な眼差しでシルフィードを見据えた。

 そんなアルカナートに向かい、シルフィードは怒りを滾らせる。

 

「オォォォォォッ……! この滅輝乃魔眼の力の前に散るがいい!」


 そう言い放ったシルフィードの滅輝乃魔眼から、紫白(しはく)のオーラ溢がれ出し、全身を禍々しく覆ってゆく。

 それはまるで、シルフィードの心そのものを表しているような輝きだ。


「それは禁呪の力……『魔闘気』か!」


 シルフィードの力の正体を知ったアルカナートは、ナターシャからバッと跳び退き距離を取った。


「こっちだ、シルフィード!」

「クククッ……この期に及んで、未だその女を庇うとはな」

「フンッ、テメェこそ女を狙うなんて、ダセェ真似はしたくねぇだろ」

「……いいだろう。これで全て、終わりにしてやる!」


 シルフィードは両手を天に向け掲げると、一瞬にして無数の青いエネルギー弾を上空に作り出した。

 一つ一つが高いエネルギーを宿し、ギラギラと光を放っている。


「あれはクリスのっ……!」


 アルカナートがハッと見上げた瞬間、シルフィードはダッと真正面から跳びかかった。


「砕け散るがいい『真・天空破弾』!!」


 シルフィードに追随するかのように、無数の青いエネルギー弾が同時に迫ってくる。

 また、それと同時に、シルフィードは両腕の外側にしまっていた長い鉤爪をジャキンッ! と、前に伸ばしアルカナートに向かい突きつけた。


「なっ?!」


 アルカナートが驚愕に目を見開くと、シルフィードは無数の青いエネルギー弾を従えながら放つ。

 ザラークの必殺技を超えた技を。


「避ける事は不可能『極・残響滅牙』!!」


 アルカナートに向かい無数の青いエネルギー弾が降り注ぐ中、無数の光の牙が同時に襲い掛かる。

 しかも、それは前方からだけではない。

 エネルギー弾は上からも迫り、光の牙はシルフィードの凄まじいスピードにより前後左右から襲い掛かってきた。


───マズいっ!


 アルカナートは、素早く防御の姿勢を取ったが受け切れなかった。

 無数の青いエネルギー弾がズドドドドッ!! と、降り注ぎ体を打ちつける中、シルフィードの極・残響滅牙がアルカナートの体を四方から鋭く斬り裂く。


「ぐわっ!!」


 エネルギー弾を喰らい悶えると同時に、斬り裂かれた場所から鮮血が吹き出し、凄まじい苦しみで顔をしかめたアルカナート。

 全身からの出血と痛みで、立っているのもやっとだ。

 だが、シルフィードの攻撃は止まらない。


「ハァァァァッ!」


 両拳に紫白のオーラを纏い、アルカナートに殴りかかる。


 ドガガガガガッ!!


「ぐはぁっ!」


 口から血反吐を吐くアルカナートだが、シルフィードの猛攻は止まらない。

 サンドバッグのように乱打を受ける度、アルカナートから血しぶきが地面に飛び散り、赤いまだら模様を作ってゆく。


「アルカナート! お前の剣は確かに途轍もなく強くて速い! だがそれは……白輝の光で増幅されての事っ!!」


 狂気の宿る眼差しで咆哮を上げたシルフィードは、乱打を続けながら片足にググッ……! と、力を込めた。

 滅輝乃魔眼の魔闘気が、より妖しいオーラを強めてゆく。


「この俺の滅輝乃魔眼は、貴様の魔力クリスタルとは根本の想いが違うっ!!」


 シルフィードはそう言い放つと同時に、アルカナートの体を凄まじい強さでガシッ!! と、蹴り上げた。


「ぐあっ!」


 その蹴りの威力で、アルカナートの体が上空に舞う。

 それをキッ! と、見据えたシルフィードは、大地が円形にえぐれる程の勢いで、アルカナートより高く跳び上がった。

 そして、アルカナートを見下ろしたまま、両手を組んだ。

 その両手に込められた魔闘気が、球体状に大きく膨れ上がり黒い炎のように燃え盛る。


「ずっと光の当たる場所で生きてきたお前は、闇で生きてきた俺には決して勝てぬっ!! 喰らうがいいっ!! 『獄・無明圧殺』!!」


 その叫びのような咆哮と共にシルフィードは両拳を振り下ろし、獄炎のようなエネルギーでアルカナートをドカッ!! と、叩きつけた。


「ガハッ!」

 

 常人、いや、並の戦士ならば体が粉々になる程の威力で大地にズドォォォォンッ!! と、叩きつけられたアルカナート。

 何とか一命は取り留めたものの、体はもう大ダメージでボロボロだ。


 けれど、片手で剣を大地に刺し、ググッと何とか体を起こした。

 ただ、立ち上がる事は出来ず、膝まづいた姿勢のまま、ハァッ……! ハァッ……! と、息を切らしながらシルフィードを見上げる。


「くっ……」


 その瞳の光は消えていないが、全身傷だらけな事に変わりはない。


 その光景を目の当たりにしていたナターシャは、涙を浮かべてタタッ! と、アルカナートの側へ駆け寄った。


「アルカナートーーーっ!!」


 切ない叫びを上げて走るナターシャの瞳から、涙が横に零れ落ちる。

 そして両手を横にバッと横に広げると、シルフィードに向かい立ち憚った。


「シルフィード、もうやめてっ!」

ナターシャの叫びはシルフィードに届くのか……

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