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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
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cys:195 参獄星と無双の剣

「フッ、始まったようだな」


 シルフィードは、スッと軽く瞳を閉じ静かに零した。

 クリス達の攻撃による轟音が、少し離れた場所から聞こえてきたからだ。

 また、その音がナターシャの胸をギュッと締め付ける。


(アルカナート……!)


 音のした方を切ない瞳で見つめるナターシャを、シルフィードは静かに見据えた。


「アルカナートはここまで辿り着けぬ。奴に差し向けた三人は、トゥーラ・レヴォルト最強の『参獄星(さんごくせい)』」

「参獄星……?」

「特別な任務をこなす隠密部隊だ。アイツらの作るトライアングルに死角は無い」


 そう言い放ったシルフィードからは、彼らの力に対する信頼が溢れている。

 これまで失敗した事が無い実績による物だ。

 けれど、ナターシャはそんなシルフィードを強い眼差しで見つめた。


「でも彼は……アルカナートは強いわ。多分、これまで貴方達が戦ってきたどの相手よりも……!」


 そう告げてきたナターシャの瞳が、光に揺れる。

 それを静かに受け止めるシルフィード。


「そうかもしれぬ……だが、奴の運命は変わらん」

「そうかしら。彼ならもしかすると……」


 ナターシャがそう零した時、一陣の風がビュッと舞い込み髪を靡かせた。

 まるで、ナターシャの想いを吹き消すかのように。


◆◆◆


「さあっ、終わりにするよ!」


 カミラは勇ましく笑みを浮かべ、片手でブンブン振り回している鉄球に闘気を込めた。

 黒い鉄球が真っ赤な闘気で、炎のように赤く染まってゆく。

 またその後ろでは、ザラークが鉤爪に黒い闘気を纏わせていた。


「ギギギギッ……!」


 その黒い闘気により、両手の鉤爪が大きく禍々しいそれに変貌してゆく。

 一つ一つの刃が、まるで漆黒の光を放つロングソードのようだ。

 その鉤爪を、ザラークは前にザッと突き立てた。

 そして、腰を落とし狂気に彩られた眼差しでアルカナートを見据えると、全身の凄まじいバネを活かし跳びかかった。


「ギイッ!!!」


 その声と共に繰り出した無数の漆黒の閃光が、アルカナートの視界を覆う。


「くっ……!」


 これはドラークの必殺技『残響滅牙(ざんきょうめっき)

 凄まじい突進力と高速の乱斬から生み出される数多の斬撃は、まるで迫りくる無数の牙。

 この斬撃の音を聞いた者は、それと同時にバラバラになってしまう恐ろしい技だ。


 この技は軌道を見切るのがほぼ不可能な為、後ろに素早く跳び退くか耐えきるしかない。

 現に、絶妙な間合いを咄嗟に保ったアルカナートだが、それでもいくつか掠ってしまい数か所から血を流した。


「チッ……攻撃の間合いが寸でで伸びやがる!」


 それを分かっているカミラも、ニヤッと笑みを浮かべた。


───跳び退くか耐えきる間に仕留めてあげるわ♪


 また、クリスも当然それを分かっている。


───万一避けられても、ボクが撃ち落とす!


 シルフィードがナターシャに告げたように、このトライアングルの前に死角は無い。


───だが……!


 アルカナートはそこから敢えて後ろに跳び退かず、剣を両手で真っ直ぐ構え、真正面からザッ! と、勢いよく跳び向かった。

 全身と剣を、白輝の光りで煌めかせながら。


「ハァァァァッ……!」


 その姿を目の当たりにしたカミラとクリスは、驚き目を大きく見開いた。


「嘘でしょっ?!」

「なんでっ?!」


 二人が驚愕と共に見つめる中、アルカナートは白輝の光を滾らせる。


「闇の牙は俺が全て斬り裂いてやる! これが光の力だ! 『バーン・メテオロンフォース』!!」


 無数の流星のような斬撃が、ザラークの闇の牙を全てバラバラに斬り裂いた。

 その衝撃波が、ザラークをズガァァッ!! と、森の奥まで吹き飛ばす。

 

