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cys:155 アンリシスターズへの誘い

「終わりにするわ……!」


 アネーシャが静かにそう告げ剣をピュッと横に振った瞬間、大きな衝撃波がロウ達に襲いかかる。

 ただの一振りが、まるで必殺技のようだ。


「みんな危ないっ! 『クリスタル・アミナ』っ!!」


 メティアが咄嗟に放った防御魔法で辛くも防いだが、直撃していたら一瞬で大ダメージを喰らっていたに違いない。


「すまないメティア」

「ありがとう」

「助かったぜ」

「やりおるのーー。じゃが……」


 アンリはそう言いながら、アネーシャの方へ顔を向けた。

 皆も一緒だ。

 アネーシャの力に皆、戦慄を隠せない。

 たった一振りであの威力なのだ。

 そして思う。

 

 本気のノーティスと同じ強さだと。


「チッ……! ノーティスの奴、あんな奴とサシでやってたのかよ」

「あの子のゴールドクリスタルで、きっと互角ね」


 ジークとレイがギリッと歯を鳴らす中、アンリはロウを確かめる様な顔で見つめた。


「ロウよ、お主の言うアレとはまさか……」

「あぁ……そうだ」


 ロウの慧眼な瞳に決意の光が宿る。


「『アクロ・クリスタルフォース』これしかない」

「ぬぬぬっ……やはりそれか」


 大きく目を見開いたアンリ。

 分かってはいたが、いざ本当に迫ってくると驚愕を禁じ得ない。

 また、それはアンリだけではなく他の皆も、意を決しなければならない想いに迫られていた。


「ねぇロウ、貴方それ本気で言ってるの?!」

「そーだぜロウ、あの技はよ……」


 ジークが身を乗り出した時、ロウはスッとその行動を制した。


「本気だ。じゃなきゃ勝てない」

「けどよ……」


 ジークは顔をしかめ躊躇った。

 ロウが言うアクロ・クリスタルフォースは確かに強力な技だが、同時に禁忌にも触れる事になるからだ。

 けれど、そんな想いに浸る暇も無く、ジークは次の瞬間ハッとして目を見開いた。


「さよなら」


 アネーシャの凍てつくような声が静かに耳を貫いたから。

 一瞬にして間合いを詰め、自分の目の前に現れると共に。


「うおっ!」


 不意を突かれたジークだが、ハルバードを(かざ)し間一髪アネーシャの剣を防いだ。

 しかし、アネーシャの凄まじい剣圧にドガアッ! と、大きく吹き飛ばされた。

 ジークの大きな体が結界にドンッ! とぶつかり、結界が軽く揺らめく。


「ジーク!!」


 叫ぶレイの悲鳴を背中に受け、それを勢いに変えるかのように飛びかかるアネーシャ。

 背を結界に預け倒れているジークに、アネーシャの刃が迫る。

 それを目の当たりにし、顔を青ざめさせるレイ達。


 もう間に合わない! そう思った時、ジークの体の下から紫色の光がサアアッと立ち昇り、アネーシャの剣は虚空を切った。


「くっ……!」


 アネーシャがギリッと顔をしかめ後ろを振り向くと、そこにはアンリに抱きかかえられたジークの姿が。


「ふうっ! ギリギリだったニャ」


 片手で冷や汗を(ぬぐ)いジークを見下ろすアンリ。

 ロウと話している間にもアネーシャの奇襲に備え、瞬間転送の魔法を溜めておいたのだ。


 それを悟ったアネーシャは、標的をアンリに変えた。

 王宮魔道士はクセ者揃いだが、その中でもアンリは特に脅威になると分かったから。


「やるじゃない。貴方、他の王宮魔道士とは少し違うようね」

「ニャ〜〜そうでもないぞ。まあ、魔道士兼発明家兼プロデューサー兼料理研究家兼……」

「まったく、幾つあるのよ」


