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cys:175 立ち憚る黄金の剣士

「くっ……おのれメティア、貴様だったのか……!」


 たじろぎ、顔を恐怖に引きつらすクルフォス。

 メティアが覚醒した力の正体を悟ったからだ。


 そんなクルフォスをメティアは真っすぐ見据えると、スッとその場にしゃがみアンリの傷ついた背に手を翳した。


「アンリ、今治すからね。『ヒールLV:4』」


 メティアの翳した手の平から、黄金色とプラチナの混じった光がパァァァッ……と、放たれてゆく。

 それと共にアンリの背中の傷は瞬く間に塞がり、完全に元の状態に戻った。

 もちろん服は破けたままだが、焼け焦げていた背中には傷跡一つ残っていない。


「メティア、ありがとう。礼を言うニャ♪」


 スッと立ち上がりペコリと頭を下げたアンリに、メティアはニコッと微笑んだ。


「アンリ、こちらこそだよ。もしさっき庇って貰えてなかったら、あそこでやられてたし」

「あんなの当然の事ニャ♪ 気にするでない。それよりも……お主のその力は一体何なのじゃ?」


 アンリがそう尋ねると同時に、ロウ達も同じ疑問を持ちメティアを見つめる。

 もちろん、無事であった事は凄く嬉しいのだが、クルフォスのあの攻撃から無傷で生還できた力が、凄く気になってしまうから。


 そんな中、メティアは自分の手を交互に見つめながら、その力について確認してゆく。


「この力は……」


 そう零すと、メティアはアンリを見つめ静かに告げる。


「多分、ボクの聖魔法を超えた『ホーリィ・アーク』だよ……」

「ニャ、ニャんじゃと?! あの伝説の力か!」

「うん。ボク自身まだ信じられないけど、間違いないと思う」

「しかし、その力を一体どうやって?」


 アンリを始め皆の視線が集まる中、メティアはさっき自分に起きた事を思い返してゆく。


「アンリを助けようとして夢中で魔力を放ったら、急に凄い力が湧いてきて……ボクも何でなのか分からないんだ。けど……」


 メティアはそこまで話すと、クルフォスの方へ再びスッと振り向いた。

 クリッとした可愛い瞳に宿った決意の光が、キラリと光る。


「クルフォス。ボクがいる限り、みんなに傷はつけさせない!」

「くっ……貴様ーーーー!!」

「ムダだよクルフォス。いくら怒りを滾らせても、貴方の攻撃はボクには通用しない。だから、もう退いて」

「おのれ……」

「ボクは貴方の事も、傷つけたくはないんだ」


 これは皮肉でも何でもなく、メティアの本心。

 ノーティスと奇跡の再開を果たし、その培ってきた力で王宮魔道士になってはいるが、メティアは人を傷つけたくないのだ。

 倒す為ではなく、人を救う為に力を磨いているから。

 その優しさが凄惨な戦場を、浄化するように広まってゆく。


「メティア、どこまでもキミは優しいな」

「全くだぜ。ぶっ倒しちゃえばいいのによ」

「はぁっ。ジーク、貴方には分からないわよ」

「ケッ、うるせっ」

「まあまあ、落ち着くニャ♪」


 アンリはそう言ってニコッと笑うと、メティアの顔を横から軽く覗き込んだ。


「して、メティアよ。どーするつもりじゃ? これでクルフォスが退くとは思えんがの」

「いや、ボク達に攻撃が通じないと分かった以上、退くしかないハズだよ」


 メティアがそう答えザッと足を踏み出した時、クルフォスは軽く瞳を閉じニヤリと嗤う。


「クックックッ……」

「な、何がおかしいの?!」


 クルフォスから醸し出される妖しげなオーラに、メティアはピタッと足を止めた。

 明らかにクルフォスが劣勢であるにも関わらず、それを一気に覆すような物を感じてしまうから。


「一体なぜ……」


 メティアを始め皆がそう思う中、クルフォスはスッと瞳を開き邪悪な笑みを浮かべた。

 その瞳が漆黒の光を揺らめかせる。


「闇の力が通じぬ……それが何だというのだ」

「えっ?」

「余が直接手を下す必要はないという事だ」

「ど、どういう事?!」

 

 メティアが思わずたじろいだ時、クルフォスの隣に黄金の鎧を纏った剣士がザッと現れ、メティア達を見据えた。

 頭部に装着している黄金の兜は顔周りも覆っている為、顔は分からない。

 だが、無言のまま見据えてくるその黄金の剣士からは、ただならぬオーラが伝わってくる。


「しかもこのオーラは、闇じゃ……ない?」


 メティアが勘ぐるような顔でジッと見つめる中、ロウ達もその剣士から伝わってくるオーラに顔をしかめた。


「あの剣士は一体……何か、妙だ」

「そうねロウ。何なのこの感覚。体がザワめくわ……」

「あぁ、マジで何なんだコイツは。なんか、落ち着かねぇ」

「んにゃーー。まさか……いや、そんなハズは……」


 黄金の剣士は間違いなく自分達の敵だ。

 けれど、今までの敵とは何か違う物を感じてしまう。

 皆がそんな得も知れぬ妙な感覚を受ける中、黄金の剣士は腰に差している鞘から剣をスッと抜き、斜め下に構えた。

 それを見てニヤリと嗤うクルフォス。


「クククッ……さぁ、殺れ。お前の力で王宮魔道士共を皆殺しにするのだ」

 

 クルフォスがそう告げた時、広間に差し込む光が黄金の剣士の剣をツーっとなぞり、剣先がキラリと煌めいた。

 まるで、涙のように…… 

突如現れた黄金の剣士は、一体何者なのか……

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