「グギィィィッ!!」


 大きな叫び声を上げ全身からボタボタと血を流しながら、ガクッと頭を縦に落としたザラーク。

 それを見たクリスは、怒りでより闘気を燃え上がらせた。


「カミラっ! 同時にいくよ!」

「もちろんよ!」


 カミラが勇ましく応じると、クリスはアルカナートに向かい怒声を浴びせる。


「アルカナート! これで終わりだよっ! 『天空破弾(てんくうはだん)』!!」


 そして両手をブンッ! と、大きく振り抜いた。

 頭上一面を覆い尽くす数多の光のエネルギー弾が、まるで隕石の雨のように、アルカナートへ全方位からズドドドドドッ!! と、降り注いでゆく。


 またその瞬間、カミラも闘気を燃やし瞳を凛と光らせた。


「私の重くて熱い愛、しっかり受け止めなさい! 『紅華圧殺(こうかあっさつ)』!!」


 カミラがより闘気を込めて放った巨大な真紅の鉄球が、クリスの天空破弾と共にアルカナートに襲いかかった。

 だが、アルカナートは動じず二人を射抜くような眼差しで見据えている。


「やるじゃねぇか。けどよ……!」


 アルカナートはそう零し、上空から迫りくる無数のエネルギー弾に向かい突きの形で剣を構えた。


「俺を止める事は出来ねぇぜ。光の閃光となり天を貫け! 『クラウディア・フォース』!!」


 凄まじい勢いで、クリスに向かい突きを放ったアルカナート。

 カミラが横から飛ばしてきた鉄球を躱し、クリスのエネルギー弾を掻き消しながら突き進んでゆく。


「オォォォォォッ!」


 突き進むアルカナートの体が閃光のようになり、光の衝撃波を放つ。


「そ、そんな! ボクの天空破弾が!」


 恐怖に顔をゾッとさせたと同時に、アルカナートの突きがクリスの体をザシュンッ! と、貫いた。


「ガハッ! た、たった一撃に破られるなんて……」


 口から血を吐き悔しさに震えるクリスに、アルカナートは背を向けたまま静かに告げる。


「悪くなかったぜ。一歩間違えれば終わってたさ。けど、俺の一撃には届かねぇよ」

「……! ど、どこまでも、ウザったいなぁ……」


 そう零し、クリスは両膝をつきドサッと倒れた。

 その体を冷たい雨が打ちつける。


「クリスっ!!」


 カミラは身を乗り出し叫ぶと、アルカナートをキッ! と、強く見据えた。

 強い怒りと尊敬が入り交じる瞳が、キラリと光る。


「アルカナート……流石ね。私達のトライアングルを破るなんて、スマート・ミレニアム最強の勇者に恥じない強さだわ!」

「フンッ、俺は群れて戰うのが好きじゃねぇだけさ」


 カミラの眼差しを、真っ向から見据えるアルカナート。

 二人の眼差しが静かにぶつかり、雨音が二人を包んでゆく。


「カミラ、お前は何の為に戰う」

「フフッ、決まってるじゃない。私の大切なものを守る為よ。貴方はどうなの?」


 そう問いかけてきたカミラをジッと見据えたまま、アルカナートはニッと笑みを浮かべた。


「奇遇だな、俺も同じさ」

「へぇ、貴方がそんな愛国者だとは思わなかったわ♪」

「愛国者? 違ぇよ」

「えっ?」


 少し謎めいた顔を浮かべるカミラ。

 そんなカミラを涼し気な瞳で見据えながら、アルカナートは剣を片手で地面にトンと刺し、柄にその手を乗せた。

 そして、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「俺は、俺の目に映る奴を、この残酷な世界から救い出せればそれでいい」


 その言葉が、カミラをハッとさせた。

 立場は違えど、大切なものを守りたい気持ちは同じである事に気付いたから。


「そう……アルカナート、貴方とは敵としてじゃなく本当は仲間として……」


 だが、カミラはそこまで言いかけ首を横に軽く振ると、すまなそうな顔でアルカナートを見つめた。


「ごめんなさい。こんな事、言うべきではないわね」

「フンッ、気にするな。俺もお前には、同じ事を感じてた所だ」

「アルカナート……!」


 ハッとし瞳に光を宿したカミラ。

 戦士としての誇りを守ってもらえた事に、心を打たれたのだ。

 そんなカミラに向かい、アルカナートは艶のある眼差しで向かい合ったまま剣を突きの形に構え、そこに想いを乗せる。


「カミラ、いざ尋常に……」

「勝負よ! アルカナート!」


 その咆哮と共に、二人は互いに技を繰り出した。

戦士だからこそ、真っ向から……!

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