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cys:161 疑惑の眼差し

「ノ、ノーティス、貴方なんでここに……!」


 爆風による煙が霧散していく中、アネーシャは片膝をついたまま、信じられないという顔で見つめている。

 金色の刺繍が施された白のロングジャケットを身に纏い、片手に剣を下げているノーティスの事を。


 そんなアネーシャを澄んだ瞳で見下ろしながら、ノーティスは片手をスッと差し出した。


「アネーシャ、大丈夫か」

「う、うん……」


 そう零し手を取り立ち上がったアネーシャを、ノーティスは優しく見つめたまま微笑んだ。


「ごめんなアネーシャ、遅くなって」

「ううん、いいの。でも、そうじゃなくて……」


 アネーシャが、そこまで言いかけた時だった。


「ノーティス!!」


 広間にメティアの切ない叫びが響き渡った。

 涙を浮かべながらノーティスに向かい、バッと身を乗り出したのだ。

 全身から溢れ出ているずっと会いたかった想いが、ノーティスに波のように伝わってくる。


「メティア……!」


 そう零しサッと振り向いたノーティス。

 その姿を見た瞬間、メティアには直感的に分かった。


「記憶……戻ったん、だよね……?!」


 小さな体を震わせ確かめるように問いかけたメティアの心臓が、ドキドキと波打つ。

 そんなメティアを、ノーティスは静かに見つめた。


「あぁ、そうだよメティア」

「ノーティス……! よかったぁ!!」


 嬉しくてウルッと涙を零したメティア。

 だが、同時に気になってしまう。


「でも、なんで……なんで記憶戻ったのに、アネーシャの味方するの?!」


 それは皆も同じだった。

 なので、少し怪訝な顔でノーティスを黙ったまま見つめている。


 それは、今さっきレイの不死鳥ディケオ・フレアニクスをかき消したからだけではない。

 ノーティスから醸し出されている雰囲気が、皆にハッキリと感じさせるからだ。

 アネーシャを守ろうとしてる決意を。


───ノーティス、なぜキミは……

───どういう事なのよっ……!

───ったく、何だってんだよ。

───ニャッハ〜〜お主、もしや……


 そんな皆を、ノーティスは精悍な顔で見つめた。

 ノーティス自身、逆に皆がそれを感じてる事を充分分かってるから。

 無言であっても、むしろそれが圧を感じさせる。

 ただそんな中、メティアだけは今にも泣きだしそうだ。


「うぅっ、ノーティス。なんでなの……」


 無理もなかった。

 元来の純粋で優しい性格に加え、やっと記憶が戻ったと思ったら、新たな不安が襲ってきたから。


 そんなメティアを前に、ノーティスの顔が曇る。

 本当は言いたくない事を、敢えて言わなければいけない苦しさで。


「メティア、聞いてくれ。俺は、全て知ってしまったんだ……」

「えっ、ど、どういう事?!」


 不安げな顔で問いかけるメティアに、ノーティスは一瞬間を置いた。


「……俺達が倒すべき相手はトゥーラ・レヴォルトでも、ましてやアネーシャでもないんだ」

「そ、そんな。じゃあ一体……」


 メティアはそこまで言った時、まるで途轍もない冷気を浴びせられたかのようにゾクッとした。

 自分を見つめているノーティスの哀しい瞳が、物語っているからだ。

 これから、最も悲しく悲劇的な事を告げようとしている事を。


「ま、まさか……!」


 悲壮な表情を浮かべ目を見開いたメティアを前に、ノーティスの胸がより苦しくなる。

 これを言えば、もう後戻り出来ない事は分かっているから。


───でも俺は、ここで退く訳にはいかない……!


 心で意を決したノーティスは拳にグッと力を込め、辛そうに顔をしかめた。

 けれどそれを抑え込むと、精悍な瞳と共に告げる。


「そうさ、メティア。俺達が倒さなきゃいけないのは、この国……スマート・ミレニアムなんだ!」

ノーティスからの衝撃の発言を前に、皆は何を思う……

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