表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/251

cys:148 雷光を超える桜

「喰らえ蛮族め! 怒りの雷光を!!」


 アルベリッヒが向けた両手から鋭い雷光が放たれたが、アネーシャは軌道を見切りサッと躱し、臆する事無く睨み返した。

 目の前の男アルベリッヒが自分を憎むのは分かるが、こっちもそれは同じだからだ。


「何が蛮族よ! そうやって決めつけて、私達を蹂躙してきた貴方達は違うとでも言うの!」

「黙れ! 魔力クリスタルの救いを拒み悪魔に支配されている、愚かな国の勇者が!」


 アルベリッヒが怒声をぶつけると、アネーシャは悔しさにギュッと拳を握りしめて身体を震わす。


「アルベリッヒ……貴方は本当にそれを信じてるの?!」

「女……何が言いたい」

「貴方のように、自分で考えず盲信してる人がなってしまうのよ。本当の悪魔に!」

「キサマ……戯言も大概にしろ! 俺達スマート・ミレニアムの人間は魔力クリスタルにより進化した人間で、お前らはそれを拒否する愚かな蛮族! その事に一部の間違いも無い!」


 そう言い放ち怒声を浴びせてくるアルベリッヒを、アネーシャは怒りと哀しみに満ちた瞳で見つめている。

 昔から自分達を蛮族と決めつけ蹂躙してくるスマート・ミレニアムの人間は、やはり憎いし許せない。


 けれど、同時に分かっているからだ。

 その昔、カイザー達がユグドラシルを奪いアーロスを逆賊に仕立て上げ、偽りの歴史で民を洗脳した事が一番の元凶だという事を。


───アーロス、ソフィア……!


 そして、それをどんなに話した所で分かっては貰えない事が、アネーシャの胸を締め付けていく。

 だが、その中でアネーシャは想いを馳せる。


───ノーティス、貴方だけは分かってくれた。本当に苦しみの中で。そして、記憶を失ってからは、私は貴方の優しさに救われた。だから……


 アネーシャは凛とした瞳でアルベリッヒを見つめると、両手で剣を持ち必殺剣の構えを取った。

 全身から譲れない想いと共に桜色の闘気を立ち昇らせながら。


「私は、これからも自分の愛と志の為に戦う。だから、決して負けないわ!」

「ほざけ蛮族が! この俺の雷光で消え去るがいい!」


 アルベリッヒがそう言い放った瞬間、アルベリッヒの前に黄色の大きな魔法陣がブワンと敷かれ、その魔法陣の上に幾つもの雷がバチバチバチッ……! と、音を立てながら出来上がった。

 そして、それらが一点に合わさり大きな光になっていく。


「これで終わりだ! 愚かな国の勇者よ! 『シモス・ゲラウノス』!!」


 バリバリバリッ!! と、いう音を立て途轍もない雷がアネーシャ目掛けて放たれたが、その瞬間アネーシャも剣を大きく振り下ろし必殺技を放つ。


「私も終わらせるわ! 偽りと悲しみを! 『神桜滅鬼しんおうめっき』!!」


 振り下ろした剣から桜色の凄まじい衝撃波が地を伝い、波のようにアルベリッヒの放った雷とぶつかると、中間で大きく燻った。

 けれど、すぐにアネーシャの技がアルベリッヒの技をググッと押し返していく。


「オオオオッ! くっ、なぜだ……! なぜキサマなんかにこの俺が……!」


 必死に堪えながら顔をしかめるアルベリッヒを、アネーシャは凛とした瞳で見据えたまま答える。


「私は……貴方なんかに、なんて思わない」

「なんだと……!」

「貴方にも想いがある事は認めてるから。でも、私は必ず勝たなきゃいけないの。この星の未来と……愛の為に! ハァァァァァッ!!」

「ぐっ! バ、バカな……!」


 そう零した瞬間、ドガァァァァッン!! と、いう爆音と共にアルベリッヒに全てのエネルギーがぶつかり、大きく上空に吹き飛ばした。


「ぐわぁぁぁぁっ!!」


 アルベリッヒは大きな叫び声を上げ、地面にドシャッ! と、背中から叩きつけられると、ボロボロの姿で額からツーっと血を流し、上半身を僅かにググッと起き上がらせた。


「お、俺達が、間違っていたのか……」


 アネーシャはそんなアルベリッヒに近づくと、スッとしゃがみアルベリッヒの手を握る。

 悲しさと優しさに満ちた瞳で見つめたまま。


「違うわ、アルベリッヒ。勝ったから正しいとか、負けたから間違ってるとかじゃないの」

「なっ……なん、だと」

「そういうやり方で正しさを決めないようにする為に、私は戦ってるから。これまでも、そしてこれからも……」


 アネーシャがそう告げた時、アルベリッヒはハッとした顔を浮かべた後、穏やかに微笑んだ。


「俺が勝てない訳だ……最後に貴様……いや、お前と戦えた事に礼を言う。名を……」

「アネーシャよ。メデュム・アネーシャ」

「アネーシャか……礼を言う。ありがとう。もし、生まれ変われたら、その時は……仲間として……」


 そこまで話すと、アルベリッヒは瞳を閉じ首をガクッと横に倒した。


「アルベリッヒ……!」


 アネーシャは静かにそう零すとスッと立ち上がり、凛とした瞳に怒りの炎を宿しスマート・ミレニアム城を見上げる。


───五大悪魔王、貴方達を決して許さない……!


 改めて刻んだ誓いを胸に、アネーシャはタタッと駆け出した。

 この先に、さらなる試練が待ち構えている事を魂で感じながら……!

戦いの無い世界にする為に、矛盾を抱えて進む……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