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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
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cys:196 カミラの激情

「ハァァァァッ! 喰らいやがれっ! 『エッジ・スラッシュ』!!」


 これは、アルカナートの十八番の突き系必殺技。

 クラウディア・フォースが対空技なのに対し、これは地上版。

 閃光のように一瞬で相手を貫く。


───狙うは、あの真紅の鉄球を破壊出来る『真突点』だ。


 どんな硬い物質にも、その一点を突かれると一瞬で砕け散る場所がある。

 無論それは針の先程のポイントである為、戦いの中で、ましてや凄まじい勢いで向かってくる鉄球の真突点を突く事は不可能だ。

 いや、それがどこかさえも分からない。


 だが、アルカナートはそれを見切った。


───ここだっ!


 そして、真突点目掛け突きを繰り出す。

 が、その瞬間カミラはニヤッと笑みを浮かべ鎖をジャリッと操った。

 それにより鉄球の軌道が変わり、螺旋状の渦を巻く。


「なっ!?」


 アルカナートは思わず目を見開き、咄嗟に剣を縦に構え防御の体勢に切り替えたが、急ごしらえのその構えにカミラの真紅の鉄球がガギンッ!! と、ぶつかってきた。


「ぐあっ……!!」


 流石のアルカナートも、ギリッと歯を食いしばる。

 何とか剣で体への直撃は防いだものの、凄まじい圧と衝撃と熱がアルカナートを襲い、後ろに大きく吹き飛ばされてしまったからだ。

 全身に凄まじい痛みが駆け巡る。


───くっ、まさか、あそこから軌道を変えやがるとは……


 アルカナートは駆け巡る痛みに耐えながらも何とか立ち、顔をしかめたままカミラを見据えた。

 しかし、息をつく暇もなくカミラのもう片方の手から、小型の鉄球が付けられた鎖が放たれ、アルカナートをグルグルと縛ってゆく。


「チイッ!」


 一瞬で鎖に縛られ、立ったまま身動きを封じられたアルカナート。

 カミラはその姿をニヤリと見据え、グッと薬を持つ手に力を込めている。


「フフッ、やっと貴方を縛る事が出来たわ♪」

「生憎だが、縛られるのは好きじゃねぇ……」

「ダメよっ♪ 貴方みたいな男はちゃんと縛っておかなきゃ、すーぐ他の子に言っちゃうんだから♪」


 そう言って軽くウィンクしてきたカミラに、アルカナートはウザったそうに吐き捨てる。


「ったく……そんな考えじゃ、男に逃げられちまうぜ。特に、俺みてぇな男にはよ」

「そうよね〜〜だから……」


 カミラはそこまで告げると妖しい笑みを浮かべ、鎖から電流のような闘気をアルカナートへ流し込んだ。

 アルカナートの全身に焼け焦げるような痛みが走る。


「ぐあっっっっ!!」


 それと同時に、カミラは狂気の混じった笑みを浮かべた。

 

「ちゃ〜〜んと、愛もあげるの」

「ハァッ……ハァッ……愛? 冗談だろ」

「本気よ。だってアルカナート、貴方は私の物だから♪」


 艶っぽくそう言い放ったカミラを見て、思わず微苦笑を零したアルカナート。


「……ったく、どいつもこいつも……」

「なによ」

「いや……お前に似た奴の事を、思い出しちまっただけだ」

「ふ〜〜ん、どんな女なの?」


 カミラが少し妬いた顔で見つめる中、アルカナートの脳裏に浮かんでいたのはレイだ。

 さっきの言葉と雰囲気が、レイのそれと重なったから。


「まだガキだ」

「えっ? なによそれ」


 少しムスッとしたカミラ。

 まるで、自分が子供だと言われたように感じてしまったのだ。

 そんなカミラの姿が、よりレイを彷彿させる。


「まだ、真の美しさが何かを分かってねぇ。まっ、お前はアイツ程酷くはねぇが、愛し方はアイツと同じで強引だ」


 アルカナートがそう告げると、カミラは一瞬間を開け嬉しそうに軽く微笑んだ。


「その子の気持ち、分かるわ。きっと……」


 カミラはそこまで告げると、もう片方の手で再び巨大な鉄球をブンブンと振り回し、アルカナートを見つめる。


「殺したい程愛してるのよ」

「フンッ、それに応じる訳にはいかねぇな。俺には救わなきゃなんねぇ女がいるからよ」

「必要ないわ。私の愛で終わりにしてあげる♪」


 そう言い放ったカミラの全身から、凄まじい闘気がバババッ! と、立ち昇った。

 カミラはここで勝負を決める気だ。


「ありがとう、アルカナート。貴方に出会えて……戦えて感謝してるわ」


 凛とした瞳で見つめてくるカミラからは、勝利への自信と共に哀しい想いが伝わってくる。

 もう、ここで別れなければならない哀しみが。


 その想いを受けたアルカナートは、全身ボロボロであるにも関わらず艶のある瞳でカミラを見据えた。

 その瞳に宿る光を燻らせながら。


「カミラ、こちらこそ礼を言うぜ。お前という戦士がいた事を俺は忘れない」

「フフッ、その部分は両思いになれたのね。嬉しいわ」


 カミラはそう告げ哀しく微笑むと、キッと強い眼差しでアルカナートを見据えた。

 そして、振り回している鉄球を再び巨大な真紅のそれに染める。


「さよなら、アルカナート。アァァァァッ……!」


 真紅の鉄球が超巨大化すると同時に、幾つもの鋭い鉄のトゲを現した。

 破壊力も攻撃力も最高潮に高まり、全てを粉々にするエネルギーを放っている。


「これが私の全力の愛よ! 『紅華滅心(こうかめっしん)』!!」


 カミラは、それをありったけの力と闘気で振り下ろした。

 鎖に縛られたままのアルカナートへ向かって。


「カミラ……」


 そう零したアルカナートを、迫りくるカミラの鉄球が真紅に照らした。

 

アルカナートは、一体どう切り抜けるのか……!

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