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cys:171 ルミ、涙の挨拶

「お二人とも、そろそろいいかしら」


 アネーシャが軽く溜息混じりで問いかけると、ノーティスとルミはヤバッ! と、いう顔をして、互いにバッと離れた。

 そして、恥ずかしそうに顔を火照らせてる二人を、アネーシャは軽くニヒルな表情で見つめている。


「感動の再会が出来たようで何よりだわ。まぁ、私からしたら驚きの連続だけど。()()とね」


 色々と。

 その言葉に、ノーティスは思わずウッ! と、なってしまった。

 いくら女心が、れ〜点とはいえ、アネーシャが何を言いたいのか一瞬で分かってしまったから。

 戦いとは、また別の意味での汗をかいてしまう。


───アネーシャ、俺は……


 記憶を失くしていた時の自分と、それを取り戻した後の自分。

 どちらの時もただ本気で生きてきたが故に、今の気持ちに整理がつかない。


───くっ、俺はどうしたら……


 アネーシャは、そんなノーティスを見つめながら、軽く微笑んだ。

 愛と切なさの交叉する瞳が、光に揺れる。

 そして、アネーシャは敢えてルミの方を向き、復活の方の話題から切り出す。


「ねぇ、貴女ルミって言ったわよね」

「は、はいっ!」


 火照りが残る顔で元気に答えたルミを、アネーシャは少し謎めいた顔で見つめた。

 実際、ルミの復活を不思議に思っているのだ。

 今までこんなのを目の当たりにした事は、一度もなかったから。


「貴女……」


 ただ、どう尋ねたらいいのかと一瞬悩んだが、アネーシャはルミを見つめたまま言葉を続ける。

 途轍もなく重要な事だから、回りくどく尋いても仕方ないと思ったからだ。


「どうやって復活したの?」

「そ、それは……」


 ストレートな問いかけをされたルミは、一瞬言葉に詰まってしまった。

 言った所で、信じてもらえるか分からないと思っているからだ。

 ルミ自身、さっき自分に起こった事に、まだ頭の整理が追いついていない。


───何て言ったら分かってもらえるかな……


 そんなルミの心情を察したアネーシャは、凛とした眼差しで見つめながらも少し表情を和らげた。


「出会ったばかりなのに、ぶしつけでごめんね。でも、凄く大事な事だからハッキリ聞いておきたいの」

「アネーシャさん……」


 互いに見つめ合う、ルミとアネーシャ。

 側でそれを見ているノーティスにも緊張が走る。

 実は、ノーティスにはある程度察しはついているのだが、それを目の当たりにすると胸がざわめくのだ。


───恐らくルミは……


 そんな中、ルミはアネーシャを強く見つめながら口を開く。


「私、さっき倒れてた時……女神様に会ったんです!」

「女神様に?!」

「はい。レティシアっていう女神様です」

「えっ、レティシア?! それって……」


 アネーシャは驚きに目を丸くしノーティスの方を向いた。

 けれど、ノーティスは敢えて静かにルミを見つめたまま動じない。

 予想通りではあったし、ここでアネーシャと視線を合わせたら、ルミが話をしずらくなると思ったから。

 なので、フラットな姿勢で静かに問いかける。


「ルミ、そのレティシアって女神様、ルミにどんな事を言ってきたんだ?」


 ノーティスからそう問われたルミは、その時の事を振り返った。

 精神世界での出来事だが、ハッキリと覚えている。


「女神様から『貴女はここで死んではいけない。貴女は三神器の触媒、クナーティアなのです』って、言われたんです。そしたら目が覚めて、ノーティス様達が戦っているのが分かって、何か不思議な力が沸いてきたから手を翳したらああなって……」