 思わず軽く苦笑したアネーシャに向かい、猫口でエキゾチックな笑みをニヤッと浮かべるアンリ。

 どんな苦境でも、その笑顔は絶やさない。


「アネーシャよ、お主も戦いなんぞやめて、私のプロデュースする『アンリ・シスターズ』に入らぬか? お主なら器量も良いし、人気出ると思うんだがの〜〜♪」


 真っ直ぐ見つめ、カラッとした太陽のような雰囲気でそう告げてきたアンリに、アネーシャはフフッと微笑んだ。


「いいかもしれないわね」

「おおっ、私の想いが通じたか。嬉しいニャ♪」


 アンリがニパッと笑うと、アネーシャはスッと据えた瞳に変わり鋭い眼差しをぶつける。


「でも残念ね。それは無理よ」

「はて? なぜニャ」


 アンリがトボけた顔をして首をかしげると、アネーシャは剣を斜めにチャキッと構えた。


「だって、今日が貴方の命日になるから」

「ニャッハ〜〜お主のプロデュースは手厳しいのぉ」

「私、このプロデュースに全力なの。だから、こっちに貴方をプロデュースしてあげる♪」

「そのオーディション、合格する訳にはいかんのぉ♪」


 アンリがニヤッと口角を上げると、アネーシャも同じ様に笑みを浮かべた。


「全力で歌って踊りなさい。行くわよ!」


 そう言い放つなり、アネーシャは剣を月の形に構えビュッ! と、勢いよく飛び掛かった。

 剣がキラリと光り、長く美しい髪が後ろに真っ直ぐ靡く。

 そんなアネーシャを凛とした顔で見据えるアンリは、魔導の杖を片手で前にサッと掲げた。


「アネーシャよ、お主に力で対抗しようとは思わん。『アダナクラ・ミラー』!!」

「えっ?!」


 そう声を漏らした瞬間、アネーシャの瞳に映る。

 アンリの魔導の杖の先に現れた楕円形の鏡が。


「そんな物で私の攻撃を防げると思うの?! 貫いてあげる!」


 アネーシャはそう叫びそのまま高速の突きを放ち、アンリの鏡に剣を突き立てていく。

 が、その時感じた。

 自分の映った姿に違和感を。


───えっ? オカシイ。鏡なのに……まさか!


 そう感じたアネーシャは剣を鏡に突き立てながらも、咄嗟に身体をサッと捻った。

 すると剣は鏡の中にスッと入り込んでいき、それと同時に鏡の中からアネーシャの剣がサッと飛び出してきた。


「くっ!」


 アネーシャの体ギリギリを自身の剣がサッと横切り、アネーシャは慌ててサッと後ろに飛び退き間合いを取ると、アンリを凛とした瞳で見据える。


「そういう事ね。やるじゃない」

「う~~~む、お主こそ咄嗟にそれに気付くとはやりおるのぉ」

「当然でしょ。これでも女子よ。鏡は毎日見てるんだから」

「ニャハハッ、それもそうじゃの。だが、その判断と機転の良さは流石じゃ」


 そういってニパッと笑うアンリ。

 アネーシャが自分の技にかからなかったのを残念に思うよりも、むしろ、破られたのを誇らしげに楽しんでいるようだ。


「アネーシャよ、お主とはまだまだ遊べそうじゃな♪」


 そう言って不敵に微笑んだアンリの事をアネーシャは真っすぐ見つめ、白桜のオーラをよりババッと立ち昇らせると剣を片手で天に向かい突き立てた。


「悪いけど、貴女と遊んでる時間は無いの。正面がダメなら全方位から斬り刻んであげるわ!」


 アネーシャの剣から桜の花びらのような無数のオーラが、アンリの周りをヒラヒラと舞う。

 これは、アネーシャがかつてノーティスに放った全方位からの必殺剣『桜神烈華』だ。

 

「これで終わりよ」


 だがその時だった。

 アネーシャの周りにヒラヒラと舞ってきたのだ。

 クリスタルの輝きを放つ、数多の薔薇が。

桜を覆うレイの薔薇……!

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