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cys:168 託す想い

「ハァァァァッ!」 「アァァァァッ!」


 ノーティスとアネーシャは二人同時に剣を大きく振りかざし、クリザリッド目掛け飛びかかった。

 二人の怒りの剣が光を纏い、クリザリッドに勢いよく振り下ろされる。


「チイッ!」


 大剣をサッと横に構え、防御体勢に入ったクリザリッド。

 その剣に二人の剣がぶつかり、ガキイィィィィッ!! と、いう激しい金属音と共に衝撃波がブワッ!! と周囲に広がった。

 その衝撃波を、ロウ達は顔をしかめ片手で防ぐ。


「くっ!」「うっ!」「チッ!」「わあっ!」「ニャニャッ!」「うわあっ!」

 

 そんな中、クリザリッドは二人に臆する事なくギロッと睨みつける。

 そして、大剣をズガアッ!! と、横に振り抜きノーティスとアネーシャを後ろに飛び退かせると、ニヤッと不敵な笑みを浮かべた。


「フンッ、効かぬ。二人がかりでこの程度とはな」


 クリザリッドは余裕な素振りを見せながらも、内心は焦っていた。

 二人と自分との力の差が、急速に埋まっていくのをヒシヒシと感じているから。


───マズいな。むしろ、もし完全に覚醒したならば……


 心でそう呟くと、クリザリッドは大剣の柄を両手で持ち頭上に掲げ、全身から立ち昇る漆黒のオーラを剣に込めていった。


───完全に覚醒める前に殺してやる……!


 クリザリッドの大剣が、漆黒の(いかづち)をバチバチッ! と、音を立てて滾らしてゆく。

 その漆黒の(いかづち)を纏った禍々しくも巨大な力は、まさにクリザリッドその物のようだ。


「その魂ごと闇に焼かれるがいい……裁きの雷でな!」

「そうはさせないぜ、クリザリッド! お前の闇は俺が斬り裂く!」

「そうよ! 裁かれるのは貴方の方じゃないっ!!」

「この……愚か者どもめ! 闇でその身を焦がすがいい! 『ダークネス・ヴァロンディ』!!」


 クリザリッドが大剣を振り下ろすと同時に、数多の漆黒の(いかづち)が凄まじい勢いで、ノーティスとアネーシャに襲いかかった。

 だがそれと同時に、二人も必殺技を繰り出し迎え撃つ。


「究極の光のクリスタルと共に、全ての闇を切り裂け! 『バーン・メテオロンフォース』!!」

「桜花の力で、残酷な未来は防いでみせるわ! 『桜華滅神(おうかめっしん)』!!」


 クリザリッドと二人の力がドガァァァン!! と、衝突し、中間で激しく光を放ち燻り始めた。

 それを、互いにググッと力を込めて押し合ってゆく。 


 そんな二人を目の当たりにしているロウ達が加勢に入ろうとすると、ノーティスは前を見据え力を込めたまま告げる。


「ロウ……みんな、今の内に、先へ……進んでくれ!」

「なっ、何を言うんだノーティス」

「そうだよノーティス! ボク達も一緒に戦うよ!」

「そうだぜ!」

「ホント何言ってるのよ!」

「お主、それはムチャ過ぎだニャ」


 驚愕に目を丸くしたロウ達に、ノーティスは衝撃に耐える体を震わせながら声を絞り出す。

 

「みんな……五大悪魔王がいるんだ……この先に!」

「だが……!」

「ここで力を使ったら、奴らには……勝てない」

「しかしこのままでは……!」


 戸惑うロウ達の側で、ノーティスは前を見据えたままニヤリと力強く微笑んだ。


「俺は、必ず勝つから」


 その時、ロウとレイとジークは、一瞬錯覚してしまった。


───アルカナート(せんせい)……!


 また、アンリとメティアも目を見開いてノーティスを見つめている。

 いつもとは違う何かを、ノーティスから感じてしまうから。


 そんな皆に、ノーティスは声を荒げる。

 凄まじいプレッシャーに耐えながら。


「だから早く! 一刻でも早く奴らを倒さないと、奴らは……くっ! 頼む! 早くっ!!」


 その叫びに鬼気迫る物を感じたロウは、一瞬スッと瞳を閉じると凛々しい瞳でノーティスを見つめた。


「ノーティス、信じるからな。キミの事を」


 そう告げた瞬間、アネーシャが前を見据えながら問いかけてくる。

 少し不敵な笑みを浮かべて。


「あら軍師さん……私は?」

「失礼。同じく、信じるよ」

「フフッ……じゃあいいわ。さっさと……行きなさい!」


 アネーシャのその言葉を受けたロウは、二人にサッと背を向けた。

 そして、魔導の杖を片手で掲げ、レイ達に向かい号令をかける。


「これより五大悪魔王の討伐に向かう! スマート・ミレニアムの勇者エデン・ノーティスと、トゥーラ・レヴォルトの勇者メデュム・アネーシャの名の下に!!」


 その勇ましい号令が広間に響き渡ると同時に、皆の瞳に強く美しい光が宿った。


───貴方の美しさ、信じてるから!

───戦いの先にある景色、まだ見足りねぇからな!

───お主の光、消すでないぞ……!

───また後で会える事、信じてるからね!


 ただそんな中、エミリオは自分とのあまりにも力の差に驚愕している。

 無論、エミリオもこの数年腕を磨いてきた。

 けれど、今目の前で行われている戦いは、自分とはあまりにも次元が違い過ぎるのだ。


「うっ……な、なんて戦いなんだ。でも、ここで逃げちゃダメだ……!」


 立ち向かいたい気持ちとは裏腹にガタガタと震えてしまう体を、ギュッと拳を握り歯を食いしばりながら、必死の顔で堪えている。


 それを見たレイはハッとして、エミリオにタタッと駆け寄った。


「エミリオっ!」

皆の想いを背に受けるロウと、エミリオの気持ちを救おうとするレイ……

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