 聡明なルミらしくない事実の羅列。

 けれど、それが逆にこの話が真実である事を物語っていた。

 ルミが自分の理解を越えた事を、ありのままに話してるのが伝わってくる。


 ノーティスはそんなルミを優しく見つめた。


「ルミ、話してくれてありがとう。その女神様の言った事は本当だ」

「ノーティス様、今の話信じて下さるのですか?!」

「あぁ、もちろんだよ。ルミが嘘を言わないのは知ってるし、ティコ・バローズに隠されていた記憶とも符合するしさ」

「隠された記憶?」


 ルミが不思議そうな顔を浮かべると、アネーシャが真剣な顔で問いかけてくる。


「ノーティス、それってあの記憶の続きなの?」


 アネーシャもずっと気になっていたのだ。

 あの(いにしえ)の祠の中で、ノーティスはどんな事を知ったのかを。


 そんなルミとアネーシャから見つめられるノーティスは、凛とした瞳に光を宿した。


「そうさ、アネーシャ。今時間は無いから結論だけ言うけど、俺とアネーシャは神器の力を宿してるんだ」

「神器の力?」

「そう。五大悪魔王達が目覚めさせようとしてる存在に、対抗出来る力の事さ」


 ノーティスは端的にそう告げると、ルミの肩をサッと両手で掴んだ。


「そしてルミ。キミが俺達の力の触媒、クナーティアとしての力を持つ存在なんだ!」

「わ、私がですか?!」

「そう、さっきの光と復活が何よりの証さ」

「と、突然そんな事言われても……」


 ルミは顔を軽く火照らせながら、戸惑いの表情を浮かべている。

 ノーティスから見つめられているのもあるが、突然背負ってしまった余りにも大きな責任に、どうしていいかが分からない。


「ルミ……」


 ノーティスはそんなルミの気持ちを察し、優しく見つめた。

 女心については相変わらず、れ〜点のままだが、人としての気持ちは分かるから。


「今までと何も変わりはしない」

「えっ?」


 どういう意味か分からず不思議そうな顔で見上げたルミに、ノーティスはニコッと笑った。


「だって、今までもずっと支えてきてくれたろ。それが、ちょっと力が強くなっただけさ」

「そ、それは……」


 あまりにサラッと言われ戸惑うルミに、ノーティスはその雰囲気のまま軽く首をかしげた。


「違ったっけ?」

「違……わないんですかね」

「あぁ、違わないよ。一緒一緒♪」

「そう……ですか」

「うんうん♪ 理解してもらえてよかった」

「はい……」


 ルミは何か上手く言いくるめられた感じがして、ちょっと斜め上を向いて軽く唸っている。

 そんな二人を見たアネーシャは、込み上げてくる笑いが抑えられない。

 凄く重大でシリアスな話なのに、二人が話しているとまるでそんな風に感じなくなってしまうから。


「アーッハッハッハッ! 面白いわね♪ 貴方達」

「アネーシャ……」

「あーーホント面白い。貴方達って、いつもこんな感じなわけ?」


 アネーシャが笑いながら尋ねてくると、ノーティスはちょっと気まずそうに斜め上を見ながら、片手で頭を掻いた。


「まぁ、そうかもな……」

「フフッ、そうなんだ」


 そう言ってアネーシャが微笑むと、ルミがノーティスに向かいグイッと身を乗り出した。

 ちょっと心外だという顔を浮かべて。


「そんな事ありませんよ! 私はいつも、もっとちゃんとしてます!」

「そっか?」

「そーですよ。何と言っても私は……」


 そこまで言いかけて、急に言葉を詰まらせたルミ。

 今から言おうとしてる言葉が、ノーティスとの再会を心の底から実感させ、嬉しい想いが涙と共にグッと込み上げてくるから。


 そんなルミの様子を不思議そうな顔で見つめるアネーシャの側で、ノーティスは何も言わず優しく見つめている。

 それが、ルミの涙をより溢れさせてゆく。


「うぐっ……私は……私は……ノーティス様の執事ですから!」


 ずっと本人に言いたかった言葉。

 それをルミが涙を零しながら絞り出すと、ノーティスはニコッと微笑みながら涙を滲ませた。


「ただいま、ルミ」

「お帰りなさい……! ノーティス様っ♪」

最愛の人に、やっと言えた言葉……


ようやく役者も完全に揃い、怒涛の展開で進んでいきます!

ここからも応援よろしくお願いします!

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